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幼稚園等の体制及び施設の整備支援に関する質問主意書
経過状況:答弁受理
幼児教育は生涯の人格形成の基礎を培うものであり、全ての子どもに格差なく質の高い幼児教育を受ける機会を提供することが重要である。地域の幼児教育の中核的存在として、幼稚園及び認定こども園(以下「幼稚園等」という。)の果たすべき役割は極めて大きく、その体制及び施設の整備については十全な支援がなされなければならないと考える。
以上を踏まえ、次の事項について質問する。
質問1
幼稚園等教諭の人材は、幼児期及び幼保小接続期の教育の質の向上の根幹をなす存在であるが、養成してもその多くが他業種へ就職する、平均勤続年数が少ない、離職者の再就職が少ないなど、人材の需要の高止まりに供給が追いついていない現状にあると承知している。
1 各地域の幼児教育人材の育成等を担う拠点として、大学等の果たすべき役割は重要であると考える。文部科学省において実施している大学等を通じたキャリア形成支援による幼児教育の「職」の魅力向上・発信事業の取組の現状と、当該事業が人材の供給に与えた影響について、政府の見解をそれぞれ示されたい。
2 幼稚園等の人材確保において、人材紹介・派遣会社の果たす役割も大きいと考える。一方で、そのような会社の利用には手数料を要し、その支払いが幼稚園等の経営を圧迫している事例があるという指摘もなされているところである。
ア かかる現状を政府は把握しているか。
イ 幼稚園等における人材確保を支援するため、国として何らかの取組を行っているか。行っているのであれば取組の現状を示されたい。
3 幼稚園等教諭につき、先述のように「平均勤続年数が少ない」ことが指摘されているところ、人材の定着に向けた支援も重要であると考える。
ア 幼稚園等教諭の離職理由について、国として調査を行った実績はあるか、実績があれば、離職理由の代表例を示されたい。
イ 人材の定着に向けた支援の取組の現状を示されたい。
回答(質問1 の1について)
お尋ねの「大学等を通じたキャリア形成支援による幼児教育の「職」の魅力向上・発信事業」(以下「魅力向上事業」という。)の「取組の現状」については、大学等を幼稚園教諭等のキャリア形成の支援の拠点として、中学生及び高校生を対象とした出前授業の開催等を通じた現場の魅力の発信、大学生のキャリア形成の支援のためのシンポジウムの開催、現職の幼稚園教諭の職場定着や離職者の円滑な復職支援のための取組等を行っているところである。また、幼稚園教諭等の雇用の動向については、様々な要因が影響していると考えられることから、魅力向上事業が「人材の供給に与えた影響」については、一概にお答えすることは困難である。
回答(質問1 の2について)
御指摘の「経営を圧迫」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、幼稚園等において、職業紹介事業者等を利用する例があることは承知しており、政府としては、幼稚園等における適正な職業紹介事業者等の利用を促すため、「「職業安定法施行規則の一部を改正する省令」等の公布に伴う雇用仲介事業利用にあたっての留意事項等の周知協力依頼について」(令和六年十一月二十六日付け厚生労働省職業安定局需給調整事業課長等事務連絡)において、幼稚園等に対して職業紹介事業者等を利用する際の注意点等を周知しているところである。
回答(質問1 の3のアについて)
お尋ねについては、例えば、文部科学省において令和元年度に東京都私立幼稚園連合会に委託して行った調査研究である「幼稚園の人材確保支援事業」によると、「教員の主な離職理由」として、「結婚・出産」、「ストレス」、「人間関係」等が挙げられている。
回答(質問1 の3のイについて)
お尋ねの「人材の定着」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、文部科学省においては、例えば、令和五年度から魅力向上事業を実施しているところであり、若手の幼稚園教諭が悩みについて教員養成課程を有する大学等の教授に相談できる機会の提供、現職の幼稚園教諭が教諭としてのキャリアを確立するために必要な知識及び技能を体系的に身に付けられる機会の提供等、幼稚園教諭の職場定着を支援する取組を行っている。
