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著作権法第三十条の四の合憲性に関する質問主意書

経過状況:

答弁受理

提出者 杉村慎治
会派 立憲民主党
公式リンク 第217回国会 / 質問答弁

日本国憲法は、平等権、表現の自由、財産権、適正手続の保障など、国民の基本的権利を広範に保障している。

これらの権利は、著作物の創作活動を行う者に対しても等しく適用され、文化の発展に寄与するものとして保護されるべきであると考える。

しかしながら、著作権法第三十条の四は、生成AIなどの機械学習において、著作物を著作権者の許諾なしに学習データとして利用することを認めており、著作権者の意思とは無関係に著作物がAIの学習対象となることを可能としている。この規定が憲法の基本原則と整合するかどうか、政府がその法的正当性を明確に示す必要があると考える。

よって、以下の点について政府の見解を問う。

質問1

適正手続(憲法第三十一条)との関係について

1 著作権者には、著作物の利用について管理する権利があるにもかかわらず、政府は、自らの著作物がAI学習の対象となることを著作権者が事前に知る手段を提供していないと考える。このことが憲法第三十一条の定める適正手続の観点から合憲であるとする根拠を示されたい。

2 AIによる学習が著作権者の意思に反して行われることを防ぐ異議申立ての制度がないことは、適正手続の保障を定める憲法第三十一条に反しないか。政府の見解を示されたい。

回答(質問1 について)

 憲法第三十一条は、刑罰や行政上の不利益処分を課す場合に、法定の手続を保障することを定めたものであり、お尋ねについては、同条と関係がないものと考える。

質問2

財産権(憲法第二十九条第一項)との関係について

1 著作権者が自身の財産の利用を管理する権利を有しているにもかかわらず、著作権法第三十条の四は、著作物を著作権者の許諾なしにAI学習に使用することを認めている。この規定が憲法第二十九条第一項に照らして合憲であるとする根拠を示されたい。

2 AIによる無許諾の学習が許容されることで、著作物の市場価値が低下し、著作権者が正当な報酬を得る機会が損なわれる可能性があると考えるが、この状況は財産権の保障を定める憲法第二十九条第一項に反しないか。政府の見解を示されたい。

回答(質問2 の1について)

 御指摘の「自身の財産の利用を管理する」の意味するところが必ずしも明らかではないが、著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第三十条の四の規定は、「著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合」に、「その必要と認められる限度において」当該著作物の利用を認めるものであり、著作権者の利益を通常害するものではないと考えられ、また、同条ただし書においては、「当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。」としており、憲法第二十九条第一項に違反するものではないと考えている。

回答(質問2 の2について)

 お尋ねの「著作物の市場価値が低下し、著作権者が正当な報酬を得る機会が損なわれる」及び「この状況は・・・憲法第二十九条第一項に反しないか。」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

質問3

表現の自由(憲法第二十一条第一項)との関係について

1 著作権法第三十条の四により、著作物が著作権者の許諾なしにAIの学習対象となる場合、著作者の独自の表現が模倣され、創作の自由が抑圧される可能性があると考えるが、政府が憲法第二十一条第一項に照らして著作権法第三十条の四を合憲であるとする根拠を示されたい。

2 AIが大量の既存作品を学習し、それを基に新たな生成物を生み出す場合、人間のクリエイターによる創作活動が市場から排除されることになり、結果として市場から表現の多様性が損なわれるおそれがあると考えるが、この状況は表現の自由の保障を定める憲法第二十一条第一項に反しないか。政府の見解を示されたい。

回答(質問3 について)

 お尋ねの「著作者の独自の表現が模倣され、創作の自由が抑圧される」、「人間のクリエイターによる創作活動が市場から排除される」、「市場から表現の多様性が損なわれる」及び「この状況は・・・憲法第二十一条第一項に反しないか。」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

質問4

勤労の権利(憲法第二十七条第一項)との関係について

1 生成AIが著作物を著作権者の許諾なしに学習し、低コストで大量の作品を生み出すことで、クリエイターの職業的基盤が脅かされる可能性があると考える。政府が憲法第二十七条第一項に照らして、著作権法第三十条の四が合憲であるとする根拠を示されたい。

2 AIによる労働の置き換えが進むことで、クリエイターが職を失う可能性があるにもかかわらず、政府は雇用保護や再教育の仕組みを整備していないと考えるが、この状況は勤労の権利の保障を定める憲法第二十七条第一項に反しないか。政府の見解を示されたい。

