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浅尾慶一郎環境大臣による除去土壌の利用についての放射線審議会への諮問に関する質問主意書

経過状況:

答弁受理

提出者 阿部知子
会派 立憲民主党
公式リンク 第216回国会 / 質問答弁

二〇一一年に成立した、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(以後、特措法)は、第一条で「人の健康又は生活環境に及ぼす影響を速やかに低減すること」を目的に掲げている。第二条第四項で定義されている「除去土壌」は、二〇一四年に成立した中間貯蔵・環境安全事業株式会社法(以後、JESCO法)に基づいて、現在、福島県の大熊町と双葉町に設けられた中間貯蔵施設に集中保管されている。

また、JESCO法第二条第四項で「中間貯蔵」とは、「最終処分が行われるまでの間、福島県内除去土壌等について福島県(環境省令で定める区域に限る。)内において除去土壌等処理基準に従って行われる保管又は処分をいう」と定義され、同第三条で「中間貯蔵開始後三十年以内に、福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずるものとする」としている。

そして、本年十月二十三日に、浅尾慶一郎環境大臣(以後、大臣)は、この中間貯蔵された除去土壌に関して、「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法の規定に基づく放射線障害の防止に関する技術的基準の策定について(諮問)」(以後、諮問)を放射線審議会に対して行った。

この諮問に関連して、以下政府に対し質問する。

質問1

環境省は二〇一六年に発表した「再生資材化した除去土壌の安全な利用に係る基本的考え方について」をもとに、「必要な規模の最終処分場の確保等の観点から実現性が乏しい」として全国の公共事業等で「再生利用」したい考えだと理解している。

ア しかし、国がJESCO法で自治体や元の地権者に約束したのは、全国の公共事業等で再生利用ではなく、「中間貯蔵開始後三十年以内に、福島県外で最終処分」することではなかったのか。

イ 本年十二月五日に超党派議員連盟「原発ゼロ・再エネ100の会」(以下、ゼロの会)における会合で、JESCO法で定めたとおりに、三十年以内に福島県外で最終処分ができる見込みがなければ、改正法案を提出すべきではないか等を問われると、環境省は、「再生利用」は「福島県外で最終処分を完了するために必要な措置」であると回答した。法律制定時に説明のなかった行政行為を「必要な措置」の言葉に包めて、行政裁量で進めることは、厳格に抑制すべきであると考えるが、大臣はどう考えるか、大臣自身の言葉で見解を示されたい。

ウ 「必要な措置」とは「再生利用」であるとの説明を、関係自治体、中間貯蔵施設の元の地権者達、および国民に対して、いつどのように説明し、了解を得たのか。それぞれ具体的に明らかにされたい。

回答(質問1 について)

 パブリックコメントを実施し、広く国民から意見を募集した上で策定した「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法基本方針」(平成二十三年十一月十一日閣議決定)において、「汚染の程度が低い除去土壌について、安全性を確保しつつ、再生利用等を検討する必要がある」とされている。除去土壌(平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成二十三年法律第百十号。以下「法」という。)第二条第四項に規定する除去土壌をいう。以下同じ。)の再生利用は、法第四十一条第一項に規定する環境省令で定める基準に従って行われる処分として行われるものである。中間貯蔵・環境安全事業株式会社法(平成十五年法律第四十四号)第三条第二項における「国は、・・・中間貯蔵開始後三十年以内に、福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずるものとする」ことについては、日本環境安全事業株式会社法の一部を改正する法律(平成二十六年法律第百二十号)による改正により、国会での御審議の上定められたものである。以上のことから、「法律制定時に説明のなかった行政行為を」「行政裁量で進める」との御指摘は当たらず、また、お尋ねの「「必要な措置」とは「再生利用」であるとの説明を、関係自治体、中間貯蔵施設の元の地権者達、および国民に対して」「説明し、了解を得たのか」については、その具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

