分かりやすい衆議院・参議院

TOP > 質問主意書・答弁書 > 杉村慎治:統計調査を民間に委託...

統計調査を民間に委託する際の管理体制に関する質問主意書

経過状況:

答弁受理

提出者 杉村慎治
会派 立憲民主党
公式リンク 第217回国会 / 質問答弁

政府が政策決定を行う際に参照する統計データの信頼性は、国民の納得と政策の正当性を担保する上で極めて重要であると考える。統計法に基づく公的統計は、統計委員会の審査を経るなど厳格な基準の下で実施されているが、政府が民間企業や業界団体、研究機関に委託した調査データが政策判断にどのような影響を与えているのか明らかでなく、また、その管理体制が不透明であるとの指摘がある。

特に、統計調査の民間委託にはリスクが伴うと考える。例えば、調査対象の偏りやデータの恣意的な操作が行われる可能性、更に委託先が特定の団体と関係を持ち調査結果が利益相反の影響を受ける可能性、政府が十分な監督を行わずに結果として信頼性の低いデータが政策決定に利用される可能性などがあると考える。

政府が民間に委託する統計調査について、その信頼性をどのように確保しているのかを明確にするため、以下の事項について質問する。

質問1

政府が民間に委託する統計調査の実態について

1 政府が過去五年間に政策決定の根拠として用いた統計データのうち、民間に調査を委託した割合を可能な限り示されたい。

2 政府が過去五年間に民間に委託した統計調査の一覧(調査主体、調査手法、サンプル数、対象者の抽出方法)を可能な限り示されたい。

3 これらの委託調査の中立性をどのように担保しているのかを示されたい。

回答(質問1 の1について)

 お尋ねの「過去五年間に政策決定の根拠として用いた統計データ」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、令和元年度から令和四年度までの間(以下「当該期間」という。)に国が実施した統計調査(統計法(平成十九年法律第五十三号)第二条第五項に規定する統計調査をいう。以下同じ。)については、同法第五十五条第一項の規定に基づき、民間事業者への委託の状況についての報告を求めていたところであり、これにより総務大臣が把握したところによると、当該期間に国が実施した統計調査の数(同法第九条第二項第一号又は同法第十九条第二項において準用する同法第九条第二項第一号の調査の名称の数をいう。以下同じ。)に占める当該統計調査に関する事務の一部を民間事業者に委託した統計調査の数の割合は、七十八・五パーセントである。

回答(質問1 の2について)

 お尋ねの「調査主体」及び「サンプル数」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、統計法第九条第二項の規定に基づく申請及び同法第十一条の規定に基づく変更の申請により、令和七年三月末現在における?基幹統計調査を実施する府省、?同法第九条第二項第五号に掲げる報告を求めるために用いる方法並びに同項第四号に掲げる報告を求める個人又は法人その他の団体の?数及び?選定の方法を把握しているところ、当該統計調査に関する事務の一部を民間事業者に委託し、当該期間に実施した基幹統計調査に係る上記?から?までを、当該基幹統計調査ごとにお示しすると、それぞれ次のとおりである。

 国勢調査 ?総務省 ?同法第十四条に規定する統計調査員又は国の実施する統計調査に関する事務に従事する者であって当該統計調査を実施する府省の職員でないものが調査票を配布及び取集することにより行う方法(以下「調査員調査」という。)、郵送調査並びに統計調査を行う行政機関の長が識別符号を記載した書類を配布し、及び当該行政機関の長が報告者の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下同じ。)から電気通信回路を通じて当該識別符号を用いて送信された調査事項に係る情報を当該行政機関の長の使用に係る電子計算機において受信する方法により行う方法(以下「オンライン調査」という。) ?約一億二千六百万 ?全数調査

