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AI戦略会議・AI制度研究会「中間とりまとめ(案)」についてのパブリックコメントの募集形式に関する質問主意書
経過状況:答弁受理
パブリックコメント(以下、パブコメ)は、政府が国民の意見を公正かつ透明に収集し、政策決定に適切に反映することを目的とした制度であり、行政手続法第三十九条に基づく意見公募手続である。同条の趣旨に照らせば、意見の提出様式は原則として自由であり、広く国民の意見を収集するために、可能な限り多様な提出手段を確保することが求められると思える。さらに日本政府はデジタル社会形成基本法のもとで、すべての国民が公平に行政手続を利用できるようデジタル環境の整備を進めるとしている。
しかしながら、今回の「AI戦略会議・AI制度研究会 中間とりまとめ(案)に関する御意見の募集について」(以下、本件パブコメ)において内閣府科学技術・イノベーション推進事務局(社会システム基盤担当)が設置したwebフォームの構造が、意見提出を困難にする設計となっており、国民が政策形成に参加する機会を不当に制限するものとなっていると考えられる。
特に問題なのは、本件パブコメを社会システム基盤担当という部局が設計した点である。社会システム基盤とは、政府の意思決定の透明性を確保し、国民が公平に政策形成に参加できる環境を整備する役割を担うと考える。しかし、本件パブコメは、その「社会システム基盤」を担う部局が主導したにもかかわらず、「公正さ」「透明性」「自由な意見提出」というパブコメ制度の根幹を大きく損なうものとなっていると考える。
さらに、他の省庁や内閣府の他の部局が実施したパブコメと比較しても、本件パブコメの設計は特異であり、これは、行政手続法の趣旨を逸脱し、国民の表現の自由を侵害する可能性があると考える。本件パブコメのフォーム設計には、〈意見提出のハードルを意図的に上げる設計〉について、?パブコメの提出様式は原則として自由であるべきにもかかわらず、特定の形式を強制し、電子メール・FAX・郵送といった他の提出手段を排除していること、?意見提出者に対し、不必要な情報(企業の従業員数や設立年数等)の入力を強制し、意見提出の負担を過度に増やしていること、?複数の意見を提出する際に、毎回同じ情報を再入力することを強制し、意見提出を不必要に煩雑にしていること、?フォームの構造が不明瞭であり、意見提出の手順が分かりにくい形で設計されているという問題があり、〈意見の偏向を誘導する設計〉については、?意見提出を「賛成・反対」の二択に限定し、意見の多様性を反映する仕組みが欠如していること、?提出後に意見の修正ができず、また控えも残らないため、提出者が自身の意見を管理しにくいこと、?意見提出者の種別(種別1〜4)の選択を必須としながら、その基準の合理性が不明瞭であること、?政府が基幹産業として育成すると明言している「コンテンツ産業」を意見提出者の種別に含めていないという問題があると考える。
これらの設計は、政府が意図的に特定の意見を排除しようとしているのではないかとの強い疑念を生じさせるものであり、民主的な政策決定のプロセスを著しく歪めるものであり重要な問題と考える。
よって、以下の事項について政府に対し質問する。
質問1
パブリックコメントの適正性について
1 行政手続法第三十九条の趣旨に照らして、パブコメの提出様式は自由であるべきであると考える。本件パブコメにおいて、特定の形式を強制した理由は何か。
2 他の省庁や内閣府の他の部局が実施したパブコメのwebフォームと比較して、本件パブコメの設計が特異に煩雑であるのはなぜか。
3 本件パブコメの設計は、政策決定を特定の方向へ誘導する目的があるのではないか。政府の見解を示されたい。
回答(質問1 について)
お尋ねの「本件パブコメにおいて、特定の形式を強制した」の意味するところが必ずしも明らかではないが、提出意見をより正確に把握し、分類及び分析を行うため、令和六年十二月二十七日から行ったAI戦略会議AI制度研究会「中間とりまとめ(案)」に関するパブリック・コメント(以下「本件パブリック・コメント」という。)の形式を設計したものであり、御指摘のように「他の省庁や内閣府の他の部局が実施したパブコメのwebフォームと比較して、本件パブコメの設計が特異に煩雑である」及び「本件パブコメの設計は、政策決定を特定の方向へ誘導する目的がある」とは考えていない。
質問2
意見提出者の種別(種別1〜4)に関する特定の属性情報を必須入力としたことについて
他の省庁や内閣府の他部局が実施するパブコメでは、通常、企業の設立年数や従業員数などの入力は求められていない。内閣府科学技術・イノベーション推進事務局が本件パブコメにおいて特定の属性情報を必須入力とした理由は何か。
回答(質問2 について)
本件パブリック・コメントにおいては、御指摘の「企業の設立年数や従業員数など」を把握することにより、事業規模等に応じた提出意見の傾向等をより正確に把握し、分類及び分析を行うことが望ましいと考えたためである。
質問3
意見提出者の種別(種別1〜4)に関する設計の適正性について