質問2

諮問に記された諮問事項のうち、「再生資材化した除去土壌の利用(復興再生利用(※1))」については、(※1)で「東京電力福島第一原子力発電所の事故による災害からの日本の復興に資することを目的として、実施や管理の責任体制が明確であり、継続的かつ安定的に行われる公共事業等において、適切な管理の下で、盛土等の用途のために再生資材化した除去土壌を利用(維持管理することを含む)すること」との説明がついている。

ア この諮問事項で述べているうち、「再生資材化」、「実施や管理の責任体制」、「適切な管理」とは何を示し、その言葉はどの法律で定義されているか。

イ 環境省は、こうした言葉をガイドラインで定めるとの説明を行っているが、ガイドラインで定めた「再生資材化」、「実施や管理の責任体制」、「適切な管理」に反する行為が行われた場合に、たとえば、一住民がその違法性を告発するための法的根拠はどこにあるか。

ウ 本年十二月十日に開催された放射線審議会で、甲斐会長から「ガイドラインの拘束力」について質問され、環境省は「復興再生利用については除染実施者がやる。環境省や自治体だから、一定程度の拘束力は持つ」と回答を行った。一定程度の拘束力とは何か。

エ 国や自治体の公共事業であっても、物理的に事業を行うのは民間の請負業者である。「再生資材化」、「実施や管理の責任体制」、「適切な管理」がガイドラインにしか書かれておらず、そのとおりに再生利用が行われなかった場合に、原状回復の指導や命令を行う権限は誰にあるのか。

回答(質問2 及び質問3 のイについて)

 お尋ねの「違法性を告発するための法的根拠」の意味するところが必ずしも明らかではないが、法第四十一条第一項の規定に基づき環境省令で定める同項の処分のうちの再生利用を行う者が従わなければならない基準(以下「再生利用に係る基準」という。)の策定を検討しているところであり、御指摘の「ガイドライン」も含め、現時点においてその内容の詳細についてお答えすることは困難である。また、御指摘の「回答」は、除去土壌の再生利用は、法第三十条第一項、第三十五条第一項及び第四十二条第一項の規定により、国、地方公共団体等の責任において行われるものであり、検討中の再生利用に係る基準及びそのガイドラインを踏まえて適切に実施される旨を述べたものである。

質問3

諮問に記された諮問事項のうち、「復興再生利用によって一般公衆の受ける実効線量が一年間につき一ミリシーベルトを超えないものとして環境大臣が定める放射能濃度※2」については、「※2 法第一条に規定する事故由来放射性物質であるセシウム百三十四についての放射能濃度及びセシウム百三十七についての放射能濃度の合計が、八千ベクレル毎キログラム以下であることとする」と説明されている。

ア 「セシウム百三十四についての放射能濃度及びセシウム百三十七についての放射能濃度の合計が、八千ベクレル毎キログラム以下であること」を誰がどう管理するのか。目に見えない放射能濃度を国民、特に周辺住民はどのように確認できるのか。

イ いわゆる原子炉等規制法においては、原子力施設等の解体で発生するコンクリート破片や金属くずを放射能汚染物質としてみなさず再利用できる基準(クリアランスレベル)は、セシウム百三十四及びセシウム百三十七についての放射能濃度の合計は百ベクレル毎キログラム以下と定められている。復興再生利用の名で八千ベクレル毎キログラムが利用された場合、環境省の「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会」に提出された資料によれば、八千ベクレル毎キログラムの汚染土壌が百ベクレル毎キログラムにまで減衰するのに約百九十年かかるが、その間、「実施や管理の責任体制」、「適切な管理」をどのように保つつもりか。その法的な拘束力をどのように担保するのか。

ウ 十二月五日のゼロの会における質疑で、復興再生利用にかかる費用は、除染と同様、汚染者である東京電力が負担するのかとの問いに、環境省は、特措法第四十四条第一項で、「当該関係原子力事業者の負担の下に実施されるものとする」とされていると回答した。その「負担」には、再生資材化、覆土、請負事業者(元請・下請・孫請)の経営者および作業員に向けた放射線防護(住民、作業員)対策やその教育コスト、および運搬コストも含まれているのか。

