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新たに指定した長崎大学のBSL―4施設に関する質問主意書
経過状況:答弁受理
厚生労働大臣は令和七年一月二十四日付けで、国立大学法人長崎大学を特定一種病原体等所持者として、また、同大学内の高度感染症研究センター実験棟を特定一種病原体等所持施設(以下、「BSL−4施設」という。)として指定した。
右について、昨年十一月十五日から一か月間パブリックコメントを実施した結果、九万二千三百六件の意見が寄せられており、その内容は、「わざわざ日本で研究する意味がわかりません」「長崎大学は活断層の上にあるようで、予期しない災害を非常に心配しています」「ほとんどの国民が知らないうちにこっそり改正するのは良くないです。もっと新聞やテレビで報道して意見を広く求めるべきです」「研究施設から外部に出て感染症が広がった場合の補償はありますか」など、施設の必要性への疑問や事故や災害への懸念が多数挙げられている。
国は、この施設において特定一種病原体を対象とした基礎研究や人材育成、特に疫学研究、感染機構研究、病態研究、医療応用研究などを行うとしているが、具体的な成果や便益のイメージが想起しづらい一方で、リスクの告知や対応、補償などの体制や経済的バックアップが不明確であるため、国の安全管理に対する具体的な取組や責任体制が問われていると考える。
以上を踏まえ、質問する。
質問1
人為的事故や災害の場合の備えについて
1 BSL−4施設では極めて危険な病原体が取り扱われることから、人為的事故や自然災害が発生した際の緊急対応は極めて重要であると考える。警察や消防はこの種の特定一種病原体に対応するための訓練を受け、必要な人材を確保しているのか、政府の把握するところを回答されたい。
2 事態が拡大した場合に自衛隊の出動や住民の避難が必要となる事態も想定されるが、そのような状況に対して具体的な計画が存在するのか、政府の把握するところを回答されたい。
3 近隣住民が避難や感染等の被害に遭った場合の補償について特別な法律を設ける必要性について、政府はどのように考えるか。
回答(質問1 の1について)
御指摘の「BSL−4施設」において「人為的事故や自然災害」が発生した場合も含め、「特定病原体等に係る事故・災害時対応指針」(令和五年九月厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部感染症対策課公表。以下「事故・災害時対応指針」という。)において、お尋ねの「警察」については、例えば、「事故・災害時の人命救助、立入禁止措置、交通規制」等を行うこととし、「消防」については、例えば、「事故・災害時の人命救助、消火、延焼防止」等を行うこととしているところ、これらを的確に行うため、必要な訓練を実施し、及び体制を確保しているところである。
回答(質問1 の2について)
御指摘の「事態が拡大した場合」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、御指摘の「自衛隊の出動」については、個別の状況に応じ、関係法令等に従い、適切に対応することとなり、また、御指摘の「住民の避難」については、事故・災害時対応指針は、「特定病原体等について盗取、所在不明その他の事故が生じた場合、及び地震、火災その他の災害・・・が起こったことにより、当該特定病原体等による感染症が発生し、若しくはまん延した場合又は当該特定病原体等による感染症が発生し、若しくはまん延するおそれがある場合の事業者が整備しておくべき緊急連絡体制及び事業者が講じるべき応急措置その他必要な措置に関して、・・・関係機関における連絡体制、連携等に関する内部規定を策定するための指針となるものである」ところ、「特定病原体等による感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するため必要がある場合には、特定病原体等取扱施設の内部にいる者、病原性輸送物の運搬に従事する者又はこれらの付近にいる者に避難するよう警告する」、「必要に応じて特定病原体等を安全な場所に移すとともに、特定病原体等がある場所の周囲には、ロープを張り、又は標識等を設け、かつ、見張人をつけることにより、関係者以外の者が立ち入らないための措置を講ずるよう努める」等としているところである。
回答(質問1 の3について)
御指摘の「近隣住民」の「避難」については、一の2についてで述べたような「避難」を想定しており、また、御指摘の「近隣住民」の「感染等の被害に遭った場合の補償」については、個別の状況に応じ、民法(明治二十九年法律第八十九号)や国家賠償法(昭和二十二年法律第百二十五号)等に基づき対応が行われるものと考えており、新たに「補償について特別な法律を設ける」ことは現時点で検討していない。
質問2
地震に対する安全性について
BSL−4施設の「地震に対する安全性の確保」の基準は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則(一種病原体等取扱施設の基準)第三十一条の二十七第三号によって建設省告示を引用している。しかし、同告示が地震リスクを含む立地条件を十分に考慮しておらず、致死率の高い特定一種病原体を取り扱う施設の場合の安全基準として不十分であると懸念している。そこで、地震発生時の対策と施設の安全性に関して、現在の基準の適切性と省令改正の必要性について、政府の見解を求めたい。
回答(質問2 について)
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の「地震発生時の対策と施設の安全性」の確保については、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則(平成十年厚生省令第九十九号)第三十一条の二十七第三号の規定において、「国家機関の建築物及びその附帯施設の位置、規模及び構造に関する基準(平成六年建設省告示第二千三百七十九号)に従い、又は当該基準の例により、地震に対する安全性の確保が図られていること」等とされ、国家機関の建築物及びその附帯施設の位置、規模及び構造に関する基準(平成六年建設省告示第二千三百七十九号)において、「構造体の耐震性能」等について勘案すべき具体的な基準が示されているところ、当該基準を満たすことで、地震に対する安全性の確保が図られるものと考えており、御指摘の「省令改正」は現時点で検討していない。
質問3
成果の盗用や海外移転を防止する制度について
