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食料・農業・農村政策に係る政府の基本的認識に関する質問主意書
経過状況:答弁受理
私が提出した質問に対する答弁書(内閣衆質二一六第一三号。以下「前回答弁書」という)を踏まえ、食料・農業・農村政策に係る政府の基本的認識について、以下、質問する。
質問1
前回答弁書において、相続に伴う農地の課題の解決策として、義務化された相続登記の申請について周知及び適正な運用の確保を行うほか、地域計画の策定を推進した上で地域計画の区域において農地中間管理事業を重点的に行い、農業の担い手への農地の集積・集約化を図る旨の答弁をしている。しかし、農林水産省の「地域計画(モデル地区)の取組状況(令和六年七月末時点)」においては、地区内の農地面積の三割以上が遊休農地の地区、後継者が不足している地区、十年後には離農していると考えている農家が約三割いることが明らかになった地区等があり、地域における農業の継続が危ぶまれる課題が散見される。このことは、政府のこれまでの農地面積及び農業者の減少に対する取組が十分でなかったことの証左であると考える。農地の集積・集約化の現状並びに本年四月以降の農地の集積・集約化の目標及び目標達成までの工程をそれぞれ明らかにされたい。
回答(質問1 について)
令和五年度末の全国の耕地面積(農林水産省が公表している「耕地及び作付面積統計」における耕地面積をいう。)に占める農業の担い手が利用する農地の面積の割合(以下「農地集積率」という。)は六十・四パーセントとなっている。また、お尋ねの「目標達成までの工程」の意味するところが必ずしも明らかではないが、令和七年四月以降の農地集積率の目標及び当該目標の達成に向けた施策については、令和六年の食料・農業・農村基本法(平成十一年法律第百六号)の改正を踏まえ行う食料・農業・農村基本計画の策定過程の中で現在検討しているところである。
質問2
我が国の食料安全保障を確かなものとするため、地域計画の策定過程で近い将来に営農する農業者がいなくなることが判明した農地について、外国人及び外国法人による当該農地の取得を阻止する必要があると考えるが、現状、政府の見解及び必要があるとすれば、その阻止に係る対策の具体的内容を明らかにされたい。
回答(質問2 について)
御指摘の「地域計画の策定過程で近い将来に営農する農業者がいなくなることが判明した農地」については、その所在する地域における当該地域外の農業の担い手の誘致の促進等の農業の担い手の確保を推進すること等により、その効率的な利用の確保に努めてまいりたい。なお、御指摘の「農地の取得」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、農地について農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)第三条第一項本文に掲げる権利(以下単に「権利」という。)を取得しようとする場合には、同条第二項第一号等により、その者が権利の取得後において耕作又は養畜の事業に供すべき農地及び採草放牧地の全てを効率的に利用して耕作又は養畜の事業を行うこと、必要な農作業に常時従事すること等の要件に適合しなければならないことから、外国に居住する外国人又は日本国内に事務所を設置していない外国法人が農地について権利を取得することは困難である。
質問3
相続土地国庫帰属制度等により国庫に帰属した農地について
1 当該農地の件数、面積、所在地(都道府県単位)を可能な限り明らかにされたい。
2 当該農地は引き続き農地として活用するべきと考えるが、政府の認識、取扱いの現状及び今後の対策を明らかにされたい。
回答(質問3 の1について)
御指摘の「相続土地国庫帰属制度等により国庫に帰属した農地」について、相続土地国庫帰属制度(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和三年法律第二十五号)第一条に規定する制度をいう。以下同じ。)により国庫に帰属した農地は、令和六年十二月末現在、三百六十三件、十七・六ヘクタールであり、その?件数及び?面積を都道府県ごとにそれぞれお示しすると、次のとおりである。
北海道 ?三件 ?約〇・三ヘクタール
青森県 ?二件 ?約〇・一ヘクタール
岩手県 ?一件 ?約〇・〇一ヘクタール
宮城県 ?三件 ?約〇・一ヘクタール
秋田県 ?一件 ?約〇・〇三ヘクタール
山形県 ?八件 ?約〇・二ヘクタール
福島県 ?六件 ?約〇・一ヘクタール
茨城県 ?四件 ?約〇・一ヘクタール
栃木県 ?三件 ?約〇・二ヘクタール
群馬県 ?十六件 ?約一・一ヘクタール
埼玉県 ?四十九件 ?約二・二ヘクタール
千葉県 ?七件 ?約〇・三ヘクタール
東京都 ?四件 ?約〇・一ヘクタール
神奈川県 ?十件 ?約〇・六ヘクタール
山梨県 ?七件 ?約〇・六ヘクタール
長野県 ?六件 ?約〇・三ヘクタール
静岡県 ?二十九件 ?約一・一ヘクタール
新潟県 ?五件 ?約〇・五ヘクタール
富山県 ?零件 ?零ヘクタール
石川県 ?六件 ?約〇・二ヘクタール
福井県 ?一件 ?約〇・〇二ヘクタール
岐阜県 ?十九件 ?約一・二ヘクタール
愛知県 ?十九件 ?約〇・六ヘクタール
三重県 ?十五件 ?約〇・四ヘクタール
滋賀県 ?五件 ?約〇・一ヘクタール
京都府 ?二件 ?約〇・一ヘクタール
大阪府 ?二件 ?約〇・一ヘクタール
兵庫県 ?二十二件 ?約一・六ヘクタール
