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沖縄における米兵による事件事故等に関する質問主意書
経過状況:答弁受理
米軍基地を抱える沖縄県は、我が国の防衛、安全保障の一翼を担うとされ、米軍基地の存在による住民生活への過重な負担を長年抱えていると考える。これら日米地位協定及び沖縄の基地負担に関し、以下の事項について質問する。
質問1
石破茂首相は、二〇二五年二月二十六日の衆議院予算委員会において、「米軍が駐留することによってこの犯罪が起こっているという因果関係を私は存じ上げません」(以下、「この発言」という。)と答弁した。
1 この発言に関して、因果関係がないとした具体的な根拠を示されたい。
2 米軍の駐留と犯罪が起こっている因果関係の有無について、政府の統一した見解を伺いたい。
回答(質問1 について)
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の石破内閣総理大臣の発言の趣旨については、令和七年二月二十八日の記者会見において、林内閣官房長官が 「御指摘の衆議院予算委員会における石破総理の答弁は、質疑者との一連のやり取りの中で行われたものでございますので、個別の表現ぶりのみを取り上げて論評することが適切であるというふうに考えておりません。その上で申し上げますと、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中で、日米安保体制に基づく日米同盟が我が国の防衛や地域の平和と安定に寄与する抑止力として十分機能するためには、在日米軍のプレゼンスが確保されていることが必要でございます。同時に、在日米軍の駐留に伴う地域住民の方々の生活環境への影響を踏まえ、各地域の実情に合った負担軽減の努力は、在日米軍の安定的な駐留を確保する上で必要であります。特に、沖縄の基地負担軽減は政権の最重要課題の一つであり、これまでも取組を続けてきております。これまで在日米軍関係者による事件・事故は、地元の皆様に大きな不安を与えるものであり、あってはならないものと考えております。御指摘の石破総理の答弁は、こうした政府の一貫した立場を述べたものでございます。」と述べたとおりである。
質問2
戦後七十九年を経た今もなお、国土面積のわずか〇・六%に過ぎない沖縄県に、在日米軍専用施設の約七十%が過度に集中し、米軍による事件・事故が繰り返され、沖縄県民の生命、財産、安全が脅かされている。一九七二年に沖縄が日本復帰して以降、在沖米軍基地から派生する刑法犯摘発件数は累計で六千二百三十六件(そのうち殺人や強盗、強姦、放火など凶悪犯罪は五百九十二件。沖縄県警まとめ、二〇二四年十二月現在)となっている。報道によれば、二〇二四年の一年間の刑法犯摘発件数は七十三件で、過去二十年で最多であったことがわかったとしている。政府は、在沖米軍に対し、抗議を行うとともに、再発防止策の策定を申し入れるべきであると考える。政府は既に過去二十年で最多となったことを受けて申入れを行ったのであれば、誰に対して、いつ、どのような経路で申入れを行ったのか、それぞれ明らかにされたい。
回答(質問2 について)
米側との外交上の個別のやり取りについては、相手側との関係もあり、お答えすることは差し控えたいが、合衆国軍隊構成員等による事件・事故は本来起きてはならないものであり、政府としては、米側に対して、綱紀粛正等を随時働きかけており、こうした事件・事故の防止に向けて、引き続き、米側とともに取り組んでまいりたい。
質問3
このような状況において、二〇二三年十二月に、米空軍兵長が十六歳未満の少女を連れ去り、性的暴行を加えたとして、二〇二四年三月にわいせつ目的誘拐及び不同意性交等罪で起訴されていた。また、同年五月には、新たな米兵による女性暴行事件が発生しており、いずれの事件も同年六月に相次いで報道され、沖縄県議会及び各市町村議会において抗議決議を可決している。しかし、米兵による事件はこれにとどまらず、同年十一月に新たな性的暴行事件が発生した。当該事件について、二〇二五年一月二十三日の衆議院沖縄及び北方問題に関する特別委員会において、宮路拓馬外務副大臣は、これまでに米側が発表した一連の再発防止策が実際に事件、事故の再発防止につながることだと考えている旨答弁を行い、米側の取組を評価した。
1 現に米兵による性的暴行事件の再発を止めることができていないが、米側が発表した一連の再発防止策は履行されているか、把握しているのであればそれぞれの履行状況を示されたい。
2 米側が発表した一連の再発防止策について、どのような効果が得られたか、政府の認識を具体的に示されたい。
回答(質問3 について)
