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沖縄県の離島からの住民避難・受入れに係る取組に関する質問主意書
経過状況:答弁受理
政府は、二〇二五年三月二十七日に国民保護に関する取組として、沖縄県の離島からの住民避難・受入れに係る取組(以下、「避難計画」という。)を発表した。
以下、避難に関する政府の見解について質問する。
質問1
住民の避難先となる九州・山口各県のうち、福岡県は受入れ人数を約四万七千四百人としている。福岡県商工部観光局観光政策課作成の令和七年度における観光振興施策の方向性についてによると、宿泊施設稼働率は二〇二三年が六十四・八パーセント、二〇二四年一月〜七月は七十パーセント前後を維持している。
1 避難先の算定の前提となる、福岡県内の宿泊施設等の客室数を明らかにした上で、避難時において、どの程度の空室数があると想定して、客室の確保ができると判断しているのか、政府の見解を示されたい。
2 政府は、避難計画の前提条件として、避難先となるホテル等は全室空室、避難先地域への入域自粛要請がかかるとしているが、宿泊施設の収容能力は、どのように検証して実現できると判断しているのか、政府の見解を示されたい。
回答(質問1 の1について)
九州各県及び山口県は、「国民保護法における受入れに係る初期的な計画の作成について(依頼)」(令和六年六月十一日付け閣副事態第二百五十一号・府政防第九百六十号・消防災第百二十号内閣官房副長官補(事態対処・危機管理担当)付内閣参事官、内閣府政策統括官(防災担当)付参事官(被災者生活再建担当)、内閣府政策統括官(防災担当)付参事官(避難生活担当)及び消防庁国民保護・防災部国民保護支援調整室長連名通知)に基づく「国民保護法における受入れに係る初期的な計画」の作成に向けた検討の前提として、国の依頼に基づき、令和五年度に宿泊施設の客室数を調査しており、福岡県内の当該客室数は六万三千四百二十室であったと承知している。当該検討における、避難住民を受け入れる施設の全室が空室であるという前提条件は、まずは初期的な段階の想定として設定したものである。
回答(質問1 の2について)
お尋ねの「収容能力」及び「実現」の意味するところが必ずしも明らかではないが、避難住民の宿泊施設等への受入れについては、令和七年度以降、関係地方公共団体、民間事業者等と連携を深め、災害時の状況も参考にしつつ、更に検討を深めてまいりたい。
質問2
避難先の福岡・鹿児島空港より、宿泊施設までの移動について、貸切りバス等が受入れ側の検討事項となっている。この避難計画について、バス協会より運転手の高齢化や人手不足が進み、対応可能事業者は多くないとの指摘もある。
1 各バス事業者及び車両台数は避難計画の所要のうちどこまで確保が可能となっているのか、政府の把握するところを具体的に示されたい。
2 避難計画では、鹿児島空港から福岡県へ移動する場合、二百キロメートルの距離を貸切りバスまたは鉄道で移動するとされる。バス移動の場合、バス事業者からはこの長距離を何度も往復するのは困難との指摘もあるが、この移動はなぜ可能と判断して記載したのか、政府の見解を示されたい。
回答(質問2 の1について)
お尋ねの「どこまで確保が可能となっているのか」の意味するところが必ずしも明らかではないが、現在、武力攻撃事態等であると認定されている状況ではないことから、関係地方公共団体において、バス事業者との契約によりバスによる輸送を準備する等の対応をすることまでは予定していないと承知している。
回答(質問2 の2について)
福岡県は、令和六年度の検討においては、鹿児島空港からの輸送について、北九州市内及び久留米市内への輸送手段の検討を行ったが、いずれも貸切バスに加えて新幹線を利用する案を第一の案として整理し、同案を念頭に今後検討していく予定であると承知している。いずれにしても、輸送手段については、同県において検討していくものと承知している。
質問3
避難先の旅館・ホテルといった宿泊施設等の借上料について、災害救助法に基づく国の補助の上限目安は朝食付き一人一泊七千円である。しかし、福岡県の調査では素泊まりであっても一万二千円、朝食付きは二万円前後となり価格相場と乖離しているとの指摘がある。避難計画においても、今後の課題として、「福岡県内ホテルへのアンケート調査の結果、シングル素泊まりの通常価格平均が、災害救助法上の宿泊施設の借上げ料の上限基準を上回るなど、乖離が生じている。」と記載しているが、政府は、どのように対処して客室を確保するのか、見解を示されたい。
回答(質問3 について)
お尋ねについては、関係地方公共団体からの意見があることは承知しているが、令和七年度以降、関係地方公共団体、民間事業者等と連携しつつ、公営住宅、賃貸住宅等への受入れ及び県内飲食店による食事の提供も含めて対応を検討してまいりたい。