奈良県 ?一件 ?約〇・〇一ヘクタール
和歌山県 ?十二件 ?約〇・八ヘクタール
鳥取県 ?零件 ?零ヘクタール
島根県 ?九件 ?約〇・六ヘクタール
岡山県 ?八件 ?約〇・三ヘクタール
広島県 ?十二件 ?約〇・三ヘクタール
山口県 ?十三件 ?約〇・八ヘクタール
徳島県 ?三件 ?約〇・一ヘクタール
香川県 ?十件 ?約〇・五ヘクタール
愛媛県 ?六件 ?約〇・二ヘクタール
高知県 ?三件 ?約〇・一ヘクタール
福岡県 ?十三件 ?約〇・六ヘクタール
佐賀県 ?三件 ?約〇・一ヘクタール
長崎県 ?四件 ?約〇・一ヘクタール
熊本県 ?二件 ?約〇・二ヘクタール
大分県 ?六件 ?約〇・三ヘクタール
宮崎県 ?一件 ?約〇・一ヘクタール
鹿児島県 ?二件 ?約〇・一ヘクタール
沖縄県 ?零件 ?零ヘクタール
回答(質問3 の2について)
御指摘の「相続土地国庫帰属制度等により国庫に帰属した農地」については、その所在する地域の農業者が権利を有し、その責任において農地として効率的に利用されることが望ましいと認識している。
このため、農林水産省としては、相続土地国庫帰属制度により国庫に帰属した農地について、草刈り作業や巡回など適正な維持管理を行いつつ、農業委員会が地域計画(農業経営基盤強化促進法(昭和五十五年法律第六十五号)第十九条第一項に規定する地域計画をいう。)を踏まえ、地域の農業者との交渉を積極的に行うことを促進すること等により、早期に農業者に農地を譲り渡し、又は貸し付け、農地の効率的な利用の確保を図っていく考えである。
質問4
前回答弁書において「一般論としては、農業者の所得を補償する施策については、農業経営の改善に向けた取組を妨げる懸念があること等から、御指摘のように「民主党政権時に実施した農家への戸別所得補償制度を復活させる」ことは考えていない。」と答弁している。
1 民主党政権時の戸別所得補償制度が農業経営の改善に向けた取組を妨げたという事実はあったと政府は考えているのか。あったとするのであれば、当該事実の内容を明らかにされたい。
2 その上で、農業者の所得を補償する施策が農業経営の改善に向けた取組を妨げるという一般論の根拠を明らかにされたい。
回答(質問4 について)
お尋ねの「農業経営の改善に向けた取組を妨げたという事実」及び「農業経営の改善に向けた取組を妨げるという一般論の根拠」については、政府としては、「農業経営の改善に向けた取組」の一つとして、農業の担い手に対する農地の利用の集積等の施策を講ずることとしているが、その指標となる農地集積率について、平成十八年度から平成二十一年度までの期間は、平成二十一年度末に四十八・〇パーセントとなり、平成十七年度末の三十八・五パーセントと比べて年平均約二・四ポイント上昇し、また、平成二十六年度から令和五年度までの期間は、令和五年度末に六十・四パーセントとなり、平成二十五年度末の四十八・七パーセントと比べて年平均約一・二ポイント上昇したのに対し、御指摘の「民主党政権時の戸別所得補償制度」が実施されていた平成二十二年度から平成二十五年度までの期間は、平成二十五年度末に四十八・七パーセントとなり、平成二十一年度末の四十八・〇パーセントと比べて年平均約〇・二ポイントの上昇となったことが該当し得るものと考えている。
質問5
遺伝子組み換え食品の表示は、義務表示対象が九種類の作物及び三十三加工食品群に限定されており、例えばしょうゆ、大豆油、液糖、コーン油、マーガリン、菜種油、砂糖は義務表示の対象とされていない。しかし、しょうゆ、大豆油、液糖、コーン油、マーガリン、菜種油、砂糖といった加工食品については、消費者に直接的に利用・消費され、若しくは消費者に身近な加工食品の原材料として利用されているものである。国民による安全・安心な食品の選択を可能とするためにこれらの加工食品及びこれらの加工食品を原材料として使用した加工食品についても義務表示の対象とする必要があると考えるが、政府の認識を明らかにされたい。
回答(質問5 について)
組換えDNA技術を用いて生産された農産物を主な原材料とする加工食品である旨等の表示義務の対象については、適正な監視指導を実施する観点から、組換えDNA技術を用いたものであることを科学的に検証できる食品であることが適当であると考えていることから、当該表示義務の対象を食品表示基準(平成二十七年内閣府令第十号)別表第十七の下欄に掲げるものとしている。お尋ねの「しょうゆ、大豆油、液糖、コーン油、マーガリン、菜種油、砂糖」のように、組み換えられたDNA及びそれにより生成されたたんぱく質が製造又は加工の過程において除去又は分解され、これらを含むことを科学的に検証することができないものについては、現行の食品表示制度においては当該表示義務の対象としていない。
質問6
我が国の食料消費の現状に鑑み、昆虫食を政府が推進する必要性はないと考える。農林水産省がみどりの食料システム戦略において昆虫食の研究開発の産学官連携による推進を位置付けた理由及び経緯を明らかにされたい。
回答(質問6 について)
令和三年五月に農林水産省が策定した「みどりの食料システム戦略」においては、「近年、食料の安定供給・農林水産業の持続的発展と地球環境の両立が強く指摘され」、また、「健康な食生活や持続可能な生産・消費を求める動きがみられる」中、「脱炭素化、健康・環境に配慮した食品産業の競争力強化」を図るため、「代替肉・昆虫食の研究開発等、フードテック(食に関する最先端技術)の展開を産学官連携で推進」することとしている。