質問2
一般財団法人である全日本私立幼稚園幼児教育研究機構が開発した「公開保育を活用した幼児教育の質向上システム(ECEQ)」について、二〇一九年度の文部科学省委託調査において調査分析がなされている。当該調査を踏まえ、ECEQを活用した幼児教育の推進体制の整備を行うべきと考えるが、政府としてECEQにつきどのような評価をしているのか、見解を示されたい。
回答(質問2 について)
御指摘の「公開保育を活用した幼児教育の質向上システム(ECEQ)」については、個別の団体における取組であり、その評価について、政府として見解を述べることは差し控えたいが、令和元年度に当時の公益財団法人全日本私立幼稚園幼児教育研究機構が実施した御指摘の「文部科学省委託調査」においては、その有用性と課題が報告されている。
質問3
中央教育審議会初等中等教育分科会(第百四十七回、二〇二五年一月二十八日)において、幼稚園設置基準の見直しが議題となった。幼稚園における学級編制の基準を、原則三十五人以下から原則三十人以下に引き下げるとするもので、当該措置には教育環境の改善等の観点から大いに賛同するものである。一方、学級編制基準を引き下げた場合、教諭の人材確保や園舎の増築・改築などの対応が必要になると考えるが、このような園への対応・支援として、どのような方策を検討しているか。
回答(質問3 について)
御指摘の「幼稚園における学級編制の基準を、原則三十五人以下から原則三十人以下に引き下げる」ことについては、文部科学省において、現在その具体的な内容について検討を進めているところであり、現時点において、お尋ねについてお答えすることは困難である。
質問4
文部科学省の二〇二五年度予算においては「幼児教育の学び強化事業」として「教育課題に関する調査研究」を行うこととしている。
1 その研究の視点の例として「障害のある幼児や外国人幼児などに対する支援の在り方」が挙げられているが、当該研究の成果を実際の幼児教育の現場にどう生かすのか、今後の政策の方向性を示されたい。
2 単なる調査研究にとどまらず、障害のある幼児等の受入れについての補助単価の見直しなど、現場の負担軽減のため、より具体的かつ直接的な支援を行うべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
回答(質問4 の1について)
御指摘の「幼児教育の学び強化事業」については、令和七年度予算において、調査研究に必要な経費を計上しているが、現時点では当該調査研究の具体的な内容は決まっていないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。
回答(質問4 の2について)
お尋ねの「より具体的かつ直接的な支援」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、「障害のある幼児等の受入れ」に対する支援については、政府において、その実施主体である都道府県等による補助の実績や効果等を踏まえ、必要に応じて適切に対応してまいりたい。
質問5
地震や大雨等の自然災害に際しては、子どもたちが強い恐怖や衝撃を受け、その後の成長や発達に大きな障害となることが懸念されるところであり、幼稚園等において現状把握や心のケアを行うことは重要であると考える。
1 政府において、そのような心のケアの担い手を養成する取組を行っているか。
2 幼稚園等の幼児教育の現場において心のケアの担い手の雇用を促進する取組を行っているか。
3 1及び2で行っているのであれば、政府の取組の現状をそれぞれ示されたい。
回答(質問5 について)
お尋ねの「心のケアの担い手」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、幼稚園教諭等に対しては、教育職員免許法施行規則(昭和二十九年文部省令第二十六号)第二条第一項において、普通免許状の授与を受けるに当たって修得が必要な科目に含めることが必要な事項として、「教育相談(カウンセリングに関する基礎的な知識を含む。)の理論及び方法」を規定し、幼児の発達の状況に即しつつ、個々の心理的な特質や教育的課題を適切に捉え、支援するために必要な基礎知識を身に付けさせることとしている。
