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日本の伝統産業であるいぐさ及び畳表に係る国内産業支援に関する質問主意書
経過状況:答弁受理
畳表の生産枚数は、平成八年から令和六年にかけて約二千六百九十四万枚から百四十一万枚へと激減している。これに伴い、国産品の総生産額は三百四十三億円から三十一億円へと大幅に減少し、国内生産額も十分の一以下に落ち込み、自給率も七十%から二十二%へと下がった。また、輸入畳表の枚数は千百三十七万枚から五百二万枚へ減少し、輸入品の総輸入額も八十一億円から五十一億円へと低下している。現在の畳表の単価は、国産品が一枚当たり二千二百十二円、輸入品が千二十三円で、国産品は輸入品の二倍以上の価格である。
国内の需要動向を見ると、平成元年から令和五年までの間に畳表の総枚数は千七百十六万枚から三百二十八万枚へと約五分の一に減少し、一戸当たりの畳替枚数も〇・四二三畳から〇・〇五六畳へと大幅に下落していると考える。
これらのデータから、過去三十年間で畳表の生産枚数、生産額、需要はいずれも減少し続けており、国内生産業者は非常に厳しい状況に直面していると考える。
いぐさ及び畳表は、寺社仏閣や茶室など、日本の伝統的な建築と文化にとって不可欠であり、これらは日本の文化的精神性を支えるとともに、国際的にも日本の魅力と競争力の源となっていると考える。
このような背景を踏まえ、畳表産業の持続可能な支援と発展のためには、政府の積極的な役割が求められる。具体的には、国内のいぐさ及び畳表に対する需要拡大、国産品の維持存続のための経済的支援、産地偽装の処罰や取締り強化が必要ではないかと考える。
以上を踏まえ、質問する。
質問1
いぐさ及び畳表の需要拡大と、国産品の保護・支援のために現在実施されている取組と、それに割り当てられた年間予算の金額、及びそれによる具体的な成果をそれぞれ回答されたい。
回答(質問1 及び質問5 について)
御指摘の「いぐさ及び畳表の需要拡大」及び「国産いぐさの需要拡大」のため、農林水産省としては、「持続的生産強化対策事業」のうち「茶・薬用作物等地域特産作物体制強化促進」(以下「地域特産作物体制強化促進事業」という。)において、いぐさ及び畳表に係る全国組織が行う、畳店、工務店等向けの研修会や消費者を対象とした国産いぐさ及び畳表の普及啓発の取組等を支援している。また、御指摘の「国産品の保護・支援」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、国産畳表の高品質化や高付加価値化に取り組むいぐさ及び畳表生産者に対し、「いぐさ・畳表農家経営所得安定化対策事業」(以下「経営所得安定化対策事業」という。)により、い業年度(毎年七月一日から翌年六月三十日までの期間をいう。以下同じ。)ごとに、国産畳表の価格が過去五年の価格を基に定められる基準値を下回った場合に、その下落の程度に応じ、一定額を補塡することとしている。
令和五年度における地域特産作物体制強化促進事業の予算額約十三億五千万円のうち、いぐさ及び畳表に係る全国組織への交付実績は約千七百万円である。また、経営所得安定化対策事業は基金事業であり、令和五い業年度末における基金の残高は約二億六千万円であるが、同い業年度における補塡金の交付実績はなかった。
これらの取組等により、国産いぐさ及び畳表の高品質化、高付加価値化等が進んでいると考えているところ、例えば国産畳表一枚当たりの価格については、様々な要因の影響を受けることから、一概にこれらの取組によるものと断定することは困難であるが、経営所得安定化対策事業を開始した平成二十六い業年度においては千八百八十四円であったところ、令和五い業年度では二千二百十二円へと上昇している。
質問2
新築や改装される建物・施設に畳表(和室、置き畳など)の使用を促進するために政府が現在検討している施策や経済的支援はあるか。また、過去にこのような措置を採用し、検討した経緯がある場合、その詳細を回答されたい。
回答(質問2 について)
政府として、御指摘の「新築や改装される建物・施設に畳表(和室、置き畳など)の使用を促進するため」の「施策や経済的支援」は検討しておらず、これまで「検討した経緯」もない。
質問3
国内生産者に対する所得補償を含む経済的支援と、輸入品に対する保護関税の強化について
1 政府の立場と具体的な取組や過去の実施例をそれぞれ明らかにしたうえで、これに関し、いぐさ・畳表農家経営所得安定化対策基金のこれまでの利用実績を回答されたい。
2 同基金の利用を促進すべく対象・要件を広げ、基金を拡充すべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。
回答(質問3 の1について)
