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中国の半導体研究機関とわが国研究機関との提携に関する質問主意書
経過状況:答弁受理
兵器や軍事転用可能な技術が、いわゆる懸念国やテロリストに渡るのを防ぐため、わが国を含む各国で「国際輸出管理レジーム」を作り、連携を強めており、そのため、日本の国際的な技術優位性を確保するためにも先端技術、軍民両用技術、機微技術の漏洩や窃取を防ぐ対策が急務である。中でも先端半導体は、極超音速ミサイルや人工知能対応兵器の開発に使われるなど軍事利用を最も警戒すべき電子部品であると考える。
そのため政府は、わが国由来の先端半導体関連技術が懸念国に軍事転用させないよう、二〇二四年七月、半導体製造装置(二十三品目)のうち一部装置の規制閾値等の見直しを行った。周辺技術に関しても、輸出に当たって国に許可を要する「輸出管理」の対象に加えていく方針とされる。併せて、懸念国からの留学生による先端半導体をはじめとする軍民両用技術の移転も防止していくとしている。
ところが、文部科学省が公表した「海外の大学との大学間交流協定(令和四年度実績)」によると、東北大学と名古屋工業大学が、中国科学院半導体研究所と提携している。同研究所は、半導体超格子微細構造国家重点実験室、集成光電子学国家重点連合実験室、表面物理国家重点実験室、国家光電子技術センター、光電子デバイス国家光学研究センター、光電子材料・デバイス重点実験室、半導体材料科学重点実験室、半導体照明研究開発センターなどの研究施設を備えた国家機関である。このうち前三者は中国政府が特に力を入れる「国家重点実験室」に位置付けられている。
二〇二三年九月、文部科学省は、大学の研究力を高めるために予算化した十兆円規模の大学ファンドにおいて、初の支援対象候補に東北大学を選んだ。同大学は、中国科学院半導体研究所との間で、学術交流協定書を結んでいる。同大学には、国際集積エレクトロニクス研究開発センター、マイクロシステム融合研究開発センター、マテリアル・イノベーション・センターなどの施設がある。同大学の深見俊輔教授らは、「STT−MRAM素子の極限微細化技術」で、「半導体・オブ・ザ・イヤー二〇二四」半導体デバイス部門で優秀賞を受賞するなど最先端の研究を行っている。
また、名古屋工業大学は、中国科学院半導体研究所との間で、学術交流協定を結び、教職員交流、共同研究、資料交換などを行っている。同大学は、シリコンカーバイドパワー半導体の高性能化につながる技術、材料の研究開発に強く、高機能の窒化物半導体パワーデバイスの研究開発も行ってきた。いずれの半導体も軍民両用技術である。
これら日本の大学と中国科学院半導体研究所との提携により、わが国の先端半導体関連技術が中国に移転され軍事転用されるリスクが高まる事態は看過できないと考える。
そこで、以下質問する。
質問1
政府は、中国科学院半導体研究所から東北大学および名古屋工業大学に、近年、何名の研究者、留学生が派遣されたか把握しているか。
回答(質問1 について)
お尋ねの「近年」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、「何名の研究者」が派遣されたかについては、政府として把握していない。また、文部科学省が平成三十年度から令和四年度までの各年度において実施した「大学における教育内容等の改革状況調査」によると、当該各年度において、「中国科学院半導体研究所」から東北大学又は名古屋工業大学に留学生は派遣されていないと承知している。
質問2
政府は、東北大学から中国科学院半導体研究所に開示ないし共有された研究内容を把握しているか。
回答(質問2 及び質問3 について)
大学における教育研究活動の実施については、各大学の自主的・自律的な判断に委ねられるべきものであるため、東北大学及び名古屋工業大学からお尋ねの「中国科学院半導体研究所」に「開示ないし共有された研究内容」については、政府として把握していない。
質問3
政府は、名古屋工業大学から中国科学院半導体研究所へ開示ないし共有された研究内容について把握しているか。
回答(質問2 及び質問3 について)
大学における教育研究活動の実施については、各大学の自主的・自律的な判断に委ねられるべきものであるため、東北大学及び名古屋工業大学からお尋ねの「中国科学院半導体研究所」に「開示ないし共有された研究内容」については、政府として把握していない。
質問4
わが国の大学が、中国科学院半導体研究所に対し、米国商務省のエンティティリスト(貿易制限リスト)で規制されたテクノロジーの移転を行うと、米国にとって抜け穴を提供する行為とみなされ、米国による制裁の対象となりかねないと考える。政府は、その旨を各大学に周知し、指導、監督を行うべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
回答(質問4 について)
お尋ねについては、他国の制度に関するものであり、御指摘の「わが国の大学が・・・米国による制裁の対象となりかねない」との評価を前提として、政府としての見解をお示しすることは困難であるが、いずれにせよ、政府としては、我が国の大学や研究機関(以下「大学等」という。)に対し、経済産業省作成の「安全保障貿易に係る機微技術管理ガイダンス(大学・研究機関用)」を周知する等のための文書を発出し、当該ガイダンスに沿って、外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号)の遵守及び安全保障に関連する機微技術の管理に関する具体的な手続を定めるよう指導するとともに、当該技術の管理に関する説明会を開催する等して、大学等において輸出管理を適切に執行されるよう施策を講じてきたところである。