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インターネット上の不適切な広告に関する質問主意書
経過状況:答弁受理
インターネット広告は、デジタル経済の発展において極めて重要な役割を果たし、多くの企業や個人がその恩恵を受けている。一方で、その急速な拡大により、不適切な広告が配信される事例も増加していると考える。
未成年者が利用するサイトや一般の生活情報サイトにおいて、アダルト広告や、虚偽の健康食品の広告など詐欺的な広告が意図せず表示されるケースが多発し、社会的な懸念が増していると考える。
また、近年では、広告の配信主体が不明確なケースも増えており、責任の所在が曖昧なまま、不適切な広告が拡散される事例も見受けられる。こうした状況を放置すれば、日本のインターネット広告市場の信頼性が損なわれるだけでなく、経済的・社会的リスクの増大につながる可能性があると考える。
一方で、EUでは「デジタルサービス法(DSA)」に基づき、未成年者向けサイトでのターゲティング広告を禁止し、広告の透明性を確保する義務をプラットフォーム事業者に課している。また、韓国では、広告の透明性向上のため、広告主と配信事業者の情報開示を義務付けている。
しかし、日本においては、未成年者保護を目的とした明確な法規制は存在せず、広告業界の自主規制に依存しているのが現状である。また、未成年者に限らず、一般の生活情報サイトにおける混乱にも一定の歯止めが必要であると考える。
こうした状況を踏まえ、政府の認識と今後の対応について、以下の事項について質問する。
質問1
政府の現状認識と不適切な広告の相談実態について
1 政府は、インターネット広告における不適切な広告の現状をどのように認識しているか。
2 過去五年間において、独立行政法人国民生活センターへ、どの程度の苦情が寄せられているか。苦情の件数、内容に関し、政府の把握するところについて、それぞれ可能な限り明らかにした上で、政府の対応状況を示されたい。
3 過去五年間において、政府が不適切な広告に対して行った行政指導の件数、業者名、および具体的な指導内容をそれぞれ可能な限り示されたい。
4 3に関し、行政指導を受けた業者の再違反率はどの程度か示されたい。
回答(質問1 の1について)
お尋ねの「不適切な広告」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、インターネット上に、例えば、御指摘の「アダルト広告や、虚偽の健康食品の広告など詐欺的な広告」が流通していることは認識している。
回答(質問1 の2について)
お尋ねの「苦情」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、独立行政法人国民生活センターが運営する全国消費生活情報ネットワーク・システムに各地の消費生活センターから令和七年三月十六日までに「表示・広告」として登録された相談件数は、インターネット広告に関するものも含め、令和元年度が六万五千五百九件、令和二年度が七万七千八百九十件、令和三年度が七万百六十二件、令和四年度が八万千六百四十一件及び令和五年度が七万八千四百九十一件であり、例えば、化粧品、健康食品等のインターネット広告に関する相談があるものと承知している。登録された相談に関し、関係法令に違反する疑いがある場合には、関係省庁において適切に対応している。
回答(質問1 の3並びに質問2 の1及び2について)
お尋ねの「不適切な広告」及び「不適切な配信」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号。以下「景品表示法」という。)においては、インターネット広告に関する事案も含め、景品表示法第五条の規定に違反した事業者に対し、令和元年度に四十件、令和二年度に三十三件、令和三年度に四十一件、令和四年度に四十一件及び令和五年度に四十四件の景品表示法第七条第一項の規定に基づく行政処分を行うとともに、景品表示法第五条の規定に違反するおそれがある事業者に対し、令和元年度に百八十八件、令和二年度に百六十六件、令和三年度に百五十八件、令和四年度に百三件及び令和五年度に八十二件の行政指導を行った。
また、特定商取引に関する法律(昭和五十一年法律第五十七号。以下「特定商取引法」という。)においては、インターネット広告に関する事案も含め、特定商取引法第十四条第一項若しくは第二項、第十五条第一項、第二項若しくは第三項又は第十五条の二第一項若しくは第二項の規定に基づき、特定商取引法第二条第二項に規定する通信販売に係る販売業者又は役務提供事業者(以下「販売業者等」という。)に対し、令和元年度に五件、令和二年度に三十四件、令和三年度に六件、令和四年度に零件及び令和五年度に七件の行政処分を行うとともに、特定商取引法第十一条、第十二条又は第十二の六第一項若しくは第二項の規定に違反するおそれがある販売業者等に対し、令和元年度に一件、令和二年度から令和四年度までにそれぞれ零件及び令和五年度に六件の行政指導を行った。
