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畜産動物のアニマルウェルフェアに関する質問主意書
経過状況:答弁受理
人間以外の動物にも意識や感覚が存在し、その生態や欲求を可能な限り妨げないという、いわゆる「アニマルウェルフェア」の考え方が世界の国々に広まっている。我が国においても、アニマルウェルフェアを理解し、政府や民間団体による運動や取組が行われてきた。
一方で、動物保護に関する国際団体である世界動物保護協会(WAP)が二〇二〇年に発表した「動物保護指数」において、日本は総合「E」評価、特に畜産動物(産業動物)における評価では、飼養管理に関する法規制の弱さを指摘され、最低ランクの「G」と格付けされている。同指数が絶対的な指標として公認されるかは議論の余地もあるが、一定の基準で調査が行われたことを鑑みれば、その評価を謙虚に受け止め、具体的な指摘を現状改善の一助とすることは有意義と考える。
アニマルウェルフェアの五つの自由「飢え・渇きからの自由」「不快からの自由」「痛み・負傷・病気からの自由」「恐怖や抑圧からの自由」「本来の行動がとれる自由」を念頭に、以下質問する。
質問1
二〇二〇年にWAPにより発表された「動物保護指数」について政府の認識如何。
回答(質問1 について)
お尋ねの「動物保護指数」については、その詳細を把握していないため、お尋ねの「認識」について一概にお答えすることは困難であるが、動物福祉に関する国際的な民間団体である「世界動物保護協会(WAP)」が各国の動物福祉に係る法律等を評価したものであり、我が国については、産業動物の動物福祉に関して低い評価がなされたものと承知している。
質問2
動物の愛護及び管理に関する法律(昭和四十八年法律第百五号)について、政府で「畜産動物」若しくは「産業動物」又はそれに類する条項の新設を検討したことはあるか。また、今後検討する予定があるか。
回答(質問2 について)
御指摘の「動物の愛護及び管理に関する法律(昭和四十八年法律第百五号)について、政府で「畜産動物」若しくは「産業動物」又はそれに類する条項の新設を検討したこと」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、仮に動物の愛護及び管理に関する法律(昭和四十八年法律第百五号)における「畜産動物」や「産業動物」に係る規定の新設についてのお尋ねであれば、政府としてはその新設を検討したことはなく、また、現時点において検討する予定もない。
質問3
畜産動物(産業動物)の屠畜や殺処分に際して、事前に意識喪失させることで動物の苦痛を緩和することができると考える。事前の意識喪失による動物の苦痛を緩和することの義務化を徹底することに関して政府の見解如何。
回答(質問3 について)
動物の愛護及び管理に関する法律第四十条第一項において、「動物を殺さなければならない場合には、できる限りその動物に苦痛を与えない方法によつてしなければならない」こととされているとともに、同条第二項において、「環境大臣は、関係行政機関の長と協議して、前項の方法に関し必要な事項を定めることができる」こととされている。この「方法」として、動物の殺処分方法に関する指針(平成七年総理府告示第四十号)において、「殺処分動物の殺処分方法は、化学的又は物理的方法により、できる限り殺処分動物に苦痛を与えない方法を用いて当該動物を意識の喪失状態にし、心機能又は肺機能を非可逆的に停止させる方法によるほか、社会的に容認されている通常の方法によること」と規定している。政府としては、この規定に従った対応がとられるよう、各都道府県等に対して通知を発出するなどしてきているところであり、引き続き、必要な取組を行ってまいりたい。
質問4
肉養鶏、採卵鶏の飼育について、過密な飼育密度でのケージ飼育の問題が指摘されている。飼育密度の緩和及び平飼いや放牧への転換を促進するための政府の取組の現状又は検討状況を明らかにされたい。
回答(質問4 から質問6 までについて)
国際獣疫事務局の「陸生動物衛生規約」における動物福祉に関する勧告等の国内外の情勢を踏まえて令和五年七月二十六日に農林水産省が発出した「国際獣疫事務局の陸生動物衛生規約におけるアニマルウェルフェアの国際基準を踏まえた家畜の飼養管理の推進について」(令和五年七月二十六日付け五畜産第千六十二号農林水産省畜産局長通知。以下「局長通知」という。)において、御指摘の「ケージ飼育」、「平飼い」、「放牧」、「ストール飼育」及び「繋ぎ飼い」といった個々の飼養管理の実態に応じて、「家畜の飼養者がアニマルウェルフェアの原則である「五つの自由」を理解」し行う家畜の「日々の観察や記録、丁寧な取扱い、良質な飼料や水の給与等の適正な飼養管理」を図ることとしており、具体的には、これに必要な環境の整備については、「家畜が快適に休息することができ、姿勢を正常に調整することができるなど、快適で安全なものとし、家畜本来の生態や習性に従った自然な行動がとれる機会を設けるようにすること」、「高い密度で飼養することは、損傷の発生を増やし、摂食、飲水、運動、休息等の行動に悪影響を与える可能性があることに留意する」こと、「畜舎」については、「家畜が休息するための十分なスペースが確保され、立ち上がる等の正常な行動をとれる構造であること」等と示しているところ、農林水産省としては、このような局長通知の内容について必要な周知を図っているところである。