1 国内で行われる高リスク研究の成果が不正に流出することは、国家の安全保障上、看過できない問題であると考える。研究成果の国内外への流出を防ぐために、政府はどのような対策を講じているのか。
2 研究者や従事者に対するセキュリティ対策の強化は予定されているのか。
回答(質問3 について)
お尋ねの「研究成果の国内外への流出を防ぐために、政府はどのような対策を講じているのか」については、不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)、外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号)、サイバーセキュリティ基本法(平成二十六年法律第百四号)等に基づき適切な対応を行うこととしている。
また、お尋ねの「セキュリティ対策の強化」については、例えば、令和六年度補正予算において、内閣府では、国内の研究機関等を対象に、国内外における共同研究等の実施に当たり、共同研究契約等の相手方等に関する情報の収集及び分析のために必要な経費を支援する「研究セキュリティ・インテグリティに関するリスクマネジメント体制整備支援事業」を行うこととしている。
質問4
研究の倫理基準について
1 特定一種病原体を用いた研究に関し、動物実験や人間での実験も含めた倫理基準につき、いかなる基準が適用されるか。
2 政府は、現在の倫理基準が十分であると考えているのか。また、これらの基準の見直しを行う予定はあるのか。
回答(質問4 について)
お尋ねの「倫理基準」及び「いかなる基準が適用されるか」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、国立感染症研究所及び国立大学法人長崎大学における御指摘の「特定一種病原体を用いた研究に関し」、御指摘の「動物実験」については、同研究所においては「厚生労働省の所管する実施機関における動物実験等の実施に関する基本指針」(平成十八年六月一日付け科発第〇六〇一〇〇五号厚生労働省大臣官房厚生科学課長通知別添)が、同大学においては研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針(平成十八年文部科学省告示第七十一号)が、それぞれ適用され、また、御指摘の「人間での実験」については、同大学及び同研究所いずれにおいても、人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(令和三年文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第一号)が適用されるところ、両者において、これらの指針等を遵守することが重要と考えており、「特定一種病原体を用いた研究に関し」これらの倫理指針等の見直しは、現時点では予定していない。
質問5
透明性の確保について
BSL−4施設における事故や盗難、流出事案の報告と対応の透明性の確保は、公衆の信頼を維持するために不可欠であると考える。
1 政府はこれらの事態に対処するために、内部基準の見直しや第三者委員会の設置を検討しているのか。
2 新たな法整備が必要と考えるが、その点についての政府の見解を求めたい。
回答(質問5 について)
御指摘の「BSL−4施設における事故や盗難、流出事案の報告と対応」については、事故・災害時対応指針において、例えば、「厚生労働省の対応」として「報告聴取、事業所への立入検査」や「専門家を現地に派遣する」こととした上で、事故・災害時対応指針を厚生労働省のホームページにおいて公表しているところであり、また、これに基づき適切に対応した上で、国民に対して必要な情報提供をしていくことにより、御指摘の「透明性の確保」を図ることとしており、御指摘の「内部基準の見直しや第三者委員会の設置」及び「新たな法整備」については現時点で検討していない。
質問6
感染事故対策について
事故などにより、万が一感染者が発生した場合、施設内または近隣に隔離施設は用意しているのか。具体的な概要を明らかにされたい。
回答(質問6 について)
御指摘の「事故などにより、万が一感染者が発生した場合」は個別の状況により様々であり、また、御指摘の「隔離施設」及び「具体的な概要」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないことから、お尋ねについて一概にお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、各「施設」においては、患者の感染状況等に応じて、「施設内」の感染対策や「近隣」の感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)第六条第十四項に規定する第一種感染症指定医療機関等との連携による感染対策が行われるものと承知している。
質問7
BSL−4施設の周知徹底について
長崎大学のBSL−4施設の情報提供について、政府は、各府省庁のホームページなどの掲載や、地域とのコミュニケーションを通じて行っているとのことだが、閲覧数や参加人数などの周知効果をどのように把握しているか。政府による記者会見の実施状況も含めて回答されたい。
回答(質問7 について)
御指摘の「周知効果」の意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねの「閲覧数」については、例えば、厚生労働省が実施した「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行令の一部を改正する政令案」に関するパブリックコメントに寄せられた意見を踏まえて同省が令和七年一月二十四日に同省のホームページに掲載した「感染症法に基づくBSL4施設の基準」についての「閲覧数」は、同日から同年二月二十八日までの合計で四千四百六十八件であり、また、お尋ねの「参加人数」については、例えば、文部科学省の関与の下、御指摘の「長崎大学のBSL−4施設」の状況等についての情報共有や意見交換等を目的に同大学が設置する「長崎大学高度感染症研究センター実験棟の運用に関する地域連絡協議会」が令和五年七月二十四日から令和七年二月二十八日までに合計六回開催され、その「参加人数」は、延べ二十一人と承知している。
また、御指摘の「政府による記者会見の実施状況」の意味するところが必ずしも明らかではないが、令和六年十二月二十四日の閣議後記者会見において、福岡厚生労働大臣が御指摘の「長崎大学のBSL−4施設」に関し、記者とやり取りを行っているところである。