電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)及び児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成十一年法律第五十二号)においては、インターネット広告に関して、その内容に照らして差止めを命ずる等の旨の規定はない。
先に述べた景品表示法又は特定商取引法に基づく行政処分については、当該行政処分を行った省庁のウェブサイトでその内容を公表しており、また、先に述べた景品表示法又は特定商取引法に係る行政指導については、お尋ねの「業者名」及び「具体的な指導内容」を明らかにすることは、事業者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると考えており、お答えすることは差し控えたい。お尋ねの「効果」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、当該行政処分又は行政指導後の状況については、法違反が是正される等、一般的には、当該事業者において一定の対応が行われているものと認識している。
回答(質問1 の4について)
お尋ねの「再違反率」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、一の3並びに二の1及び2についてで述べた行政指導については、同一事業者が同一内容の行政指導を再度受けた件数やその件数全体に占める割合を集計していないことから、お尋ねについてお答えすることは困難である。
質問2
現行の法規制の適用状況とその実効性について
1 政府は、インターネット広告の不適切な配信を規制するために、以下の法律をどのように運用しているか。それぞれの適用事例を可能な限り示されたい。
ア いわゆる景品表示法
イ いわゆる特定商取引法
ウ いわゆる電気通信事業法
エ いわゆる児童ポルノ禁止法
2 前記の法律に基づき、過去五年間において、政府が不適切な広告に対して行った具体的な指導・処分の件数、内容、および効果についてそれぞれ可能な限り説明されたい。
3 政府は不適切な広告に関する通報窓口を設置しているか。設置している場合、その窓口の名称、および対応件数をそれぞれ可能な限り示した上で、消費者が通報した後、広告が削除されるまでの平均日数を示されたい。
4 国民が不適切な広告を迅速に報告し、対応を求める「広告一一〇番」制度を新たに設置する考えはあるか。あるのであれば、対応を迅速化するためにどのような体制を整備するのか。
回答(質問1 の3並びに質問2 の1及び2について)
お尋ねの「不適切な広告」及び「不適切な配信」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号。以下「景品表示法」という。)においては、インターネット広告に関する事案も含め、景品表示法第五条の規定に違反した事業者に対し、令和元年度に四十件、令和二年度に三十三件、令和三年度に四十一件、令和四年度に四十一件及び令和五年度に四十四件の景品表示法第七条第一項の規定に基づく行政処分を行うとともに、景品表示法第五条の規定に違反するおそれがある事業者に対し、令和元年度に百八十八件、令和二年度に百六十六件、令和三年度に百五十八件、令和四年度に百三件及び令和五年度に八十二件の行政指導を行った。
また、特定商取引に関する法律(昭和五十一年法律第五十七号。以下「特定商取引法」という。)においては、インターネット広告に関する事案も含め、特定商取引法第十四条第一項若しくは第二項、第十五条第一項、第二項若しくは第三項又は第十五条の二第一項若しくは第二項の規定に基づき、特定商取引法第二条第二項に規定する通信販売に係る販売業者又は役務提供事業者(以下「販売業者等」という。)に対し、令和元年度に五件、令和二年度に三十四件、令和三年度に六件、令和四年度に零件及び令和五年度に七件の行政処分を行うとともに、特定商取引法第十一条、第十二条又は第十二の六第一項若しくは第二項の規定に違反するおそれがある販売業者等に対し、令和元年度に一件、令和二年度から令和四年度までにそれぞれ零件及び令和五年度に六件の行政指導を行った。
電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)及び児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成十一年法律第五十二号)においては、インターネット広告に関して、その内容に照らして差止めを命ずる等の旨の規定はない。
先に述べた景品表示法又は特定商取引法に基づく行政処分については、当該行政処分を行った省庁のウェブサイトでその内容を公表しており、また、先に述べた景品表示法又は特定商取引法に係る行政指導については、お尋ねの「業者名」及び「具体的な指導内容」を明らかにすることは、事業者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると考えており、お答えすることは差し控えたい。お尋ねの「効果」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、当該行政処分又は行政指導後の状況については、法違反が是正される等、一般的には、当該事業者において一定の対応が行われているものと認識している。