政府としては、国内のいぐさ及び畳表に関連する産業を保護する観点等から、関税定率法(明治四十三年法律第五十四号)第三条の規定に基づき、畳表に対して六パーセントの関税を課している。また過去には、畳表の輸入増加の事実等を踏まえ、平成十二年十二月二十二日から同法第九条第六項の規定に基づく調査を行ったところ、畳表の輸入増加の事実及びこれによる本邦の産業に与える重大な損害等の事実を推定したことから、同条第八項の規定に基づき、平成十三年四月二十三日から同年十一月八日までの間に輸入される畳表に対して暫定緊急関税を課したことがある。なお、その後、畳表の秩序ある貿易を推進することについて我が国と主要な輸入先国である中華人民共和国とが共通の認識を得たことにより、国民経済上の緊急の必要性がなくなったと認められたことから、同条第一項の規定による措置をとらないこととした。
また、国産畳表の価格下落に対しては、一及び五についてで述べたとおり、平成二十六い業年度から経営所得安定化対策事業を講じているところであり、その交付実績は、平成二十七い業年度においては約百七十万円、平成三十い業年度においては約二百八万円、令和元い業年度においては約九十九万円となっている。
回答(質問3 の2について)
経営所得安定化対策事業については、国産畳表の高品質化や高付加価値化に取り組むいぐさ及び畳表生産者の経営の安定を図ることにより、その高品質化、高付加価値化等を進めることを目的としている。経営所得安定化対策事業等を通じて、出荷量に占める、いぐさ及び畳表の生産者団体が定める規格において上位に位置付けられる畳表の割合が、平成二十六い業年度においては八十パーセントであったところ、令和五い業年度では八十六パーセントへと上昇しており、その高品質化、高付加価値化等が進んでいると考えていることから、農林水産省としては、現時点において、御指摘のように「対象・要件を広げ、基金を拡充すべき」とは考えていない。
質問4
いぐさ及び畳表の輸入品を国産品と偽る産地偽装問題について
1 政府は産地偽装問題について認識しているか。認識しているのであれば、この問題に対して、どのような具体的な対策が行われているのか。それに割り当てられている予算や人員配置を含め詳細を示されたい。
2 産地偽装を防ぐために導入されている新たな政策や改善策、政府が把握している産地偽装の件数と被害額についてそれぞれ回答されたい。
回答(質問4 について)
現時点において、政府としては、いぐさ及び畳表の輸入品を国産品と偽る事案を把握しておらず、お尋ねの「産地偽装問題」が生じているとは認識していない。
また、御指摘の「産地偽装を防ぐため」の取組として、地域特産作物体制強化促進事業において、いぐさ及び畳表生産者等による産地情報の提供等の取組への支援を措置している。
なお、「産地偽装問題」が不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)等の関係法令に違反する疑いがある場合には、関係省庁において法と証拠に基づき適切に対応することとしており、関係法令の執行を担当する職員が配置されている。
質問5
国宝及び重要文化財等の建造物の保存修理に国産漆を用いることを文化庁が指定した例のように、国産いぐさの需要拡大のために政府が講じている施策を示されたい。
回答(質問1 及び質問5 について)
御指摘の「いぐさ及び畳表の需要拡大」及び「国産いぐさの需要拡大」のため、農林水産省としては、「持続的生産強化対策事業」のうち「茶・薬用作物等地域特産作物体制強化促進」(以下「地域特産作物体制強化促進事業」という。)において、いぐさ及び畳表に係る全国組織が行う、畳店、工務店等向けの研修会や消費者を対象とした国産いぐさ及び畳表の普及啓発の取組等を支援している。また、御指摘の「国産品の保護・支援」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、国産畳表の高品質化や高付加価値化に取り組むいぐさ及び畳表生産者に対し、「いぐさ・畳表農家経営所得安定化対策事業」(以下「経営所得安定化対策事業」という。)により、い業年度(毎年七月一日から翌年六月三十日までの期間をいう。以下同じ。)ごとに、国産畳表の価格が過去五年の価格を基に定められる基準値を下回った場合に、その下落の程度に応じ、一定額を補塡することとしている。
令和五年度における地域特産作物体制強化促進事業の予算額約十三億五千万円のうち、いぐさ及び畳表に係る全国組織への交付実績は約千七百万円である。また、経営所得安定化対策事業は基金事業であり、令和五い業年度末における基金の残高は約二億六千万円であるが、同い業年度における補塡金の交付実績はなかった。
これらの取組等により、国産いぐさ及び畳表の高品質化、高付加価値化等が進んでいると考えているところ、例えば国産畳表一枚当たりの価格については、様々な要因の影響を受けることから、一概にこれらの取組によるものと断定することは困難であるが、経営所得安定化対策事業を開始した平成二十六い業年度においては千八百八十四円であったところ、令和五い業年度では二千二百十二円へと上昇している。