TOP > 質問主意書・答弁書 > 原口一博:スパイクタンパク質の...
スパイクタンパク質の毒性に関する質問主意書
経過状況:答弁受理
ワクチンの開発において抗原として接種するタンパク質に毒性がある場合には、その毒性を失わせるための処理を行ったのち人体に投与することは当然であると考える。実際、一九四八年には京都・島根ジフテリア予防接種事件と呼ばれる予防接種事故が起きている。この事故の原因はジフテリアの予防接種で抗原として使用されたジフテリア毒素を無害化しないまま接種したことによる。死者数は乳幼児を中心に八十四名、副反応による被害者数は八百数十人から千人以上にも上った世界最大の予防接種事故である。新型コロナウイルスのmRNAワクチンで抗原として使用されているのはスパイクタンパク質である。スパイクタンパク質に細胞毒性があることは米国ソーク研究所が二〇二一年四月に論文を発表している(Circulation Research Vol.128,No9)。
この研究で明らかになったことは次のとおりである。
研究者らは、SARS−CoV−2のスパイクタンパク質を持つ「疑似ウイルス」(シュードウイルス)を作成した。実際のウイルスは使用していない。このシュードウイルスに曝露すると、動物モデルの肺と動脈に損傷が生じ、スパイクタンパク質だけでも病気を引き起こすのに十分であることが証明された。組織サンプルでは、肺動脈壁の内側を覆う内皮細胞に炎症が見られた。次に研究チームはこのプロセスを研究室で再現し、(動脈の内側を覆う)健康な内皮細胞をスパイクタンパク質にさらした。彼らは、スパイクタンパク質がACE2に結合することによって細胞を損傷したことを示した。この結合により、ミトコンドリア(細胞のエネルギーを生成する細胞小器官)へのACE2の分子シグナル伝達が妨害され、ミトコンドリアが損傷して断片化された。これまでの研究では、細胞がSARS−CoV−2ウイルスに曝露された場合にも同様の影響が示されていたが、本研究は細胞が単独でスパイクタンパク質に曝露された場合に損傷が生じることを示した初めての研究となった。
この研究成果が発表されたCirculation Researchは、掲載論文が他の雑誌に多数引用される循環器系の疾患研究のトップジャーナルである。さらに二〇二三年にはスパイクタンパク質の毒性に関する総説論文が公表された。この論文が掲載されているBiomedicinesはオープンなオンラインジャーナルであり誰でも閲覧することが可能である(「'Spikeopathy': COVID-19 Spike Protein Is Pathogenic, from Both Virus and Vaccine mRNA」(Biomedicines. 2023 Aug 17))。
この総説論文にはスパイクタンパク質の毒性に関する多くの論文が引用されている。この件に関して、以下質問する。
質問1
このような著名なジャーナルに新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の毒性が報告された。さらにソーク研究所も米国の一流の研究機関であると考える。
1 この情報の存在を厚生労働省、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「PMDA」という。)、あるいは厚生労働大臣が厚生科学審議会や薬事審議会等の委員(以下「審議会委員」という。)として任命した学識経験者は承知していたのか。
2 これまでの審議において話題に上ったのか、要すれば審議会(審議会に置かれた分科会や部会を含む。)の議事録を確認の上、示されたい。
回答(質問1 の1及び質問3 について)
御指摘の「米国ソーク研究所」が令和三年四月に発表した論文「(Circulation Research Vol.128, No9)」及び御指摘の令和五年に公表された論文「スパイクタンパク質の毒性に関する総説論文」(以下「両論文」という。)の「情報」の詳細については、厚生労働省及び独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「機構」という。)において承知していない。また、「厚生労働大臣が厚生科学審議会や薬事審議会等の委員・・・として任命した学識経験者」が両論文の「情報」を承知していたのかについては、政府として把握していない。
回答(質問1 の2及び質問5 について)
御指摘の「審議会」においては、御指摘の「情報」そのものについては審議したことはないが、いずれにせよ、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号。以下「医薬品医療機器等法」という。)第六十八条の十第一項及び医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和三十六年厚生省令第一号)第二百二十八条の二十第一項第二号ロの規定による研究報告に係る報告等の状況について、医薬品医療機器等法第六十八条の十二第一項の規定により、厚生労働省において、必要な「審議会」における議論を踏まえながら、適切に評価することとしていることと同様に、御指摘の「情報」についても適切に対応してまいりたい。
