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高額療養費制度の見直しに関する質問主意書
経過状況:答弁受理
令和七年一月二十三日に開催された第百九十二回社会保障審議会医療保険部会において、高額療養費制度の見直しが議題の一つとして取り上げられている。厚生労働省が公開した資料では、高額療養費見直しによる財政影響と保険料軽減効果の推計値が示されているが、その中で「実効給付率が変化した場合に経験的に得られている医療費の増減効果(いわゆる長瀬効果:約マイナス二千二百七十億円(給付費))を見込んでいる。」との記述がある。また、同年二月二十一日の衆議院予算委員会において、政府は、高額療養費見直しの修正案における「いわゆる長瀬効果」の推計値については、約千九百五十億円のマイナス見込みである旨を答弁している。
この「いわゆる長瀬効果」とは、給付率と医療費の関係を示した経験則であり、給付率が低くなる制度改革が行われると受診日数が減少し、結果的に医療費の伸びが例年と比べ小さくなるとされている。
これらを踏まえ、以下質問する。
質問1
前述の第百九十二回社会保障審議会医療保険部会の資料及び令和七年二月二十一日の衆議院予算委員会における政府答弁の中で示された「いわゆる長瀬効果」の推計値について、金額の根拠となる計算方法は何か、具体的な数字を入れた計算式の形で示されたい。また、その計算方法が妥当であると考える理由は何か、政府の見解を示されたい。
回答(質問1 の前段について)
御指摘の「いわゆる長瀬効果」については、平成二十三年十一月九日に開催された第四十八回社会保障審議会医療保険部会資料五「高額療養費の見直しと受診時定額負担について」において、「医療費水準yを給付率xの関数として示す式(長瀬式)」として、「一般制度」については「y=0.475x2+0.525」、「老人保健」については「y=0.499x2+0.501」を示しているところ、御指摘の「「いわゆる長瀬効果」の推計値」については、これらの「長瀬式」に基づき、医療保険制度別、年齢区分別、被保険者本人又は被扶養者別及び高額療養費の所得区分別に保険給付費への影響額を算出したものを合計して推計しており、お尋ねの「計算式」が膨大となることから、網羅的に「具体的な数字を入れた計算式の形」でお示しすることは困難であるが、例えば、令和七年一月二十三日に開催された第百九十二回社会保障審議会医療保険部会資料二「高額療養費制度の見直しについて」で示した「「いわゆる長瀬効果」の推計値」「約マイナス二千二百七十億円(給付費)」のうち、全国健康保険協会管掌健康保険の二十歳以上六十五歳未満の被保険者本人における当該見直し後の高額療養費の所得区分が年収三百七十万円から五百十万円までの区分で言えば、〇・四七五に当該見直し後の給付率(医療費に対する保険給付費の割合をいう。以下同じ。)である〇・七八七の二乗を乗じて得た値に〇・五二五を加えて算出した値を、〇・四七五に当該見直し前の給付率である〇・七九一の二乗を乗じて得た値に〇・五二五を加えて算出した値で除した値から、一を差し引いたものを現行の保険給付費に乗じて計算している。
回答(質問1 の後段について)
お尋ねについては、令和七年二月二十一日の衆議院予算委員会において、福岡厚生労働大臣が「長瀬効果の金額につきましては、個々の医療や見直しの内容を踏まえて分析されるものではなく、実効給付率が変化した場合に経験的に得られている計算式に機械的に当てはめて、単純に医療費の増減効果を試算したものです。」と、また、令和六年四月二日の参議院厚生労働委員会において、武見厚生労働大臣(当時)が「学術的にも、長瀬式に代わる計算式や分析手法が提示されているわけではございません。」と答弁しているところ、現行の「経験的に得られている計算式」を用いることが妥当であると考えている。
質問2
政府は、前述の「いわゆる長瀬効果」による給付費減を見込んでいることで、制度改革により高額療養費制度の該当者のうち一定数の受診控えが発生すると見込んでいるものと考えられるが、このような受診控えを誘発する制度改革は、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第一条及び国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第一条の目的に反しないか、政府の見解を示されたい。
回答(質問2 について)
お尋ねについては、一の後段についてでお答えしたとおり、令和七年二月二十一日の衆議院予算委員会において、福岡厚生労働大臣が「長瀬効果の金額につきましては、個々の医療や見直しの内容を踏まえて分析されるものではなく、実効給付率が変化した場合に経験的に得られている計算式に機械的に当てはめて、単純に医療費の増減効果を試算したものです。」と答弁したとおりであるところ、同日の同委員会において、同大臣が「当然、今回、所得の低い方については上昇率を下げるなど、受診抑制が起こらないような仕組みを設けさせていただいているということでございます。」と、また、石破内閣総理大臣が「高額療養費の変化による受診行動の変化、これを示すものではないと思っております。そして、必要な受診が抑制されるというものではございません。」と答弁しているとおり、「政府は、・・・一定数の受診控えが発生すると見込んでいるものと考えられる」及び「受診控えを誘発する制度改革」との御指摘は当たらないと考えており、今後とも、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第一条及び国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第一条の目的を踏まえ、関係法令の適切な施行に努めてまいりたい。