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「処方箋を必要としない薬局医薬品」の取扱いに関する質問主意書

経過状況:

答弁受理

提出者 福田玄
会派 国民民主党
公式リンク 第217回国会 / 質問答弁

政府が今国会に提出した医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案では、薬局医薬品の販売にかかる条文が追加されたと把握するところである。あまつさえ、本法案では、薬剤師など専門家による医薬品販売規制強化と規制緩和が混在し、政府の医薬品販売政策に対する一貫性が瓦解しはじめていると危惧するところである。なかでも、医師の処方箋を必要としないと厚生労働省が判断している薬局医薬品の薬剤師による販売を規制強化するという政府の姿勢は、これまで聞き及ぶところにおいて具体的な健康被害事例が確認されていないにもかかわらず規制強化を検討しているという点で、石破総理でさえもセルフメディケーションを声高に主張している状況を鑑みるならば、常人には理解し難いものがあると考える。

また、薬剤師養成教育が六年となり、薬剤師の臨床能力の向上が推定されているにもかかわらず、その職能を尊ぶどころか貶めるに等しい今般の薬局医薬品にかかる販売規制強化は、薬剤師の資質向上を推進する厚生労働省の施策とも矛盾するかにみゆる。たとえば、令和四年七月十一日に厚生労働省が公表した「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループとりまとめ」によれば、五頁の「1.対人業務の更なる充実」の中で「現状の薬局薬剤師の業務は、処方箋への対応(対物業務や、処方確認・服薬指導等の対人業務)が中心であるが、処方箋受付時以外の対人業務(調剤後のフォローアップやポリファーマシー等の対応)や、セルフケア、セルフメディケーションの支援等の健康サポート業務等の充実が求められる」と明記されている。厚生労働省の文書の中で、調剤後のフォローアップ、セルフケアやセルフメディケーションの支援等の健康サポート業務での薬局薬剤師の活躍が期待されているにもかかわらず、処方箋を必要としない薬局医薬品の販売を規制するかのような法案を提出したのは、政府の政策の一貫性に欠けるものであると考える。そこで、今国会における令和七年三月三日の衆議院予算委員会において何度もセルフメディケーションに言及された石破総理の腹案について以下の点についてご教授いただきたい。

質問1

同日の衆議院予算委員会における緒方林太郎君の質疑において、「セルフメディケーションというのはもっと真面目に考えた方がいいんだろうというふうに思っております。それが受診の抑制につながらないで、なおかつセルフメディケーションということをやることによって、医療の現場の負担も減らしていかなければ医療はもちません」と石破総理は答弁されているが、処方箋を必要としない薬局医薬品を薬剤師の判断で販売することは、まさにセルフメディケーションを意識した国民が医療の現場の負担を減らし医薬品を入手せんとする積極的な行動であると考えられる。また、これは受診抑制ではなく、受診による医療費負担を軽減するべく自主的に負担する受診行動であり、石破総理の主張された「受診の抑制につながらない」行動であるといえる。しこうして、石破総理が何故に、処方箋を必要としない薬局医薬品の薬剤師による薬局における販売を規制せんとするのか理解に苦しむものであると考える。石破総理が緒方君の質問に答弁したとおりのお考えであるのであれば、むしろ処方箋を必要としない薬局医薬品の薬剤師による販売については、薬剤師による適切な助言と健康指導の下で進めていくのが望ましい姿にみゆるが、石破総理のお考えを明らかにされたい。

回答(質問1 について)

