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取調べの際の弁護士の立会いに関する質問主意書
経過状況:答弁受理
被疑者・被告人は、捜査機関による取調べにおいては、常に圧倒的弱者であり、弁護人の援助を受け、黙秘権行使あるいは供述の自由を守る必要がある。逆に、これらが守られなければ、自白の強要やえん罪を生む温床ともなりうる。取調べの立会いについては禁止規定がなく、法務省においても、取調べに弁護人を立ち会わせるか否かは、各検察官の判断である旨が、日本政府の正式な見解として示されている。
そこで、次の事項について質問する。
質問1
上記の政府見解にもかかわらず、日本弁護士連合会によると、検察官による被疑者取調べにおいて、取調べへの弁護人立会いがなされた事例は一件も把握できていないとのことである。
ア 法務省が把握する範囲で、過去に被疑者取調べに弁護人を立ち会わせた事例の有無ないし件数を可能な限り明らかにされたい。
イ もし、それが零件であるならば、個々の検察官の判断と言いながら、結局は一律に禁止しているとみざるを得ず、法務省の見解はもちろん、日本政府が国際連合人権自由権規約委員会への回答も現実と乖離しているとの批判もありうるところである。また、事例の有無や件数を把握していないのであれば、早急に調査すべきと考えるが、見解を伺う。
ウ 個々の検察官が立会いの是否を判断するためには、組織としての一定の基準が必要と考えられる。個々の検察官において取調べの適正性を確保するために、どのような場合に弁護人の立会いが認められるべきとしているかを具体的にお示し頂きたい。
回答(質問1 のア及びイについて)
御指摘の「検察官による被疑者取調べ」に係る「過去に・・・弁護人を立ち会わせた事例」については、法務省としてこれを網羅的に把握しておらず、具体的な事例の有無及び件数について承知していない。また、現時点においてこれを調査する予定はない。
回答(質問1 のウについて)
検察官による被疑者の取調べへの弁護人の立会いを認めるかどうかは、取調べを行う検察官において、その必要性に加え、取調べの機能を損なうおそれ、関係者の名誉及びプライバシーや捜査の秘密が害されるおそれ等を考慮し、個別の事案に応じて適切に判断されるべき事柄であるものと考えている。
質問2
日本政府が立会いを「一律認めることは相当ではない」とし、法務省の公式見解ともなっている立会いを認めるか否かの考慮要素について伺う。
ア 「取調べの機能を損なうおそれ」とは、具体的にはどのようなものか示されたい。
イ 接見交通権が認められている以上、被疑者に提示している情報は弁護人にも伝わるため、弁護人を立ち会わせない理由にはならないと考えられるが、「関係者の名誉及びプライバシーや捜査の秘密が害されるおそれ」とは、具体的にはどのようなものか示されたい。
回答(質問2 のアについて)
御指摘の「取調べの機能を損なうおそれ」の意味については、令和六年六月十八日の参議院法務委員会において、政府参考人が「例えばですが、検察官による取調べに弁護人の立会いを認めた場合、弁護人が取調べに介入して取調べ官の質問を遮ったり、取調べの最中に被疑者に対して例えば個々の質問に黙秘するよう助言することなどが可能となり得るわけですが、必要な説得、追及を通じて被疑者からありのままの供述を得ることは期待できなくなる、また、弁護人の助言によって被疑者が質問の一部又は全部に対して黙秘する中で、被疑者の供述が真実であるのか判断することも困難になるなど、取調べの機能を大幅に損なうおそれが大きいと指摘されているものと承知しています。」と述べているところである。
回答(質問2 のイについて)
御指摘の「関係者の名誉及びプライバシーや捜査の秘密が害されるおそれ」の意味については、字義のとおりである。