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集団的自衛権の憲法解釈変更に関する質問主意書

経過状況:

答弁受理

提出者 島田洋一
会派 日本保守党
公式リンク 第217回国会 / 質問答弁

一九五一年九月八日に署名され、一九五二年四月二十八日に発効した日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約(以下、旧安保条約という)は前文で「平和条約は、日本国が主権国として集団的安全保障取極を締結する権利を有することを承認し、さらに、国際連合憲章は、すべての国が個別的及び集団的自衛の固有の権利を有することを承認している。これらの権利の行使として、日本国は、その防衛のための暫定措置として、日本国に対する武力攻撃を阻止するため日本国内及びその附近にアメリカ合衆国がその軍隊を維持することを希望する」と明記している。

すなわち旧安保条約の締結、発効時においては、日本政府は、個別的自衛権に加え、集団的自衛権も「行使」できるとの憲法解釈を採っていた。

ところがその後、日本政府は憲法解釈を変更し、一九七二年十月十四日の内閣法制局より参議院決算委員会に提出された資料で「わが国は国際法上いわゆる集団的自衛権を有しているとしても、国権の発動としてこれを行使することは、憲法の容認する自衛の措置の限界をこえるものであつて許されないとの立場」に移行した。

この政府見解の変更は、さらに一九八一年五月二十九日の答弁書(内閣衆質九四第三二号)で「国際法上、国家は、集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもつて阻止する権利を有しているものとされている。我が国が、国際法上、このような集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上、当然であるが、憲法第九条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであつて、憲法上許されないと考えている」というように定式化されて、今日に至っている。

そこで政府に対し質問する。

質問1

旧安保条約は憲法違反の条約であったのか。

回答(質問1 について)

 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約(昭和二十七年条約第六号)と憲法との関係については、昭和二十六年十月十六日の参議院本会議において、吉田茂内閣総理大臣(当時)が「安全保障條約と憲法第九條の関係についてのお尋ねでありますが、憲法第九條は、この九條に明記してある通り、国際紛争の手段として兵力を使うとか威嚇を用いるとかいうようなことはしない。(中略)保障條約については、これは自国の自衛に関する問題であつて、おのずからその間に区別があるので、保障條約があつたからといつて、これが憲法第九條の改訂を必要とすることはないはずと私は考えます。」と答弁したとおりであり、御指摘のように「憲法違反の条約」であるとは考えていない。

質問2

旧安保条約が合憲であったとすれば、集団的自衛権の「行使」に関する憲法解釈を、その後、日本政府が変えたことになると考えるが、解釈変更がなされたことを認めるか。

回答(質問2 について)

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、政府は、他国を防衛すること自体を目的とする集団的自衛権の行使は認められないとしており、また、御指摘の「一九七二年十月十四日の内閣法制局より参議院決算委員会に提出された資料」で示された政府見解は、憲法第九条の下でも例外的に自衛のための武力の行使が許される場合があるという基本的な論理を示した上で、これに当てはまる場合は我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限られるという当時の認識の下で、結論として、この基本的な論理に当てはまる例外的な場合としては、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限られるとしたものであり、憲法第九条の解釈を変更したものではない。

質問3

旧安保条約時代における「集団的自衛権の行使は合憲」という憲法解釈も成り立つとすれば、再びその解釈に戻すのに憲法改正は必要なく、政府見解の変更によって為しうると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

回答(質問3 について)

 御指摘の「旧安保条約時代における「集団的自衛権の行使は合憲」という憲法解釈」の意味するところが必ずしも明らかではないが、憲法第九条の下で許容される「武力の行使」は、あくまでも、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(平成二十六年七月一日閣議決定)でお示しした「武力の行使」の三要件に該当する場合の自衛の措置としての「武力の行使」に限られており、集団的自衛権の行使一般を認めるものではなく、他国を防衛すること自体を目的とする集団的自衛権の行使は認められない。