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沖縄県における鉄軌道等の整備に関する質問主意書

経過状況:

答弁受理

提出者 屋良朝博
会派 立憲民主党
公式リンク 第217回国会 / 質問答弁

令和四年五月の内閣総理大臣決定である、政府の「沖縄振興基本方針」において、陸上交通については「中南部で慢性的な交通渋滞が発生しており、物流や観光を始め幅広い分野に影響が及んでいる」とした上で、道路等の整備を進めるとともに、「新たな鉄道、軌道(中略)の整備の在り方について、関連する技術の進歩の状況や既存の公共交通との関係、まちづくりとの連携等にも留意しつつ、全国新幹線鉄道整備法(中略)を参考とした特例制度を含め調査及び検討を進め、(中略)一定の方向を取りまとめ、所要の措置を講ずる」こととされている。

質問1

沖縄振興基本方針にある沖縄本島の新たな鉄道、軌道(以下「沖縄鉄軌道」という。)の必要性や整備についての政府の見解を、以下の1及び2の観点からそれぞれ示されたい。

1 本島北部地域の振興、また沖縄美ら海水族館に加え本年七月に開園する新たなテーマパーク等による北部地域への観光客の移動需要の増加、更に高齢化の進行等、本島における公共交通機関に対する需要は高まることが予想されるが、このような沖縄の事情を踏まえた、沖縄鉄軌道の必要性。

2 沖縄鉄軌道の整備に国が主体的にかかわること。

回答(質問1 について)

 御指摘の「沖縄鉄軌道の整備に国が主体的にかかわること」の意味するところが必ずしも明らかではないが、沖縄島内における交通の状況に鑑み、内閣府において、沖縄の鉄軌道等に関する調査を実施してきているところであり、また、「沖縄振興基本方針」(令和四年五月十日内閣総理大臣決定)において「新たな鉄道、軌道その他の公共交通機関の整備の在り方について、関連する技術の進歩の状況や既存の公共交通との関係、まちづくりとの連携等にも留意しつつ、全国新幹線鉄道整備法(昭和四十五年法律第七十一号)を参考とした特例制度を含め調査及び検討を進め、その結果を踏まえて一定の方向を取りまとめ、所要の措置を講ずる」こととしていることから、引き続き調査を行っていく考えである。

質問2

内閣府は毎年、沖縄鉄軌道等の新たな公共交通システムを導入するための調査(鉄軌道等導入課題検討調査)を実施している。令和五年度の調査結果によると、事業実施に向けた費用便益比は、最大となる那覇〜名護間で磁気浮上式の鉄道を整備する場合でも〇・八二にとどまる。

1 沖縄鉄軌道の費用便益比は、現状、一を下回るが、沖縄振興基本方針でも課題とされた「慢性的な交通渋滞」への効果、「まちづくりとの連携」等を考慮したいわゆるクロスセクター効果、鉄道の地域への貢献、さらに国家目標である二〇五〇年のカーボンニュートラル実現への貢献等も加味した場合、費用便益比が一を下回ることが直ちに事業実施の妨げにならないと考えるが政府の見解を伺いたい。

2 沖縄鉄軌道の費用便益比の算出は、国土交通省の「鉄道プロジェクトの評価手法マニュアル」に基づき、社会的割引率を四パーセントとして計算しているが、四パーセントという割引率の適用は政府内でも議論があると聞いている。社会的割引率を四パーセントより小さくした場合、当然、沖縄鉄軌道の費用便益比は一に近づき、あるいは一を超える場合もあると思われるが、現状、不採算と考えられる事業でも、社会的割引率を変更した場合の計算結果によっては、採算性があると直ちに判断されることとなるのか政府の見解を伺いたい。

3 沖縄県は、沖縄鉄軌道の費用便益比の算出において、鉄軌道の需要喚起方策として貨物利用による需要喚起を加味している。昨今、物流業界の人手不足によって事業者ニーズや社会的背景等に変化が生じていることを踏まえ、費用便益比の算出において、貨物利用を加味すべきではないかと考えるが、政府の見解を伺いたい。

回答(質問2 の1について)