1 本件パブコメでは、意見提出者の種別として「種別1〜4」を設け、それを必須入力としたが、それぞれの種別が設定された理由は何か。
2 これらの分類を必須としたことで、特定の属性の意見が統計的に偏る可能性はないか。
3 意見提出者の種別によって、意見の扱いに差異が生じたのか。
4 日本政府は、AIの影響を大きく受けると考えられるコンテンツ産業を基幹産業として育成すると明言しているが、本件パブコメの意見提出者の種別に「コンテンツ産業」を含めなかった理由は何か。また、フォームの設計者は、コンテンツ産業従事者はどの業種に含まれると認識していたか。
回答(質問3 の1から3までについて)
お尋ねの「これらの分類を必須としたことで、特定の属性の意見が統計的に偏る可能性はないか」の意味するところが必ずしも明らかではないが、人工知能は、様々な主体により、あらゆる分野で、活用されることが想定されるため、提出意見のより正確な分析には、意見提出者の属性を把握することが必要と判断したものであり、意見提出者の「種別」を「必須入力」とすることで、特定の属性の意見が排除されるものではなく、「意見の扱いに差異」は生じていない。
回答(質問3 の4について)
御指摘の「コンテンツ産業従事者」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、人工知能は、様々な主体により、あらゆる分野で、活用されることが想定されるため、意見提出者の「種別」を日本標準産業分類(令和五年総務省告示第二百五十六号)における大分類の項目としたところ、例えば、大分類「情報通信業」の中に、中分類「映像・音声・文字情報制作業」が含まれる。
質問4
意見提出の負担といわゆるユーザビリティについて
1 一つの意見を提出するたびに、同じ企業情報を繰り返し入力しなければならない仕様が採用された理由は何か。
2 他省庁のパブコメでは、通常、一度入力した情報を記憶させる仕組み(自動入力や一括送信機能)が備えられている場合が多い。本件パブコメがそのような仕様になっていないのはなぜか。
3 本件パブコメのフォーム設計が、他のパブコメと比べて、極めて使いづらい設計となっているのはなぜか。
回答(質問4 について)
御指摘の「極めて使いづらい設計」の意味するところが必ずしも明らかではないが、本件パブリック・コメントにおいては、内閣府がパブリック・コメントを実施する際に用いるシステムを利用したところ、当該システムは「一度入力した情報を記憶させる仕組み」を有していないためである。
質問5
意見の適正な収集と反映について
1 意見を「賛成」または「反対」の二択で分類することを強制しているが、この方式が意見の多様性を適切に反映するものと考えるか。
2 本件パブコメにおいて、政府が都合の悪い意見を選別・排除することがないようにするための具体的な措置は講じられているか。もし講じられていないならば、その理由を示されたい。
3 行政手続法第三十九条の趣旨に照らせば、本来、政府はすべてのパブコメにおいて電子メール・FAX・郵送などの複数の提出手段を確保すべきであると考える。本件のような不適切な運用が再び行われないよう、今後、政府は法の趣旨を厳格に遵守する意思があるか。またそのための具体的な措置を講じる考えはあるか。
回答(質問5 の1について)
お尋ねの「この方式が意見の多様性を適切に反映するものと考えるか」の意味するところが必ずしも明らかではないが、本件パブリック・コメントでは、意見提出者の意見の趣旨をより正確に把握するために、「「賛成」または「反対」の二択」を質問の項目の選択肢として設けたものである。
回答(質問5 の2について)
お尋ねの趣旨及び「具体的な措置は講じられているか」の意味するところが必ずしも明らかではないが、提出意見のうち、一部の意見を「選別・排除すること」は行っていない。
回答(質問5 の3について)
本件パブリック・コメントについては、その意見募集の対象となるAI戦略会議AI制度研究会「中間とりまとめ(案)」が、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二条第八号に規定する命令等に該当しないため、同法第三十九条第一項の規定による手続を要するものではないが、内閣府として、四についてでお答えしたシステムを用いて広く意見を募集したものであり、「不適切な運用」との御指摘は当たらないと考える。
質問6
本件パブコメの透明性と実施プロセスについて
1 本件パブコメの設計に関する決定プロセスを明示されたい。特に、どのような基準でフォーム設計を決定したのかを示されたい。
2 本件パブコメがどのように集計・整理・公表されたのかについても、作業のプロセスを可能な限り示されたい。
回答(質問6 の1について)
お尋ねの「決定プロセス」の意味するところが必ずしも明らかではないが、提出意見をより正確に把握し、分類及び分析を行う観点から、「フォーム」について検討し、設計したものである。
回答(質問6 の2について)
四についてでお答えしたシステムを用いて集計し、内閣府の担当部局において分析及び整理を行い、同府のホームページにおいて公表したものである。