質問5
豚に関して、EUでは二〇一三年よりいわゆる拘束飼育(ストール飼育)を禁止しているが、我が国では現在も「妊娠ストール」「分娩ストール」を利用した飼育が行われている。拘束飼育について、政府の取組の現状又は検討状況を明らかにされたい。
回答(質問4 から質問6 までについて)
国際獣疫事務局の「陸生動物衛生規約」における動物福祉に関する勧告等の国内外の情勢を踏まえて令和五年七月二十六日に農林水産省が発出した「国際獣疫事務局の陸生動物衛生規約におけるアニマルウェルフェアの国際基準を踏まえた家畜の飼養管理の推進について」(令和五年七月二十六日付け五畜産第千六十二号農林水産省畜産局長通知。以下「局長通知」という。)において、御指摘の「ケージ飼育」、「平飼い」、「放牧」、「ストール飼育」及び「繋ぎ飼い」といった個々の飼養管理の実態に応じて、「家畜の飼養者がアニマルウェルフェアの原則である「五つの自由」を理解」し行う家畜の「日々の観察や記録、丁寧な取扱い、良質な飼料や水の給与等の適正な飼養管理」を図ることとしており、具体的には、これに必要な環境の整備については、「家畜が快適に休息することができ、姿勢を正常に調整することができるなど、快適で安全なものとし、家畜本来の生態や習性に従った自然な行動がとれる機会を設けるようにすること」、「高い密度で飼養することは、損傷の発生を増やし、摂食、飲水、運動、休息等の行動に悪影響を与える可能性があることに留意する」こと、「畜舎」については、「家畜が休息するための十分なスペースが確保され、立ち上がる等の正常な行動をとれる構造であること」等と示しているところ、農林水産省としては、このような局長通知の内容について必要な周知を図っているところである。
質問6
牛に関して、いわゆる「繋ぎ飼い」は衛生面や運動の不自由により健康への悪影響が指摘されている。改善に向けた政府の取組の現状又は検討状況を明らかにされたい。
回答(質問4 から質問6 までについて)
国際獣疫事務局の「陸生動物衛生規約」における動物福祉に関する勧告等の国内外の情勢を踏まえて令和五年七月二十六日に農林水産省が発出した「国際獣疫事務局の陸生動物衛生規約におけるアニマルウェルフェアの国際基準を踏まえた家畜の飼養管理の推進について」(令和五年七月二十六日付け五畜産第千六十二号農林水産省畜産局長通知。以下「局長通知」という。)において、御指摘の「ケージ飼育」、「平飼い」、「放牧」、「ストール飼育」及び「繋ぎ飼い」といった個々の飼養管理の実態に応じて、「家畜の飼養者がアニマルウェルフェアの原則である「五つの自由」を理解」し行う家畜の「日々の観察や記録、丁寧な取扱い、良質な飼料や水の給与等の適正な飼養管理」を図ることとしており、具体的には、これに必要な環境の整備については、「家畜が快適に休息することができ、姿勢を正常に調整することができるなど、快適で安全なものとし、家畜本来の生態や習性に従った自然な行動がとれる機会を設けるようにすること」、「高い密度で飼養することは、損傷の発生を増やし、摂食、飲水、運動、休息等の行動に悪影響を与える可能性があることに留意する」こと、「畜舎」については、「家畜が休息するための十分なスペースが確保され、立ち上がる等の正常な行動をとれる構造であること」等と示しているところ、農林水産省としては、このような局長通知の内容について必要な周知を図っているところである。
質問7
畜産動物(産業動物)に関するアニマルウェルフェアの向上には、畜産農家や流通業者の理解及び認識の向上は不可欠である一方、設備投資や飼育方法の抜本的な変更を伴うため、畜産農家の自発性に任せていてはコスト面でのハードルの高さから対応が進められない現実もあると考える。日本での取組が遅れているとの指摘に関して政府の見解如何。
回答(質問7 について)
御指摘の「畜産動物(産業動物)に関するアニマルウェルフェアの向上」に向けて、政府としては、国内外の情勢を踏まえて令和五年に局長通知を発出し、「アニマルウェルフェアの定義と五つの自由」、「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理における一般原則」等についての周知を図るとともに、これに必要となる施設の整備に取り組む農家に対する支援を行っており、引き続き、これらの取組を行ってまいりたい。