エ 経済合理性や国民への説明責任が求められる公共事業で、このような負担増について、これまで、国会や国民に対して、明確に説明を行ってきたことはあるか。

回答(質問2 及び質問3 のイについて)

 お尋ねの「違法性を告発するための法的根拠」の意味するところが必ずしも明らかではないが、法第四十一条第一項の規定に基づき環境省令で定める同項の処分のうちの再生利用を行う者が従わなければならない基準(以下「再生利用に係る基準」という。)の策定を検討しているところであり、御指摘の「ガイドライン」も含め、現時点においてその内容の詳細についてお答えすることは困難である。また、御指摘の「回答」は、除去土壌の再生利用は、法第三十条第一項、第三十五条第一項及び第四十二条第一項の規定により、国、地方公共団体等の責任において行われるものであり、検討中の再生利用に係る基準及びそのガイドラインを踏まえて適切に実施される旨を述べたものである。

回答(質問3 のアについて)

 再生利用に係る基準の策定の検討に当たり、法第三十八条第一項に定める除染実施者がその除去土壌の放射能濃度の調査を行うこととすることを検討しており、現時点においてその詳細をお答えすることは困難である。

回答(質問3 のウについて)

 法第四十四条第一項において、「事故由来放射性物質による環境の汚染に対処するためこの法律に基づき講ぜられる措置は、・・・当該関係原子力事業者の負担の下に実施されるものとする」とされている。その上で、二及び三のイについてで述べたとおり、再生利用に係る基準の策定を検討しており、現時点においてその内容の詳細についてお答えすることは困難である。

回答(質問3 のエについて)

 お尋ねの趣旨が明らかではないため、お答えすることは困難である。

質問4

諮問は、特措法の規定に基づく「放射線障害防止の技術的基準に関する法律」第六条の規定に基づき意見を求めたものである。同法の目的(第一条)は、「放射線障害防止の技術的基準の斉一を図ること」とされている。除去土壌の利用の基準と、クリアランスレベルは八十倍もの開きがあるとの批判に対して、環境省は「管理」するからと批判をかわしてきたが、「基準の斉一を図る」ことを確保するための具体的な法的な根拠はどこにあるのか。

回答(質問4 について)

 お尋ねの「「基準の斉一を図る」ことを確保するための具体的な法的な根拠」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、放射線障害防止の技術的基準に関する法律(昭和三十三年法律第百六十二号)第一条においては、「原子力規制委員会に放射線審議会を設置することによって、放射線障害防止の技術的基準の斉一を図ること」とされているところである。

 なお、御指摘の「クリアランスレベル」については、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第六十一条の二第一項に基づき、原子力事業者等が、工場等において用いた資材その他の物が再生利用される場合を含め、これらの物に含まれる放射性物質についての放射能濃度が放射線による障害の防止のための措置を必要としないものとして定められた基準である。他方で、除去土壌の再生利用については、適切な管理の下で安全に行うことを前提として、再生利用に係る基準の策定を検討しており、根拠となる法律や前提となる考え方が異なるものである。

質問5

二〇二一年五月二十三日に開催している理解醸成のための「福島、その先の環境へ。対話フォーラム」は読売新聞社が後援し、その後、紙面で大きく広告記事を書いている。この報道機関への後援料や委託料は払ったのかどうかを明らかにされたい。

回答(質問5 について)

 御指摘の「福島、その先の環境へ。対話フォーラム」については、環境省が発注する業務の一部として行われたものであり、その業務の受注者から御指摘の「報道機関」への必要経費の支払が行われたものと考えている。

質問6

再生利用事業の理解醸成のために、広告代理店および報道機関が関わった事業は、いつから開始され、本年度までに各年でどれぐらいの支出があるのか可能な限り明らかにされたい。

回答(質問6 について)

 御指摘の「再生利用事業の理解醸成のために、広告代理店および報道機関が関わった事業」については、令和元年から行われており、環境省が実施する東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所の事故を踏まえた環境再生に係る事業の広報関係経費の一部として執行しているものであり、御指摘の「再生利用事業の理解醸成」に係る費用のみを抽出してお答えすることは困難である。