お尋ねの「米側が発表した一連の再発防止策」については、令和六年七月に、在日米軍司令官が、米軍施設への出入りの際の飲酒運転に対する検問の強化、米軍の憲兵隊によるパトロールの強化、在日米軍内部での研修及び教育の強化、在日米軍の勤務時間外の行動指針であるリバティー制度の見直し、在日米軍、日本政府、沖縄県庁及び地元住民との協力のための新しいフォーラムの創設等を発表したと承知しているところ、お尋ねの「履行状況」については、例えば、飲酒運転に対する検問の強化については、在日米軍司令官が、地域ごとの米軍施設への出入りの多い時間帯を狙い、幾つかの米軍施設において当該検問の頻度を増やした旨発表し、また、同年十月一日から運用が開始された、見直し後の同制度の下では、在日米軍の全ての軍種の軍人について、例えば、午前一時から午前五時までの間、自宅やホテルを除く在日米軍施設及び区域外における飲酒を禁止するとともに、在日米軍施設及び区域外において酒類を提供する飲食店への入店を禁止するほか、在日米軍司令官の監督責任を強化してきており、加えて、同フォーラムについては、その開催に向け、沖縄県庁と米側との間で繰り返し意見交換が行われてきていると承知している。
お尋ねの「効果」については、定量的に把握することは困難であるが、これらの米側が同年に発表した一連の再発防止策が実効性のある形で実施され、実際に事件・事故の再発防止につながっていくことが重要であると考えており、政府として、米側に対し、これらの防止策の実効性の確保を含め、在日米軍の綱紀粛正と再発防止の徹底を働きかけてきており、引き続き、こうした働きかけを行うとともに、これらの防止策が実効性のあるものとなるよう、これらの効果を見極めながら、日米間で協力していく考えである。
質問4
相次ぐ米兵による少女・女性に対する暴行事件は、人権と尊厳を踏みにじるものであり断じて容認できるものではない。また、質問二で言及した二〇二三年十二月に発生した事件については、関係機関等への迅速な情報伝達や市民・県民への公表が遅れたことに対しても疑問を呈さざるを得ないと考える。二〇二四年七月三十日の衆議院安全保障委員会において、上川陽子外務大臣(当時)は、日本側関係機関内における情報共有について、外務省としても、当該事案は捜査当局から非公表の事案であるとして共有を受けたものであるため、外務省事務方にて対応をし、防衛省に対して情報を提供することはしなかった旨の答弁を行うとともに、外務省が防衛省に情報共有を行わなかった対応については、個別具体的な事案の内容に応じて適切に判断された対応であった旨の答弁を行った。
1 一九九七年に日米両政府が合意した在日米軍に係る事件・事故発生時における通報手続について、日米合意に従わない判断について、事務方が大臣を含む政務三役に相談なく行った理由及び経緯をそれぞれ伺いたい。
2 日本側が一方的に通報手続及び情報共有の仕組みの変更を行うことは認められているのか。
3 個人情報を伏せれば問題は起きないにもかかわらず、通報手続を使わないことを優先した理由について、詳細に示されたい。
4 米側に通報手続及び情報共有の仕組みについて、確認したのであれば、いつ、どこで、誰が、誰に対して変更を確認したのか、詳細を示されたい。
回答(質問4 について)
御指摘の令和五年十二月に発生した事件については、日本側の捜査当局において、事案が公になることによって被害者の名誉やプライバシーに甚大な影響を与えることがあり得ること等を考慮して、非公表とすべきと判断したものと承知しており、外務省においても、こうした判断を踏まえ、御指摘の「外務省事務方」において、関係者に対する情報提供は控えるべきものと理解し、対応したところである。その上で、お尋ねの「通報手続及び情報共有の仕組み」の「変更」を米側に「確認」したことはないが、日本側の捜査当局から同省への情報提供を踏まえ、日米間で適切な情報のやり取りが行われ、また、日本側の関係当局による迅速な対応も確保されていたところであり、こうした対応においては、お尋ねの「日米合意に従わない判断」、「日本側が一方的に通報手続及び情報共有の仕組みの変更」又は「個人情報を伏せれば問題は起きないにもかかわらず、通報手続を使わないことを優先」をしたものではなく、御指摘の平成九年三月三十一日の在日米軍に係る事件・事故発生時における通報手続に関する日米合同委員会合意の目的が達成されたものであると考えている。
質問5
二〇二三年十一月二十九日に、米軍の岩国基地(山口県)から嘉手納基地(沖縄県)へ飛行中のオスプレイ一機が屋久島沖合に墜落し、乗組員八名全員が犠牲となった。この墜落事故は、一歩間違えれば住民を巻き込む大惨事となる可能性もあり、沖縄県議会及び各市町村議会において飛行停止を求める意見書及び抗議決議を可決している。二〇二四年十二月十七日の参議院外交防衛委員会において、防衛省の政府参考人は、米軍作成の事故報告書を引用し、プロップローター・ギアボックス内のハイスピード・ピニオンギアの一つにひびが入ったことについて、二次的な損傷により初期破損の痕跡が不明瞭になったことから、正確な根本原因を特定することはできなかったとしながら、一連の事故の状況や原因については同報告書の中で明らかになっている、また、米側からは機体の構造上の問題ではないとの説明を受けている旨の答弁を行った。