質問2
厚生労働大臣が審議会委員として任命している学識経験者が、一定のレベルの学識を有しており彼らが国民の健康を守るという意識を持っているのであれば、この論文が発表された段階でスパイクタンパク質の毒性に関する懸念を表明するようになることが想定される。加えて既に副反応の疑いによる死亡認定は千名に到達しようとしている。しかしながら、スパイクタンパク質の毒性に関する論文が世界にあふれるようになった現在においても、審議会委員は今回のmRNAワクチンについて重大な懸念はないと発言している。この点について厚生労働省としてはどのように考えているのか、任命した審議会委員の選択が適切であったと今も考えているのかも含めて、見解を伺いたい。
回答(質問2 及び質問4 について)
御指摘の「審議会委員」については、厚生科学審議会令(平成十二年政令第二百八十三号)第二条及び薬事審議会令(平成十二年政令第二百八十六号)第三条の規定により、学識経験のある者のうちから、厚生労働大臣が任命するものとされているところ、厚生労働省設置法(平成十一年法律第九十七号)第八条及び第十一条に定める厚生科学審議会及び薬事審議会の所掌事務についての議論を行うことを踏まえ、公衆衛生等に関する知識や経験等を総合的に判断して任命しているところである。また、「審議会」において、両論文のような情報に限らず、新型コロナウイルス感染症に係る予防接種(以下「新型コロナ予防接種」という。)に使用するワクチン(以下「新型コロナワクチン」という。)の安全性については、新型コロナ予防接種を受けたことによるものと疑われる症状について、予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)第十二条第一項の規定により、医師等から厚生労働大臣に報告されているほか、医薬品医療機器等法第六十八条の十第一項及び第二項の規定により、新型コロナワクチンの製造販売業者等から同大臣に報告されているところ、新型コロナ予防接種の開始以降、これらの制度により収集した情報等に基づき、継続的に評価を行うこととしており、直近では令和七年一月二十四日の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会及び薬事審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会において、「副反応疑い報告に関する論点」等が議論され、「ワクチンの安全性に係る重大な懸念は認められない」及び「現時点では引き続き、ワクチンの安全性等に関する国内外の情報を収集しつつ、ワクチンの接種を継続すること」と評価されていると承知している。
質問3
医薬品・ワクチンなどの人に投与する製品については最新の情報により健康上のリスクが想定されるときには製薬企業はその情報をPMDAに伝えることが義務づけられている。今回のmRNAワクチンにおいて、製薬企業側から政府にスパイクタンパク質の毒性に関する懸念情報が伝達されたという事実の有無を伺いたい。
回答(質問1 の1及び質問3 について)
御指摘の「米国ソーク研究所」が令和三年四月に発表した論文「(Circulation Research Vol.128, No9)」及び御指摘の令和五年に公表された論文「スパイクタンパク質の毒性に関する総説論文」(以下「両論文」という。)の「情報」の詳細については、厚生労働省及び独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「機構」という。)において承知していない。また、「厚生労働大臣が厚生科学審議会や薬事審議会等の委員・・・として任命した学識経験者」が両論文の「情報」を承知していたのかについては、政府として把握していない。
質問4
今回の新型コロナウイルス感染症パンデミックにおいて厚生労働大臣が任命した審議会委員については、mRNAワクチンに関するリスク情報の認知が不十分であると考えている。既に米国の州によっては新型コロナウイルスのmRNAワクチン接種を禁じるところまで出現している。さらには、トランプ政権は今回の新型コロナウイルス感染症パンデミック及びワクチン政策について大幅な見直しをしようとしている。この様な状況の変化に審議会委員は十分対応できていないのではないかと考えている。そこで、厚生労働省は、関連する審議会委員に任命された学識経験者をどのような基準で選考したのか、そのプロセスを具体的に示されたい。