 お尋ねの「直ちに事業実施の妨げにならない」の意味するところが必ずしも明らかではないが、国土交通省作成の「鉄道プロジェクトの評価手法マニュアル(二千十二年改訂版)」(以下「マニュアル」という。)においては、「費用便益分析は、(中略)社会的な視点からの事業効率性を評価するもの」とされており、マニュアルが対象とするプロジェクトの評価に当たり、御指摘の「費用便益比」は考慮すべき要素の一つであると考えている。

回答(質問2 の2について)

 お尋ねについては、仮定の質問であり、お答えすることは困難である。

回答(質問2 の3について)

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、内閣府における沖縄の鉄軌道等に関する調査においては、マニュアルに準拠して、御指摘の「費用便益比の算出」を行っているところであり、マニュアルにおいては、例えば、「総所要時間の短縮便益」について、御指摘の「貨物利用」を除いて算出しているものではない。

質問3

沖縄振興基本方針にある、全国新幹線鉄道整備法を参考とした特例制度を含む調査及び検討について

1 現在の取組状況を伺いたい。

2 問二の2でお尋ねした四パーセントより低い社会的割引率を適用し、また、整備区間を需要の高い部分に限定する等適切な区間に設定し直した上で、あわせて整備新幹線と類似のスキームが適用されることとなれば、沖縄鉄軌道の現実味は一気に増すものと考えられる。このような観点も踏まえた検討及び実施の必要性について、政府の見解を示されたい。

回答(質問3 の1について)

 お尋ねについては、「沖縄振興特別措置法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(令和四年三月九日衆議院沖縄及び北方問題に関する特別委員会)の十一において「鉄軌道を含む新たな公共交通システムの導入に向け、公共交通機関に関連する技術の進歩の状況その他の事情を踏まえて、全国新幹線鉄道整備法を参考とした特例制度についても調査及び検討を行うこと」とされていること及び「沖縄振興特別措置法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(令和四年三月三十日参議院政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会)の十三において「鉄軌道を含む新たな公共交通システムの導入に向け、公共交通機関に関連する技術の進歩の状況その他の事情を踏まえ、全国新幹線鉄道整備法を参考とした特例制度についても調査及び検討を行うこと」とされていることを踏まえ、内閣府における沖縄の鉄軌道等に関する調査において、令和四年度から、御指摘の「特例制度」を含めて調査及び検討を行っているところである。

回答(質問3 の2について)

 お尋ねについては、仮定の質問であり、また、その趣旨が明らかではないため、お答えすることは困難である。

質問4

沖縄振興基本方針にもあるとおり本島中南部の交通渋滞は慢性化している。特に県庁に近い那覇市の国道では、通勤ラッシュ時の車の平均時速が九キロメートルと、東京二十三区の商業地の国道の平均時速十四キロメートルより遅く、渋滞の損失時間は年間八千百四十五万時間、経済損失額として換算した場合、県全体で年間約千四百五十五億円にも上り、県民一人当たり九万八千円になるという。

1 このような沖縄の渋滞に対する政府の見解、及び渋滞解消に向けた政府の対策についてそれぞれ伺いたい。

2 渋滞問題への対処や公共交通を核とした都市構造への変換等を背景に、令和六年三月、那覇市は市内にLRT(次世代型交通システム)を整備する計画の素案を公表した。同計画への政府の見解と、計画実現のための国の財政的・制度的な具体的支援について、それぞれ伺いたい。

回答(質問4 の1について)

 沖縄県内の渋滞については、令和四年十二月七日の衆議院沖縄及び北方問題に関する特別委員会において、岡田国務大臣(当時)が「これまでも沖縄県の道路整備を着実に進めてきたところでありますが、いまだに、那覇市などにおける全国と比較しても深刻な渋滞の緩和・・・が道半ばでありまして、課題になっているという認識であります。」と答弁しているとおりであり、引き続き、地元自治体と連携し、幹線道路網等の整備を実施してまいりたい。

回答(質問4 の2について)

 那覇市において、令和六年三月に「那覇市LRT整備計画素案」を作成したことは承知している。同計画素案は、同市の考え方を取りまとめたものと承知しており、同計画素案に関する見解については、政府としてお答えする立場にない。

 また、現時点で、お尋ねの「国の財政的・制度的な具体的支援」をお示しすることは困難であるが、今後、同市からの相談等があれば、適切に対応してまいりたい。