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登録有形文化財制度に関する質問主意書

経過状況:

答弁受理

提出者 鈴木庸介
会派 立憲民主党
公式リンク 第217回国会 / 質問答弁

平成八年の文化財保護法改正により創設された建造物の登録有形文化財制度は、重要文化財指定制度と並び、我が国の歴史的建造物を保護することにより後世に残すことを使命とした大変意義のある制度であると考える。しかしながら近年、所有者の廃業、建造物の老朽化、維持費の負担、相続等により所有者が維持管理を諦め、解体する事例が相次いでおり、文化庁のウェブサイトによると、令和六年十二月九日時点での登録有形文化財(建造物)の抹消件数のうち、現状変更等による抹消が三百四十八件、うち解体等による抹消が三百四件となっている。

また、令和七年二月十九日の神奈川新聞の報道によると、小田原市が所有する登録有形文化財である「旧内野醬油店」工場も解体が決定し、登録抹消が確実になっているとされている。

このように、民間所有の登録文化財だけでなく、地方自治体が自ら所有する登録文化財についても解体による登録抹消がなされる事例が発生し、歴史的建造物の保護という登録有形文化財制度そのものの有効性が疑問視されていると考える。

これらの認識を前提に、以下質問する。

質問1

前述のとおり、文化庁のウェブサイトにおいては、令和六年十二月九日時点での登録有形文化財(建造物)の抹消件数のうち、現状変更等による抹消が三百四十八件、うち解体等による抹消が三百四件との記載がある。

1 この件数は何を根拠としたものか。

2 当該件数が現状変更完了の報告等の書面のみを根拠としている場合、無届けの現状変更等により、正確な件数を把握できていない事態が考えられるが、そのような事態をどのようにして防止しているか。

回答(質問1 の1について)

 お尋ねの「この件数」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「解体等による抹消」の件数は、文化庁長官に対し、文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号。以下「法」という。)第六十四条第一項に基づく建造物の解体等を行う旨の届出及び法第六十八条に基づく当該解体等を行った後の当該建造物の現状等の報告があった建造物で、当該報告の内容を踏まえ、文部科学大臣が法第五十九条第三項に基づく登録の抹消を行い、同大臣が、同条第四項に基づき、当該抹消をした旨を官報で告示したものの件数である。

回答(質問1 の2について)

 御指摘の「無届けの現状変更等」については、法第二百三条第二号において、法第六十四条第一項の規定に違反して届出を行わなかった者は、五万円以下の過料に処することとしている。

 また、文化庁においては、建造物である登録有形文化財(法第五十八条第一項に規定する登録有形文化財をいう。以下同じ。)の所有者等が法に基づく届出等を適切に行うことができるよう、各種届出等に係る手続について整理した手引を作成し、同庁のウェブサイトに掲載するとともに、登録有形文化財の所有者に対し、同条第三項に基づく登録証の交付時に併せて、各種届出等に係る手続について記載したパンフレットを交付することにより、所有者等に対する現状変更の届出等の各種届出等に係る手続の周知に努めている。

 さらに、登録有形文化財の所有者等による現状変更の届出等に係る書類は、法第百八十八条第一項に基づき、都道府県及び政令指定都市(以下これらを合わせて「都道府県等」という。)の教育委員会を経由して提出されるところ、同庁においては、都道府県等における建造物である登録有形文化財に関する事務が適切に実施されるよう、一年に一回、全ての都道府県等の担当者を集めた会議を開催し、各種届出等に際して都道府県等において実施する手続についての説明等を行っている。

質問2

登録有形文化財建造物修理等事業においては、保存修理に係る設計監理事業のみが補助対象であり、修繕工事そのものは補助対象となっていない。

1 この理由は何か。

2 文化財の維持管理の観点から修繕工事も補助対象にすべきと考えるが、政府の見解を問う。

回答(質問2 の1及び質問3 の1について)

 法第二十七条第一項の規定による有形文化財の指定に係る制度(以下「指定制度」という。)が、重要文化財について、その所有者等に対する強い規制を前提とした手厚い保護措置を講ずるものであるのに対して、法第五十七条第一項の規定による有形文化財の登録に係る制度(以下「登録制度」という。)は、登録有形文化財について、その所有者等に対する比較的緩やかな規制を前提とした保護措置を講ずるものであり、所有者等による文化財の自主的な保護を促すものである。このような登録制度の趣旨等に鑑みて、登録有形文化財建造物修理等事業においては保存修理に係る工事を国庫補助の対象外としており、また、登録有形文化財に係る税制措置は、重要文化財に係る税制措置と比較して限定的なものとしている。

回答(質問2 の2及び質問3 の2について)

 お尋ねについては、二の1及び三の1についてで述べたような指定制度と登録制度の相違を踏まえ、慎重に検討する必要があるものと考えている。

質問3

重要文化財(建造物)と登録有形文化財(建造物)では相続税、固定資産税等の税法上の優遇措置に差異がある。

1 この理由は何か。

2 所有者の文化財の保護の負担軽減の観点から登録有形文化財の税法上の優遇措置を拡大すべきと考えるが、政府の見解を問う。

回答(質問2 の1及び質問3 の1について)

 法第二十七条第一項の規定による有形文化財の指定に係る制度(以下「指定制度」という。)が、重要文化財について、その所有者等に対する強い規制を前提とした手厚い保護措置を講ずるものであるのに対して、法第五十七条第一項の規定による有形文化財の登録に係る制度(以下「登録制度」という。)は、登録有形文化財について、その所有者等に対する比較的緩やかな規制を前提とした保護措置を講ずるものであり、所有者等による文化財の自主的な保護を促すものである。このような登録制度の趣旨等に鑑みて、登録有形文化財建造物修理等事業においては保存修理に係る工事を国庫補助の対象外としており、また、登録有形文化財に係る税制措置は、重要文化財に係る税制措置と比較して限定的なものとしている。

回答(質問2 の2及び質問3 の2について)

 お尋ねについては、二の1及び三の1についてで述べたような指定制度と登録制度の相違を踏まえ、慎重に検討する必要があるものと考えている。