 個人企業経済調査 ?総務省 ?郵送調査及びオンライン調査 ?約三万七千 ?無作為抽出法

 科学技術研究調査 ?総務省 ?郵送調査及びオンライン調査 ?約一万八千 ?全数調査及び無作為抽出法

 就業構造基本調査 ?総務省 ?調査員調査、郵送調査及びオンライン調査 ?約百六十二万 ?無作為抽出法

 全国家計構造調査 ?総務省 ?調査員調査、郵送調査及びオンライン調査 ?約九万九百 ?無作為抽出法及び統計調査を実施する府省が、その知識、経験等により、当該統計調査の母集団の中で典型的な又は代表的なものと考える個人又は法人その他の団体を選定する方法(以下「有意抽出法」という。)

 社会生活基本調査 ?総務省 ?調査員調査、郵送調査及びオンライン調査 ?約二十八万五千 ?無作為抽出法

 経済センサス基礎調査 ?総務省 ?郵送調査及びオンライン調査 ?約六百十四万 ?全数調査

 法人企業統計調査 ?財務省 ?郵送調査及びオンライン調査 ?約四万九千七百 ?無作為抽出法

 民間給与実態統計調査 ?財務省 ?郵送調査及びオンライン調査 ?約二万七千 ?無作為抽出法

 人口動態調査 ?厚生労働省 ?郵送調査及びオンライン調査 ?約千九百 ?全数調査

 毎月勤労統計調査 ?厚生労働省 ?調査員調査、郵送調査及びオンライン調査 ?約九万八千 ?無作為抽出法

 薬事工業生産動態統計調査 ?厚生労働省 ?郵送調査及びオンライン調査 ?約四千九百 ?全数調査

 医療施設調査 ?厚生労働省 ?郵送調査及びオンライン調査 ?約十八万千 ?全数調査

 患者調査 ?厚生労働省 ?郵送調査及びオンライン調査 ?約一万三千八百 ?無作為抽出法

 賃金構造基本統計調査 ?厚生労働省 ?調査員調査、郵送調査、オンライン調査等 ?約百七十八万 ?無作為抽出法

 国民生活基礎調査 ?厚生労働省 ?調査員調査、郵送調査及びオンライン調査 ?約四十万千 ?無作為抽出法

 農林業センサス ?農林水産省 ?調査員調査、郵送調査、オンライン調査等 ?約百二十六万九百 ?全数調査

 牛乳乳製品統計調査 ?農林水産省 ?郵送調査、オンライン調査等 ?約九百二十 ?全数調査及び有意抽出法

 木材統計調査 ?農林水産省 ?調査員調査、郵送調査、オンライン調査等 ?約二千六百八十 ?全数調査及び無作為抽出法

 経済産業省生産動態統計調査 ?経済産業省 ?郵送調査及びオンライン調査 ?約一万三千 ?全数調査

 ガス事業生産動態統計調査 ?経済産業省 ?郵送調査及びオンライン調査 ?約千六百 ?全数調査

 石油製品需給動態統計調査 ?経済産業省 ?郵送調査及びオンライン調査 ?約二百 ?全数調査

 商業動態統計調査 ?経済産業省 ?郵送調査、オンライン調査等 ?約二万六千五百 ?全数調査及び無作為抽出法

 経済産業省特定業種石油等消費統計調査 ?経済産業省 ?郵送調査及びオンライン調査 ?約千三百 ?全数調査

 経済産業省企業活動基本調査 ?経済産業省 ?郵送調査及びオンライン調査 ?約四万五千 ?全数調査

 港湾調査 ?国土交通省 ?調査員調査、郵送調査及びオンライン調査 ?約六百六十 ?全数調査

 造船造機統計調査 ?国土交通省 ?郵送調査及びオンライン調査 ?約千三百 ?全数調査

 建築着工統計調査 ?国土交通省 ?オンライン調査等 ?約五十五万 ?全数調査及び無作為抽出法

 鉄道車両等生産動態統計調査 ?国土交通省 ?郵送調査及びオンライン調査 ?約二百二十 ?全数調査

 建設工事統計調査 ?国土交通省 ?調査員調査、郵送調査及びオンライン調査 ?約十二万二千 ?無作為抽出法及び有意抽出法

 船員労働統計調査 ?国土交通省 ?郵送調査及びオンライン調査 ?約千九百 ?全数調査及び無作為抽出法