また、政府としては、「緊急スクールカウンセラー等活用事業交付金」において、被災した幼児等の心のケア、教職員や保護者等への助言・援助等を行うため、公立の幼稚園等にスクールカウンセラー等を緊急的に配置するために必要な経費を補助するとともに、「私立高等学校等経常費助成費補助金」において、私立の幼稚園等におけるスクールカウンセラーの活用等に係る経費の一部を補助しているところである。
質問6
私立幼稚園施設整備費補助事業は、安全・安心な幼児教育環境整備支援のため極めて重要な役割を果たしており、今後とも充実を図っていく必要があると考える。一方で、二〇二四年度行政事業レビューシートによると、当該事業の二〇二三年度の執行率は二十五・八%にとどまり、「令和五年度決算において多額の不用額が生じている」ことが指摘されている。この要因と、執行率向上のための取組の現状について、政府の見解をそれぞれ示されたい。
回答(質問6 について)
お尋ねの「要因」については、例えば、工事費の高騰や資材の不足により、私立の幼稚園において補助の対象となる事業を実施することが困難となったこと等が考えられる。文部科学省においては、幼稚園における早期の事業着手を可能とするため、「私立学校施設整備費補助金」への申請の時期を見直す等の運用改善等の対策を行っているところであり、予算の執行に当たっては、効果的かつ効率的な執行となるよう、引き続き努めてまいりたい。
質問7
教育支援体制整備事業費交付金事業は幼稚園等におけるICT環境整備の支援や遊具、運動用具、教具等の整備支援などを実施しているものと承知しているが、二〇二四年度行政事業レビューシートによると、当該事業の課題として「遊具、運動用具、教具等の整備支援の需要が非常に高く採択率が低くなっている現状」があるとされている。その一方、当該事業の二〇二三年度の執行率は五十七・二%にとどまり、「令和五年度決算において多額の不用額が生じている」ことが指摘されており、予算が確保されていながら、必要な支援が現場に行き渡っていない現状が見て取れる。需要が非常に高い一方、多額の不用額が生じている原因について、政府の見解を示された上で、その解決のための取組の現状を示されたい。
回答(質問7 について)
お尋ねの「原因」については、例えば、令和五年度予算において、御指摘の「遊具、運動用具、教具等」の整備のほかに、新型コロナウイルス感染症対策を実施するために必要となる衛生用品等の購入等についても、これらに対する支援に必要な経費を計上していたが、同年度に、新型コロナウイルス感染症が感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)第六条第六項に規定する五類感染症とされたことにより、補助の対象となる事業の実施数が減少したこと等が考えられる。令和七年度予算においては、新型コロナウイルス感染症対策のみを目的とした支援に必要な経費は計上していないが、令和八年度以降については、補助の申請の状況を十分に考慮しながら、各年度の予算編成過程において検討し、適切に対応してまいりたい。
質問8
文部科学省が推進する教育ICT環境の整備の取組であるGIGAスクール構想の下、小中学校においては「一人一台端末」の達成が実現され、教育現場は大きな変革を遂げている。一方、幼児教育の現場ではICT環境の整備等は未だ十分な水準であるとは言えず、文部科学省が公表した、二〇二三年度幼児教育実態調査によると、教員用のタブレット又はPCの配備状況は、公立幼稚園は「一人一台程度」となっているものの、私立幼稚園は「複数台を共有」が一番多い状況にある。
また、保護者との連絡は手書きの連絡ノート、使用教材の注文は手書きの注文書と振込用紙で行うなどの園が少なくないと聞く。
1 教職員等の業務負担軽減のためにも、幼稚園等におけるICT環境の整備は喫緊の課題であると考えるが、政府として行っている支援策を示されたい。
2 導入作業自体が教職員への負担となるのでは本末転倒であり、導入の初期段階における作業や端末の使用方法についての研修等による支援が重要であると考えるが、政府の見解を示されたい。
回答(質問8 について)
幼稚園等において、情報端末の整備、保護者との連絡や情報共有を行うためのアプリの導入及び教職員に対するこれらのICTの活用に係る研修を行う場合には、「教育支援体制整備事業費交付金」による支援を行っている。