1 根本原因が特定できていないにもかかわらず、オスプレイが安全に運用できるとする根拠を示されたい。
2 事故原因の究明に取り組むことで、今後も安全性を確保する考えはないか、政府の見解を示されたい。
回答(質問5 について)
令和五年十一月二十九日に屋久島沖で発生したティルト・ローター機CV−二二の墜落事故(以下「本件事故」という。)については、令和六年八月二日(日本時間)、米側から、本件事故の状況及び原因に関する事故調査報告書が公表され、本件事故の原因は、「プロップローター・ギアボックスの突発的故障」及び「操縦士の意思決定」とされており、また、お尋ねの「根本原因」については、「初期不具合の証拠を不明確にした二次的な損壊により特定することはできない」と結論付けられていると承知しているが、政府としては、本件事故を受け、米側との間で技術情報に関する前例のない極めて詳細なやり取りを行っており、本件事故の原因に対応した安全対策の一つとして、「屋久島の沖合で発生した米空軍横田基地所属のCV−二二オスプレイの墜落事故に関する事故調査報告書」(令和六年八月防衛省作成)に記載のとおり、「チップ探知機を用いて、全機を対象に運用再開前の予防的点検を行うとともに、維持整備の頻度を増やすことで、PRGBの不具合の予兆を早期に把握」し、「必要に応じPRGBを交換」することとしており、このことにより、引き続き、安全な運用を行うことができると考えている。
質問6
環境や人体に影響を及ぼす可能性が指摘されている高濃度の有機フッ素化合物(PFAS)が米軍基地周辺の井戸や地下水から検出されているものの、米軍の同意を得られない場合には、基地内の立入調査ができず原因が特定できないため、根本的な解決に至っていない。基地周辺においてPFASが検出されたとき、汚染源の特定や除染対策等に関する責任を負う府省庁はどこになるか、府省庁及び課の名称を示されたい。
回答(質問6 について)
お尋ねの「PFASが検出されたとき」の具体的な状況及び「責任」の具体的に意味するところが明らかではなく、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、在日米軍施設及び区域周辺においてペルフルオロ(オクタン−一−スルホン酸)等が検出された場合の対応については、個別具体の事案に応じ、その必要性を踏まえ、関係府省庁において行っているところである。
質問7
日米地位協定は一九六〇年の締結以降一度も改定されていない。課題山積の現状を考慮すると、政府がこれまでに行ってきた運用改善ではなく、より進んだ別の対応が必要とされていると考える。沖縄県作成の調査資料によれば、外国軍の対米国地位協定では補足協定等の改定に成功した国も少なくない。それらの改定の成功事例について、我が国も調査研究を行い、知見を積み重ね、将来的な日米地位協定の改定対象となる論点を整理する必要はないか、政府の見解を示されたい。
回答(質問7 及び質問8 について)
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和三十五年条約第七号)を含むアジアにおける安全保障の在り方については、自由民主党において、現在、幅広い議論が行われており、今後も、引き続き議論が重ねられていくものと承知しているところ、政府としては、同党における議論も踏まえつつ、日米同盟の抑止力及び対処力を強化するとともに、その強靱性及び持続性を高めていくという観点から、これについて検討していく考えである。
また、沖縄の負担軽減については、政府の最重要課題の一つであると考えており、例えば、令和七年二月七日の日米首脳会談においても、石破内閣総理大臣からトランプ米国大統領に対して、沖縄の負担軽減の必要性を説明したところである。
質問8
政府においては、沖縄県民の生命・財産及び人権を守る立場から「日米地位協定の抜本的な改定」を、そして、同県民の切実な要望に応えるため「沖縄の基地負担軽減」を米側に粘り強く提案していくべきと考えるが、政府の考えを示されたい。
回答(質問7 及び質問8 について)
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和三十五年条約第七号)を含むアジアにおける安全保障の在り方については、自由民主党において、現在、幅広い議論が行われており、今後も、引き続き議論が重ねられていくものと承知しているところ、政府としては、同党における議論も踏まえつつ、日米同盟の抑止力及び対処力を強化するとともに、その強靱性及び持続性を高めていくという観点から、これについて検討していく考えである。
また、沖縄の負担軽減については、政府の最重要課題の一つであると考えており、例えば、令和七年二月七日の日米首脳会談においても、石破内閣総理大臣からトランプ米国大統領に対して、沖縄の負担軽減の必要性を説明したところである。