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人工魚の取扱いに関する質問主意書

経過状況:

答弁受理

提出者 井坂信彦
会派 立憲民主党
公式リンク 第217回国会 / 質問答弁

二〇二四年四月、山形県において、自然界に存在しない魚が釣れたことが報じられた。人工的に交配されて生み出された山形県のブランドマス「ニジサクラ」とみられている。その後、このニジサクラの幼魚飼育を担う公益財団法人山形県水産振興協会が、余った幼魚約千匹を鶴岡市の赤川支流に放流していたことを明らかにした。

ニジサクラは、サクラマスの評価の高い食味と、ニジマスの成長力を兼ね備えたブランド魚として開発された。食欲は旺盛で、釣りあげられた魚の胃袋からは、ザリガニや小魚、虫などが確認された。個体は全て雌で繁殖する可能性はないが、一代であっても生態系への影響がないとはいえないと考える。

水産庁は、ニジサクラを含む人工的に作られた魚について放流を行わないよう要領を定めていたが、生態系への影響が確認されなかったことから二〇二二年に廃止した。しかし、県は生産・出荷マニュアルにおいて自然界への散逸防止に努めるよう定めている。

現在では人工交配だけでなく、遺伝子操作で通常よりも筋肉が多い肉厚な魚を作り出す「ゲノム編集魚」の研究が進んできた。一般社団法人大日本水産会魚食普及推進センターによると、「ゲノム編集魚」が自然界に逃げた場合、成長しやすいという特徴がその種の魚に広まって、種全体が弱まってしまう可能性があるとしている。そのため事業者は陸上養殖に限定している。

今後、魚の養殖・育成において、様々な技術による品種改良や遺伝子改良が進んでいくと思われるので、以下、政府に対し質問する。

質問1

水産庁は養殖業成長産業化総合戦略でニジサクラやゲノム編集マダイについて支援を行っている。山形県における人工交配魚の放流については、県が今後対応をしっかり進めていくとしているが、政府として放流した事業者に指導や処罰は行ったのか。

回答(質問1 について)

 御指摘の「養殖業成長産業化総合戦略でニジサクラやゲノム編集マダイについて支援を行っている」及び「人工交配魚」の意味するところが必ずしも明らかではないが、農林水産省としては、「三倍体魚等の水産生物の利用について(通知)」(令和四年八月十九日付け四水推第七百九十三号水産庁長官通知。以下「水産庁長官通知」という。)において、ニジサクラを含む「三倍体魚等の水産生物」に関しては、その放流を含む利用実態の把握等について都道府県が「適切に対応」するよう通知したところであり、お尋ねのように「政府として放流した事業者に指導や処罰は行っ」ていない。

質問2

事業者が人工的に作られた魚の適正な管理をしているかどうか、政府が監督する必要があると考える。誰がどのように監督するのか、立入検査で何を調査するのか、行政の監督責任を明確にすべきと考えるが、政府の見解を伺う。

回答(質問2 について)

 御指摘の「人工的に作られた魚」の意味するところが必ずしも明らかではなく、また、「行政の監督責任」の具体的な範囲が必ずしも明らかではないが、「農林水産分野におけるゲノム編集技術の利用により得られた生物の生物多様性影響に関する情報提供等の具体的な手続について」(令和元年十月九日付け元消安第二千七百四十三号農林水産省消費・安全局長通知)において、「カルタへナ法における「遺伝子組換え生物等」に該当しない生物」であって「ゲノム編集技術により得られた」ものに関しては、その「使用等に先立ち」提出された「情報提供書の案」について「生物多様性影響の観点から適切に記載されていること等」を農林水産省が確認することとしているほか、その「使用等の開始後」、「生物多様性影響を損なうおそれが生じた場合の対応」として、その「使用等をしている者又はした者」は、「直ちに、生物多様性影響を防止するために必要な措置を執るとともに、速やかに、執った措置等について」農林水産省に報告すること等としている。

 また、一についてで述べたとおり、水産庁長官通知において、「三倍体魚等の水産生物」に関しては、その放流を含む利用実態の把握等について都道府県が「適切に対応」するよう通知したところである。

質問3

人工的に作られた魚について放流を行わないよう定めていた要領が、二〇二二年に廃止された。ニジサクラについては繁殖能力がないので、放流した場合の影響は少ないかもしれないが、今後は遺伝子操作やゲノム編集による繁殖力のある新種の開発も十分に考えられる。国として人工魚の放流禁止や罰則など制度の整備が必要と考えるが、政府の見解を伺う。

回答(質問3 について)

 御指摘の「人工的に作られた魚」、「遺伝子操作やゲノム編集による繁殖力のある新種」及び「人工魚」の意味するところが必ずしも明らかではないが、一について及び二についてでお答えしたことに加え、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成十五年法律第九十七号)第二条第二項に規定する「遺伝子組換え生物等」については、例えば、同条第五項に規定する第一種使用等をしようとする者は、同法第四条第一項の規定に基づき第一種使用等に関する規程に係る農林水産大臣及び環境大臣の承認を受けなければならないこととしているところ、同項の規定に違反して第一種使用等をした者は、同法第三十九条第一号の規定により、罰則の対象となっていることから、政府としては、お尋ねの「制度の整備」を適切に行っているものと考えている。