質問4
避難計画において、二〇二五年度以降の検討課題として、「要配慮者の受入れ調整に関する事項の検討」、「避難の中長期化を見据えた検討(就学再開、就労支援、中長期の収容施設の提供等)」の記載がある。受入れ県は要配慮者に関して、全国の医療福祉関係者の応援が不可欠としている。政府は全国の医療福祉関係者の応援の確保について、各県へどのような支援をするのか、見解を示されたい。
回答(質問4 について)
九州各県及び山口県が全国の御指摘の「医療福祉関係者」と議論を重ねながら、「医療福祉関係者」を確保する内容を含む「受入れ基本要領」を令和八年度までに作成することができるよう、国として支援してまいりたい。
質問5
避難計画において、二〇二四年度は石垣市、与那国町において住民参加型の住民意見交換会を実施したとある。住民に向けてどのように安全に移動できるのか、避難先への不安解消について、今後どのように避難計画への各島民の合意形成を得るのか、具体的に示されたい。
回答(質問5 について)
お尋ねの「住民に向けてどのように安全に移動できるのか」及び「避難先への不安解消」の意味するところが必ずしも明らかではないが、令和八年度に予定している「沖縄県国民保護共同実動・図上訓練」に向け、先島諸島の市町村等で開催される住民意見交換会等に参加し、住民との意見交換を重ねることにより、関係地方公共団体の住民の理解促進に努めてまいりたい。
質問6
避難計画において、移動期間は、船舶や航空機を使い一日二万人、およそ六日間で避難を完了するとされる。
1 船舶や航空機は搭乗・乗船予約の取消し等、全席空席化や避難対象者以外の利用自粛要請をかけるのか、政府の見解を示されたい。
2 有事による避難開始から六日間も避難を要する地元で待機させるのは、国民を保護する観点から外れるのではないか、政府の見解を示されたい。
回答(質問6 の1について)
今回の検討においては、あくまでも訓練上の想定として、国が先島諸島の市町村を武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成十六年法律第百十二号。以下「国民保護法」という。)第五十二条第二項第一号の要避難地域として示した上で避難措置の指示をするとともに、国から九州各県及び山口県への入域の自粛要請をすることにより、航空機については、避難元の空港に係る定期便は原則として全便が運休となり、また、受入れ先の空港に係る国内便は離島の生活路線等の一部の便を除き大部分が運休となる前提条件を設定したものである。船舶を利用した輸送については、前提条件も含め、令和七年度以降に検討することを予定している。
回答(質問6 の2について)
避難元市町村において利用することが想定される各空港における駐機場の最大限の活用等により、一日約二万人を先島諸島の島外へ輸送する能力を確保できる見通しとなっているが、避難に要する時間の短縮については、今後も更に検討を深めてまいりたい。
質問7
この避難計画は、対象地域について沖縄県の離島である先島諸島の住民避難を示したものである。
1 避難計画を要する事態の際、なぜ米軍及び自衛隊施設の存在する九州・山口各県を避難先としたのか。避難先として安全とする根拠を示されたい。
2 なぜ沖縄本島の住民が避難する国民保護に関する取組はないのか、政府の見解を示されたい。
回答(質問7 の1について)
国民保護法第三十二条第一項に基づき定められた国民の保護に関する基本指針(平成十七年三月二十五日閣議決定)において、「沖縄県の住民の避難については、沖縄本島や本土から遠距離にある離島における避難の適切な実施のための体制づくりなど、国が特段の配慮をすることが必要である。このため、国は、九州各県をはじめとする地方公共団体との広域的な連携体制を整え」るとされていることや、九州各県、山口県及び沖縄県において「九州・山口九県武力攻撃災害等時相互応援協定」が締結されており、県域を越える住民の避難及び受入れを検討する素地があることから、「沖縄県国民保護共同図上訓練」上の想定として九州各県及び山口県を受入れ先としているところである。
なお、武力攻撃事態等について、その具体的態様を予断することは困難であることから、いずれの地域がお尋ねの「避難先として安全」であるかについて、お答えすることは困難である。
回答(質問7 の2について)
先島諸島は、沖縄本島や本土から遠距離にある離島であり、輸送手段の確保等、避難の困難性が高いと考えられることから、沖縄県及び先島諸島の五市町村と協議し、まずは先島諸島の避難を検討することとなった。
同県は、当該検討の成果を踏まえて沖縄本島を含む同県全体の避難の在り方を検討していく必要があると認識していると承知しており、今後の進め方については、同県と国でよく相談してまいりたい。