 自動車輸送統計調査 ?国土交通省 ?郵送調査及びオンライン調査 ?約二万六千三百 ?全数調査及び無作為抽出法

 内航船舶輸送統計調査 ?国土交通省 ?郵送調査及びオンライン調査 ?約三百 ?全数調査及び無作為抽出法

 経済センサス活動調査 ?総務省及び経済産業省 ?調査員調査、郵送調査、オンライン調査等 ?約七百八十五万 ?全数調査

 経済構造実態調査 ?総務省及び経済産業省 ?郵送調査及びオンライン調査 ?約三十九万二千 ?有意抽出法

 工業統計調査 ?総務省及び経済産業省 ?調査員調査、郵送調査及びオンライン調査 ?約三十万五千 ?全数調査

回答(質問1 の3について)

 統計法第三条第二項の規定により、統計調査に関する事務の一部を民間事業者に委託した場合も含め、公的統計は、適切かつ合理的な方法により、かつ、中立性及び信頼性が確保されるように作成されなければならないこととされており、これを踏まえ、各府省において適切に対応しているところである。

質問2

民間に調査を委託する際の管理・監督体制について

1 政府が民間に調査を委託する際、その調査手法やデータ処理の信頼性をどのように検証しているのか示されたい。

2 政府が民間に調査を委託した場合、政府がデータを再検査した事例があれば示されたい。

回答(質問2 について)

 お尋ねの「調査手法やデータ処理の信頼性をどのように検証しているのか」及び「データを再検査した」の意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、公的統計の整備に関する基本的な計画(令和五年三月二十八日閣議決定)に記載のある「有識者からなるチームを総務省から派遣し、各府省の個々の統計の作成プロセス」の「改善を進める」際の「診断及びアドバイス」の「基準となる」ものとして「統計委員会が取りまとめた」事項においては、統計調査を実施する府省は、名簿の作成、調査の対象の抽出、集計等の委託の内容について、その実施状況を「受託等機関からの報告等に基づいて把握・管理しなければならない」こととされており、これに基づき、委託した民間事業者からの報告等について必要な確認を行うなど、適切に対応しているものと考えている。

質問3

ガイドラインの運用と受託資格について

1 統計調査における民間事業者の活用に係るガイドライン(平成十七年三月三十一日統計企画会議申合せ。以下「ガイドライン」という。)では「公共サービス改革法に基づく官民競争入札」を導入することがあるとされるが、随意契約の可能性が排除されていない。その結果、特定の事業者が不透明な形で受託するリスクがあると考える。この点について、政府は統計調査業務の契約プロセスの透明性をどのように確保しているのか、具体的な措置を示されたい。

2 ガイドラインでは「プライバシーマーク」などの資格・認定を「必須要件とすることが望まし」く、また「ISO9001」などを「加点要件等に設定とすることが考えられる」としているが、必須とはされていない。そのため、個人情報保護や業務品質の確保が十分になされていない事業者でも受託できる可能性があると考える。この点について、政府は統計調査を受託する民間事業者に対し、より厳格な資格要件(ISO認証の義務化など)を課す考えはあるか。政府の見解を示されたい。

3 民間事業者の監査について、ガイドラインでは、民間事業者の履行能力を「各府省間で共有化する」とあるが、過去に問題を起こした事業者が再受託する可能性を完全に排除する仕組みがないと考える。この点について、政府は事業者の監査結果を公表するなど、再発防止策を強化する考えはあるか。政府の見解を示されたい。

