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日本のコンテンツがディープフェイク技術によって悪用されている問題に関する質問主意書
経過状況:答弁受理
日本のアニメ、マンガ、ゲーム、映画などのコンテンツ産業は、国内外で広く支持され、政府も「クールジャパン戦略」のもとでこれらの分野を日本の基幹産業の一つとして育成・推進している。しかし、近年の人工知能(AI)技術の発展により、いわゆるディープフェイク技術を用いたコンテンツの改変・偽造が急増し、日本のコンテンツが不正利用される事例が多発している。
特に、アニメ・マンガ・ゲームのキャラクターや映像が無断で加工され、虚偽のコンテンツが制作されることで、クリエイターや権利者の意図とは無関係に不適切な形で利用されるケースが見受けられる。実際に、人気アニメのキャラクターの顔を用いた偽の広告が出回ったり、ゲームのキャラクターが成人向けコンテンツに改変されたりする事例が発生している。また、架空の映画ポスターを作成し、あたかも公式作品のように見せかけて偽の配信サービスで使用されるケースも確認されている。これらの事例が増加することで、ブランド価値の毀損や消費者の混乱を招くおそれがあると考える。
また、海賊版対策と同様、ディープフェイク技術の悪用を放置することは、日本のコンテンツ産業の国際競争力を低下させる要因となる可能性があると考える。政府が進める「クールジャパン戦略」の根幹を揺るがす問題であるにもかかわらず、現在の日本の法制度ではディープフェイク技術による不正改変を直接規制する法律が存在せず、現行の著作権法や不正競争防止法では対応が困難なケースがある。
特に、EUや米国などでは、AI技術を悪用した偽コンテンツの流通を防ぐための法整備が進められており、日本においても国際的なルール形成に積極的に関与する必要があると考える。
さらに、ディープフェイク技術を用いたコンテンツが、いわゆる認知戦の手段として利用される可能性についても深刻に考慮する必要がある。特定のキャラクターや作品を使って、政治的・社会的なプロパガンダを拡散したり、歴史や文化を歪曲する目的で偽情報を流布する手法が、既に海外では確認されている。日本のコンテンツがこのような形で悪用されるリスクに対し、政府がどのような対応をとるかが問われると考える。
このような状況を踏まえ、政府に対し以下の事項について質問する。
質問1
現行法において、ディープフェイク技術を用いたアニメ・マンガ・ゲーム・映画等のコンテンツの不正改変および拡散を直接的に禁止する規定が存在しないと考えるが、その認識で相違ないか。
回答(質問1 及び質問2 について)
お尋ねの「ディープフェイク技術を用いたアニメ・マンガ・ゲーム・映画等のコンテンツの不正改変および拡散を直接的に禁止する規定」、「ディープフェイク技術を用いたコンテンツの不正改変」及び「著作権法や不正競争防止法では十分に規制できない」の具体的に意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難であるが、いずれにせよ、御指摘の「AI技術」を用いたアニメ、漫画、ゲーム、映画などの利用については、事案に応じ、関係法令による規制の対象となり得る。
質問2
ディープフェイク技術を用いたコンテンツの不正改変が、現行の著作権法や不正競争防止法では十分に規制できないケースがあると考えるが、その認識で相違ないか。
回答(質問1 及び質問2 について)
お尋ねの「ディープフェイク技術を用いたアニメ・マンガ・ゲーム・映画等のコンテンツの不正改変および拡散を直接的に禁止する規定」、「ディープフェイク技術を用いたコンテンツの不正改変」及び「著作権法や不正競争防止法では十分に規制できない」の具体的に意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難であるが、いずれにせよ、御指摘の「AI技術」を用いたアニメ、漫画、ゲーム、映画などの利用については、事案に応じ、関係法令による規制の対象となり得る。
質問3
海外では、ディープフェイク技術を用いた偽造コンテンツの規制が進められている。日本においても同様の立法措置を講じる必要があると考えるが、政府の見解を問う。
回答(質問3 について)
お尋ねの「ディープフェイク技術を用いた偽造コンテンツの規制」の具体的に意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難であるが、いずれにせよ、御指摘の「AI技術」の利用拡大に伴うリスクに対する立法措置については、政府として、「中間とりまとめ」(令和七年二月四日AI戦略会議・AI制度研究会作成)において示されたとおり、「法令とガイドライン等のソフトローを適切に組み合わせ、基本的には、事業者の自主性を尊重し、法令による規制は事業者の自主的な努力による対応が期待できないものに限定して対応していくべき」と考えている。
質問4
ディープフェイク技術を悪用したコンテンツの流通を防ぐため、インターネットプラットフォームやSNS事業者に対し、削除対応を義務付ける法整備が現行法では十分に整備されていないと考えるが、政府の見解を問う。
回答(質問4 について)
お尋ねの「ディープフェイク技術を悪用したコンテンツ」の具体的に意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難であるが、いずれにせよ、大規模なSNS等を提供する事業者(以下単に「事業者」という。)に対し、特定電気通信(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律(令和六年法律第二十五号)による改正後の特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(平成十三年法律第百三十七号。以下「情報流通プラットフォーム対処法」という。)第二条第一号に規定する特定電気通信をいう。以下同じ。)による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者から、侵害情報送信防止措置(同条第八号に規定する侵害情報送信防止措置をいう。以下同じ。)を講ずるよう事業者に申出があったときは、情報流通プラットフォーム対処法により、当該侵害情報送信防止措置を講じたか否かの結果を一定の期間内に申出者に通知すること等が義務付けられ、事業者がこれに違反していると認められるときは、総務大臣による勧告及び命令の対象となる。