回答(質問4 の1について)

 御指摘の「低コストで大量の作品を生み出すことで、クリエイターの職業的基盤が脅かされる」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

回答(質問4 の2について)

 政府は、公共職業安定所における職業紹介や公的職業訓練等による職業能力開発の促進に加え、求職者支援制度や雇用保険制度に基づく給付等の施策を講じており、御指摘の「雇用保護や再教育の仕組みを整備していない」ことを前提とするお尋ねについてお答えすることは困難である。

質問5

平等権(憲法第十四条第一項)との関係について

1 著作権法第三十条の四によって、大手AI開発企業は大量の著作物を学習させ、生成AIを開発することが可能となることで、クリエイターにとって不平等な競争環境が生じる可能性があると考える。政府が憲法第十四条第一項に照らして、著作権法第三十条の四が合憲であるとする根拠を示されたい。

2 今後、著作権法第三十条の四によって得た学習データからAIを活用する企業と、長年の鍛錬によって習得した技術で表現活動を行ってきた著作者やクリエイターの間で作品を発表する機会の格差が拡大することが懸念されるが、政府は憲法第十四条第一項に照らしてこの状況が適正であると考えるか。適正であると考えるのであれば、この状況は平等権の保障を定める憲法第十四条第一項に反しないか。政府の見解を示されたい。

回答(質問5 について)

 お尋ねの「クリエイターにとって不平等な競争環境」、「AIを活用する企業と・・・著作者やクリエイターの間で作品を発表する機会の格差が拡大する」及び「この状況が適正であると考えるか。」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

質問6

公共の福祉(憲法第十二条)との関係について

1 AI技術の発展が経済成長や技術革新に貢献する一方で、著作権者の権利が一方的に犠牲となり、クリエイターが持続的な創作活動を行うことが困難となる可能性があると考える。政府が憲法第十二条に照らして、著作権法第三十条の四が合憲であるとする根拠を示されたい。

2 著作権法第三十条の四によって、特定の大手企業が生成AIを活用し、大量の著作物を学習させることが可能になる一方で、小規模なクリエイターや独立系著作者が不利益を被る状況が生じる可能性があると考えるが、この状況は憲法第十二条が求める公共の福祉の趣旨に反しないか。政府の見解を示されたい。

回答(質問6 及び質問7 の1について)

 お尋ねの趣旨並びに御指摘の「著作権者の権利が一方的に犠牲」、「小規模なクリエイターや独立系著作者が不利益を被る状況」、「この状況は憲法第十二条が求める公共の福祉の趣旨に反しないか。」及び「「個人として尊重される権利」を侵害する」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、二の1についてで述べたとおり、著作権法第三十条の四の規定は、「著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合」に、「その必要と認められる限度において」当該著作物の利用を認めるものであり、著作権者の利益を通常害するものではないと考えられ、また、同条ただし書においては、「当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。」としており、憲法第十二条及び第十三条の趣旨に反するものではないと考えている。

質問7

個人の尊重(憲法第十三条)との関係について

1 著作権法第三十条の四は、AI技術の発展を優先し、著作権者の権利を制限するものであり、クリエイターが「個人として尊重される権利」を侵害する可能性があると考える。政府が憲法第十三条に照らして、著作権法第三十条の四が合憲であるとする根拠を示されたい。

2 著作権法第三十条の四に係る改正等を内容とする著作権法の一部を改正する法律(平成三十年法律第三十号)の施行後に、著作権法第三十条の四に反発し、パブリックコメントなどの方法で抗議するクリエイターたちを、政府が個人として尊重した施策があれば具体的に示されたい。

回答(質問6 及び質問7 の1について)

 お尋ねの趣旨並びに御指摘の「著作権者の権利が一方的に犠牲」、「小規模なクリエイターや独立系著作者が不利益を被る状況」、「この状況は憲法第十二条が求める公共の福祉の趣旨に反しないか。」及び「「個人として尊重される権利」を侵害する」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、二の1についてで述べたとおり、著作権法第三十条の四の規定は、「著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合」に、「その必要と認められる限度において」当該著作物の利用を認めるものであり、著作権者の利益を通常害するものではないと考えられ、また、同条ただし書においては、「当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。」としており、憲法第十二条及び第十三条の趣旨に反するものではないと考えている。

回答(質問7 の2について)

 お尋ねの「パブリックコメントなどの方法で抗議するクリエイターたちを、政府が個人として尊重した施策」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。