回答(質問2 の3について)
お尋ねの「不適切な広告」及び「通報窓口」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、景品表示法第五条の不当な表示に該当するおそれがある表示に係る情報については、消費者庁等が運営する「景品表示法に関する情報提供・相談の受付窓口」で受け付けている。お尋ねの「対応件数」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、景品表示法第五条の不当な表示に該当するおそれがある表示に係る情報も含め、当該窓口に寄せられた情報提供の件数は、令和五年度で一万八千百十四件である。また、当該窓口について、お尋ねの「広告が削除されるまでの平均日数」については、「広告が削除される」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、景品表示法は、一の3並びに二の1及び2についてで述べたとおり、違反行為の差止めを命ずるものであり、必ずしも広告そのものの削除を命ずるものではないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。
回答(質問2 の4について)
お尋ねの「不適切な広告」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではなく、また、「「広告一一〇番」制度」の意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。なお、二の3についてで述べたとおり、景品表示法においては、消費者庁等が運営する「景品表示法に関する情報提供・相談の受付窓口」で景品表示法第五条の不当な表示に該当するおそれがある表示に係る情報を受け付けているなど、現行の関係法令の下で当該関係法令に違反する広告について適切に対応している。
質問3
民間の自主規制の実効性について
1 一般社団法人日本インタラクティブ広告協会(JIAA)などの業界団体が策定した自主規制のガイドラインは、政府の監督下にあるか。あるのであれば、その実効性を政府はどのように評価しているか。
2 自主規制の実効性を検証するため、政府が業界団体と連携して実態調査を行う考えはあるか。
回答(質問3 について)
お尋ねの「監督」、「実効性」及び「実態調査」の意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねの「自主規制のガイドライン」について、政府として許認可等を行っていない。また、御指摘の「業界団体」の下での取組については、その自主性を尊重する観点から、現時点において、調査を行うことは考えていない。
質問4
今後の規制強化と対策について
1 EUでは未成年者向けサイトにおけるアダルト広告表示を法律で禁止している。日本においても、同様の規制を導入する考えはあるか。
2 繰り返し違反を行う広告業者に対する罰金制度の導入や、一定回数以上の違反を行った業者に対し、営業停止命令を出す制度を導入する考えはあるか、政府の見解を示されたい。
3 プラットフォーム事業者に対し、不適切な広告の削除等を義務付ける法制度を導入する考えはあるか。
4 EUでは、ターゲティング広告のいわゆるアルゴリズムの透明性を確保するため、広告配信ロジックの公開を義務化している。日本においても、同様の規制を導入する考えはあるか。
回答(質問4 の1について)
御指摘のように「EUでは未成年者向けサイトにおけるアダルト広告表示を法律で禁止している」とは認識していないため、それを前提としたお尋ねにお答えすることは困難である。
回答(質問4 の2について)
お尋ねの「繰り返し違反を行う広告業者に対する罰金制度」及び「一定回数以上の違反を行った業者に対し、営業停止命令を出す制度」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、広告に関係する法令の違反者に対する措置については、例えば、景品表示法においては、景品表示法第四十八条各号に該当する場合には、百万円以下の罰金に処することとされている。また、特定商取引法においては、特定商取引法第十五条第一項の規定により、販売業者等が特定商取引法第十一条等の規定に違反等をした場合において、通信販売に係る取引の公正及び購入者若しくは役務の提供を受ける者の利益が著しく害されるおそれがあると認められた際等に、業務停止命令を行うことができる旨規定されているなど、各法令において、当該法令に違反した場合に必要な対応を行うことができるよう規定が整備されていると考えている。
回答(質問4 の3及び4について)
お尋ねの「不適切な広告」及び「広告配信ロジックの公開」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、インターネット広告については、現行の関係法令の下で、各省庁において必要に応じ行政処分等の対応をしていると考えていることから、現時点において、新たな規制を設けることは考えていない。