4 受託事業者が統計調査の品質を著しく損なった場合の罰則について、ガイドラインでは「設定した目標を正当な理由なく達成できなかった場合等の措置についてあらかじめ定めるよう努める」とあるのみで、具体的な違約金や業務停止措置が明記されていない。この点について、違約金の設定や業務停止措置の基準を明確化する考えはあるか。政府の見解を示されたい。

5 ガイドラインの示す資格要件では、たとえば決算公告を出していないNPO法人や一般社団法人でも受託可能と解釈される余地があると考える。この点について、決算公告を出していないNPO法人や一般社団法人が政府の統計調査業務を受託することは可能なのか、政府の明確な見解を示されたい。

回答(質問3 の1について)

 御指摘の「不透明な形で受託する」及び「契約プロセスの透明性」の意味するところが必ずしも明らかではないが、国の実施する統計調査に関する事務の一部を民間事業者に委託した場合における契約についても、「公共調達の適正化について」(平成十八年八月二十五日付け財計第二〇一七号財務大臣通知)に基づき、当該「契約に係る情報の公表」を適切に行っている。

回答(質問3 の2について)

 「統計調査における民間事業者の活用に係るガイドライン」(平成十七年三月三十一日統計企画会議申合せ。以下「ガイドライン」という。)において、「各府省は、統計調査に係る業務が、国民、企業等の秘密に関する情報や市場に影響を与える情報を取り扱うことを踏まえ、委託先とする民間事業者・・・については、国民に無用の不安や疑義を生じさせ、政府統計全体の信頼を損なうことがないよう、取り扱う情報や業務の特性等に応じて適切に選定するもの」とされており、また、当該「委託先とする民間事業者」は、統計法第三十九条の規定において、同法第二条第十一項に規定する調査票情報等の適正な管理のために統計法施行規則(平成二十年総務省令第百四十五号)第四十一条第六項に規定する必要な措置を講じなければならないとされており、これらの規定に基づき、各府省において適切に対応していることから、国が実施する統計調査に関する事務の一部を受託する民間事業者について、お尋ねの「より厳格な資格要件」を課すことは、考えていない。

回答(質問3 の3及び4について)

 御指摘の「過去に問題を起こした事業者」及び「再発防止策」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「総務省における物品等の契約に係る指名停止等措置要領」(平成十七年三月三十日付け総務省大臣官房会計課長決定)等の各府省において定める規程に基づき、各府省が当該各規程中の「契約違反」の要件に該当する事業者に対しては指名停止の措置を講じるなど、適切に対処しているところであり、ガイドラインにおいてお尋ねの「違約金の設定や業務停止措置の基準を明確化する」等の措置を行うことは考えていない。

回答(質問3 の5について)

 国の実施する統計調査に関する事務の一部の委託については、特定非営利活動法人及び一般社団法人が特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二十八条の二及び一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第百二十八条の規定に基づく公告を行っていないことをもって、当該法人が当該委託に係る一般競争入札に参加することを排除する定めはない。

質問4

民間に調査を委託する際の透明性確保について

1 政府が民間に委託する統計調査の信頼性を確保するために、出典・調査手法・調査主体を公的な場で明示するルールを設ける考えはあるか。政府の見解を示されたい。

2 政府が委託調査を採用する際、そのデータの信頼性を国民に説明するための透明性確保策を示されたい。

回答(質問4 について)

 お尋ねの「出典・調査手法・調査主体を公的な場で明示するルール」及び「データの信頼性を国民に説明するための透明性確保策」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「PDCAサイクルによる公的統計の品質確保・向上のためのガイドライン」(令和二年七月三十日統計行政推進会議申合せ)において「調査の実施状況や集計結果等」の「点検・評価」を行うに当たっての「観点」として、「品質の表示」などが定められており、その中で、「調査の対象」、「抽出方法」、「民間事業者を経由する場合」の「仕様書、入札状況及び契約事項の概要」を含む「調査の方法」等が掲げられているところであり、これを踏まえ、各府省において適切に対応していることから、新たに定めを設けることは考えていない。