回答(質問2 及び質問4 について)
御指摘の「審議会委員」については、厚生科学審議会令(平成十二年政令第二百八十三号)第二条及び薬事審議会令(平成十二年政令第二百八十六号)第三条の規定により、学識経験のある者のうちから、厚生労働大臣が任命するものとされているところ、厚生労働省設置法(平成十一年法律第九十七号)第八条及び第十一条に定める厚生科学審議会及び薬事審議会の所掌事務についての議論を行うことを踏まえ、公衆衛生等に関する知識や経験等を総合的に判断して任命しているところである。また、「審議会」において、両論文のような情報に限らず、新型コロナウイルス感染症に係る予防接種(以下「新型コロナ予防接種」という。)に使用するワクチン(以下「新型コロナワクチン」という。)の安全性については、新型コロナ予防接種を受けたことによるものと疑われる症状について、予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)第十二条第一項の規定により、医師等から厚生労働大臣に報告されているほか、医薬品医療機器等法第六十八条の十第一項及び第二項の規定により、新型コロナワクチンの製造販売業者等から同大臣に報告されているところ、新型コロナ予防接種の開始以降、これらの制度により収集した情報等に基づき、継続的に評価を行うこととしており、直近では令和七年一月二十四日の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会及び薬事審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会において、「副反応疑い報告に関する論点」等が議論され、「ワクチンの安全性に係る重大な懸念は認められない」及び「現時点では引き続き、ワクチンの安全性等に関する国内外の情報を収集しつつ、ワクチンの接種を継続すること」と評価されていると承知している。
質問5
本質問主意書によってスパイクタンパク質のリスク情報を厚生労働省に正式に伝達することになるが、同省としてはこのリスク情報を今後どのように取り扱っていくのか、見解を伺いたい。
回答(質問1 の2及び質問5 について)
御指摘の「審議会」においては、御指摘の「情報」そのものについては審議したことはないが、いずれにせよ、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号。以下「医薬品医療機器等法」という。)第六十八条の十第一項及び医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和三十六年厚生省令第一号)第二百二十八条の二十第一項第二号ロの規定による研究報告に係る報告等の状況について、医薬品医療機器等法第六十八条の十二第一項の規定により、厚生労働省において、必要な「審議会」における議論を踏まえながら、適切に評価することとしていることと同様に、御指摘の「情報」についても適切に対応してまいりたい。
質問6
既に九百名を超える接種関連死亡者が報告されていることの要因の一つが抗原に毒性があることによることは容易に想像できる。これまでに多数のmRNAワクチン接種による被害者が生まれたことと抗原であるスパイクタンパク質の毒性との関係を否定できる根拠を政府は有しているのか。有している場合、その根拠を示されたい。
回答(質問6 について)
お尋ねの「スパイクタンパク質の毒性との関係を否定できる根拠」の趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の「mRNAワクチン」の接種により発現されるスパイクタンパク質の身体への影響も含めて治験において有効性及び安全性に係るデータを収集しており、例えば、ファイザー社の新型コロナワクチンでは、十六歳以上の四万三千四百四十八例を対象とする治験等が行われ、また、当該新型コロナワクチンに係る機構の特例承認に係る報告書において、「本剤を筋肉内投与した場合、本剤は主に投与部位に分布し、一部は全身(主に肝臓)へ一時的に分布し、それぞれでタンパク質を発現するが、いずれの部位でも時間の経過とともに本剤及び発現したタンパク質は消失すると推察された。」とされており、当該報告書等を踏まえ、令和三年二月十二日の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会において審議が行われ、その結果を踏まえて承認を行ったものである。
なお、これらの承認後においても、「mRNAワクチン」を含む新型コロナワクチンによる健康被害を示唆する情報があれば、予防接種法第十二条第一項並びに医薬品医療機器等法第六十八条の十第一項及び第二項の規定による報告等に基づく評価を行い、新型コロナ予防接種の安全性を確認することとしている。