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羽田空港離着運用における新ルートと従来ルートの処理能力に関する質問主意書
経過状況:答弁受理
二〇二四年七月二十九日に国土交通省が提供した同年二月、三月の羽田空港離着陸詳細運用実績の新ルートおよび従来ルートそれぞれの処理実績数(南風運用部分)を見ると、新ルート導入効果がどこまであるのか疑問に思われる。特に新ルート特有の何らかの運用障害に伴って、新ルートの運用時間帯にもかかわらず従来ルートへの運用変更が発生している。またWEBの運航軌跡から、毎日二度行われる新ルートと従来ルート切替え時における時間ロスの可能性も見られる。
そこで以下の事項について質問する。
質問1
南風時の時間ごとの離着陸運用実績を見ると、繁忙時間帯を中心にそれぞれ一時間当たり九十回を超える実績がある。冬場のため南風運用自体が少ない中の情報ではあるが、元々従来ルートの時間値(理論的な処理能力)八十二回では増便が厳しいために時間値九十回が実現できる新ルートを始めたはずである。ところが従来ルートでは一時間当たり最大九十五回、新ルートでは最大九十四回の実績が報告されており、この結果は二〇二〇年三月から始まった年間三万九千回増のダイヤ計画が従来ルートを運用しても十分さばけるのではないかと推認できる。従来ルートと新ルートの理論的な時間値の能力差はあるとしても、現在国交省が二〇三〇年代までをにらんで計画している羽田の処理能力は現状の能力のまま変更せず、成田は二〇二八年には第三滑走路増設で合わせて年間百万回の処理能力を実現するとある。であれば、都心上空で騒音被害をはじめ多くの問題を引き起こしている新ルートを継続する合理性が薄弱に思えるが、政府の見解を問う。
回答(質問1 について)
御指摘の「従来ルートを運用しても十分さばける」の意味するところが必ずしも明らかではないが、交通政策審議会航空分科会基本政策部会首都圏空港機能強化技術検討小委員会における検討の結果、平成二十六年七月八日に「首都圏空港機能強化技術検討小委員会の中間取りまとめ」において、御指摘の「従来ルート」で「常時達成可能な時間値は出発四十一回・到着四十一回(合計八十二回)」であって、御指摘の「新ルート」の運用により御指摘の「時間値」を「九十回(出発四十六回、到着四十四回)」に拡大することができると示されていることから、当該従来ルートの運用のみでは常時、御指摘の「一時間当たり最大九十五回」の運用を行うことは困難である。また、御指摘の「年間百万回の処理能力を実現する」ためには、成田国際空港における御指摘の「第三滑走路増設」に加えて、当該新ルートの運用が必要である。当該新ルートについては、将来的な航空需要の拡大を見据え、我が国の国際競争力の強化、首都圏における航空機の騒音による影響の分散等の観点から、引き続き運用する必要があると考えている。
質問2
新ルートの午後の運用は原則午後三時から七時までの四時間のうちの三時間であるが、南風運用実績を分析すると、新ルートの運用時間帯であるにもかかわらず従来ルートで運用しているケースがみられる。天候等による緊急回避的な措置だけでなく、羽田特有の南西の風が強い場合に横風であおられることを避けるために従来ルートに変更しているケースもあると考えられる。そこで、過去三年間において新ルートの運用時間帯にこれを回避して従来ルートで運航した回数を可能な限り示した上で、その理由の内訳を伺う。
回答(質問2 について)
お尋ねの「新ルートの運用時間帯にこれを回避して従来ルートで運航した回数」の意味するところが必ずしも明らかではないが、令和三年度から令和五年度までの過去三年間のうち、御指摘の「新ルートの運用時間帯」に御指摘の「従来ルート」のみで運用を行った日数は二十八日であり、その理由の内訳は、経路上の悪天候が一日、経路上の悪天候及び南西からの強風が二日、南西からの強風が二十三日、その他の理由が二日である。
質問3
国交省が随時WEB動画で提供している運航軌跡を見ると、午後の南風運用時に従来ルートから新ルートへの切替え、また逆の従来ルートへの戻し時それぞれの運用状況を概観すると、切替え時間帯に羽田に近い離着陸の空域にほとんど飛行機がいない状況が発生している。安全確保のための技術的に必要な措置と思われるが、結果として切替えをしないシームレスな運用の場合に比べ、時間ロスが発生しているのではないか。さらに、羽田離着陸遅延の常態化の一因となってはいないのか。時間ロスの発生の可能性を、技術的な課題があればそれも含めて、政府の認識を伺う。
回答(質問3 について)
御指摘の「時間ロス」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「午後の南風運用時に従来ルートから新ルートへの切替え、また逆の従来ルートへの戻し」は、御指摘の「新ルート」の運用のために必要であり、当該新ルートの運用により、一で御指摘の「時間値」を九十回とすることを可能としている。御指摘の「切替え」及び「戻し」の実施に当たっては、安全確保のための措置を含め一定の時間を要するが、その際に行う措置は、風向の変化に伴う滑走路の運用方法の変更と同様であり、御指摘の「技術的な課題」はない。
また、御指摘の「羽田離着陸遅延の常態化」の意味するところが必ずしも明らかではないが、航空機の運航の遅延は、一般的には、天候や航空会社の事情等の複合的な要因により生ずるものであると考えている。