質問5
ディープフェイク技術を悪用したコンテンツが、日本のクリエイターや企業のブランド価値を毀損し、創作活動の継続に悪影響を及ぼす可能性がある。現行の法制度ではこうした被害を十分に救済する仕組みが存在しないと考える。政府は、?クリエイターが自身の作品やキャラクターが不正利用された際に迅速に対応できる相談窓口の設置、?ディープフェイクによる経済的損失の補償策、?海外市場におけるブランド保護の強化など、ディープフェイク技術による被害に対する包括的な支援策を講じる必要があると認識しているか。
回答(質問5 について)
御指摘の「ディープフェイク技術を悪用したコンテンツ」及びお尋ねの「ディープフェイク技術による被害」の具体的に意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難であるが、いずれにせよ、知的財産の保護に関する施策としては、我が国の知的財産の権利者等から模倣品・海賊版に関する相談を受け付ける相談窓口を特許庁及び文化庁に設置し、相談対応等の取組を進めているところである。模倣品・海賊版による経済的な損失については、損害賠償請求等によって当事者間で解決されるべき事柄であると考える。
質問6
現行の名誉毀損罪および侮辱罪の適用範囲において、ディープフェイク技術を悪用したコンテンツ改変に対する明示的な規定が存在しないため、これらの刑罰を適用することができないと考えるが、その認識で相違ないか。
回答(質問6 について)
御指摘の「ディープフェイク技術を悪用したコンテンツ改変」の具体的に意味するところが明らかではなく、また、犯罪の成否は、捜査機関により収集された証拠に基づき個々に判断されるべき事柄であることから、お答えすることは困難である。
質問7
日本のコンテンツが著作権者の許諾なく海外で無断翻訳・改変される事例が増えているが、これにより著作権者の権利侵害のみならず、作品の意図が歪曲されるリスクも指摘されている。
1 このような被害が発生した場合、日本政府は、?著作権者が迅速に対応できる相談窓口の設置、?海外プラットフォームとの協力による削除手続の簡素化、?国際的な著作権保護のための外交的措置などを検討する必要があると考えるが、政府の見解を問う。
2 既存の法制度の枠内で対応可能な具体的な手続があれば明示されたい。
回答(質問7 について)
御指摘の「作品の意図が歪曲されるリスク」並びにお尋ねの「このような被害が発生した場合」、「著作権者が迅速に対応できる相談窓口」、「海外プラットフォームとの協力による削除手続の簡素化」及び「国際的な著作権保護のための外交的措置」の意味するところが必ずしも明らかではないが、著作権を含む知的財産の保護に関する施策としては、例えば、インターネットにおける海賊版による著作権侵害の対策に関する相談窓口を文化庁に設けているところであり、また、四についてで述べたとおり、事業者に対し、特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者から、侵害情報送信防止措置を講ずるよう事業者に申出があったときは、情報流通プラットフォーム対処法により、当該侵害情報送信防止措置を講じたか否かの結果を一定の期間内に申出者に通知すること等が義務付けられ、事業者がこれに違反していると認められるときは、総務大臣による勧告及び命令の対象となる。さらに、ほぼ全ての在外公館において知的財産担当官を任命し、海外における日本企業等からの相談に応じ、相手国政府への働きかけを始めとする支援を行っているところである。
質問8
ディープフェイク技術を用いたコンテンツが、政治的プロパガンダや社会分断を目的とした認知戦に利用されるリスクが指摘されていることについて
1 日本のアニメ・マンガ・ゲームのキャラクターを使用し、外国勢力が特定の政治的メッセージを拡散する可能性について、政府の見解を問う。
2 現在の国内法において、?意図的な偽情報の拡散に対する規制、?国家安全保障上の脅威としての対応策、?SNS・プラットフォーム事業者との連携による監視体制の整備といった措置が可能か否か、具体的な見解を問う。
回答(質問8 について)
御指摘の「ディープフェイク技術を用いたコンテンツ」及び「政治的プロパガンダや社会分断を目的とした認知戦」の具体的に意味するところが明らかではないため、これを前提としたお尋ねについてお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、政府としては、我が国に対する信頼を損なうような行為への対応の重要性が高まっていると認識しており、「国家安全保障戦略」(令和四年十二月十六日閣議決定)を踏まえ、関係省庁が連携し、情報の収集及び分析並びに対外発信に係る能力の強化等に取り組んでいる。
質問9
ディープフェイク技術を利用し、日本の歴史や文化を歪曲するコンテンツが作成・拡散されるリスクについて
1 日本政府はどのように認識しているか。
2 日本の戦争史や国際関係に関する偽造コンテンツが、SNSや動画配信プラットフォームで流通することで、日本の国際的評価に影響を与える可能性について、政府の見解を問う。
3 前記1および2に対し、?外交的な抗議・訂正要請の手続、?国内外のプラットフォームに対する削除依頼の制度、?国際機関と協力した偽情報対策の枠組みの強化など、具体的な対応策を検討する必要があると考えるが、政府の見解を問う。
回答(質問9 について)
御指摘の「ディープフェイク技術を利用し、日本の歴史や文化を歪曲するコンテンツ」及び「日本の戦争史や国際関係に関する偽造コンテンツ」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、いずれにせよ、政府としては、国際社会において、日本の歴史や文化に関する我が国の立場及び考え方についての正確な理解の浸透に資する取組を進めてきたところであり、引き続き、御指摘の「抗議・訂正要請」、「削除依頼」及び「偽情報対策の枠組みの強化」を含む対応を必要に応じて検討しつつ、このような取組を積極的かつ戦略的に推進していく考えである。