 お尋ねの「処方箋を必要としない薬局医薬品」の意味するところが必ずしも明らかではないが、仮に御指摘の「今国会に提出した医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案」(以下「改正法案」という。)第二条の規定による改正後の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第三十六条の三第二項に規定する「薬局医薬品のうち、処方箋の交付を受けて使用すべきものとして厚生労働大臣が指定する医薬品」(以下「処方箋の交付を受けて使用すべきものとして厚生労働大臣が指定する医薬品」という。)を意味するのであれば、当該医薬品に関しては、従来から、「薬局医薬品の取扱いについて」(平成二十六年三月十八日付け薬食発〇三一八第四号厚生労働省医薬食品局長通知)において「処方箋医薬品以外の医療用医薬品についても、・・・処方箋に基づく薬剤の交付が原則である」と示し、例外として「やむを得ず販売を行わざるを得ない場合など」に限定して販売又は授与を認めることを示す等しているところ、令和六年一月十二日に公表された「医薬品の販売制度に関する検討会とりまとめ」において「医療用医薬品の日常的な販売や不適切な販売方法の広告が継続されている実態がある」とされていることも踏まえ、当該医薬品の不適正な使用による健康被害を防止する観点から、改正法案において、正当な理由なく、当該医薬品を処方箋の交付を受けた者以外の者に対して販売し、又は授与してはならないこととし、ただし、当該者に対して販売し、又は授与することがやむを得ない場合として厚生労働省令で定める場合等においては、この限りでない旨を規定しているところである。

 また、御指摘の「セルフメディケーション」については、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二四」(令和六年六月二十一日閣議決定)において、「更なるスイッチOTC化の推進等によりセルフケア・セルフメディケーションを推進し」とされていることも踏まえて、医療用医薬品から要指導医薬品又は一般用医薬品への転用を更に推進しており、また、改正法案において利用者における健康の保持増進に必要な情報の提供及び薬学的知見に基づく指導を実施するために必要な機能に関する一定の要件に該当する薬局を健康増進支援薬局として認定する仕組みを設け、当該健康増進支援薬局の普及の促進を図ることとしているなど、政府として、セルフメディケーションの推進のために必要な措置を実施しているところである。

質問2

同日の衆議院予算委員会における金村龍那君の軽症患者ほど医療機関を利用せずに健康を回復することができる環境を整えていくという趣旨の質問に対して、石破総理は「応能負担」について言及されたが、医療保険給付を受けることなく、国民自らの判断で処方箋を必要としない薬局医薬品である常備薬を薬剤師の助言の下で自身の財布から負担をしようとするのは、国民自身が負担できる範囲を自身で決めた応能負担を体現した制度であるといえよう。OTC類似薬を一律に保険給付の対象から外すとなれば、全額自己負担での医薬品購入による経済的な理由とする受診抑制が生じる可能性があると考える。このことを斟酌するならば、OTC類似薬を薬局において患者の求めに応じて薬剤師の適切な助言の下で販売できるようにするのは、石破総理のご発言の趣旨を顧みれば、合理的な販売制度であると考える。OTC類似薬を一律に医療給付の対象から除外するといった乱暴な議論ではなく、以上のような合理的な議論をするべきではないかと考えるが、石破総理のご高説をお示し願いたい。

回答(質問2 について)

 御指摘の「OTC類似薬を薬局において患者の求めに応じて薬剤師の適切な助言の下で販売できるようにする」の具体的に意味するところが明らかではないが、一についてでお答えしたとおり、処方箋の交付を受けて使用すべきものとして厚生労働大臣が指定する医薬品については、当該医薬品の不適正な使用による健康被害を防止する観点から、改正法案において、正当な理由なく、処方箋の交付を受けた者以外の者に対して販売し、又は授与してはならないとし、ただし、当該者に対して販売し、又は授与することがやむを得ない場合として厚生労働省令で定める場合等においては、この限りでない旨規定しているものである。

 また、御指摘の「OTC類似薬」については、政府としては、「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」(令和五年十二月二十二日閣議決定)に基づき、「市販品類似の医薬品の保険給付の在り方の見直し」等について、必要な検討を行っていくこととしている。

質問3

同日の衆議院予算委員会における金村君の質問に対して、「医薬品には非効率な部分がある」という答弁が石破総理よりあったが、医薬品の非効率な部分について、石破総理のお考えをご教授願いたい。

回答(質問3 について)

 御指摘の「医薬品の非効率な部分」については、特定の事項を念頭に置いたものではないが、お尋ねの「非効率な部分について」の「石破総理のお考え」については、令和七年三月三日の衆議院予算委員会において、石破内閣総理大臣から「非効率なものなんかあるのかということでありますが、・・・いよいよこの問題を正面から議論しなければならない・・・時期に差しかかっていると思います」と答弁しているとおりである。