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日本航空の運航乗務員による過剰飲酒を原因とする遅延に関する質問主意書

経過状況:

答弁受理

提出者 福田玄
会派 国民民主党
公式リンク 第216回国会 / 質問答弁

日本航空株式会社は、令和六年十二月十日、機長二人による過度な飲酒が原因で同月一日のオーストラリア・メルボルン空港発成田国際空港行きの便で三時間以上の遅れが生じたと発表したと聞く。日本航空は、同年四月にもアメリカにおいて同様の飲酒事案が発生し航空機を欠航せしめ、再発防止策を進めていたと記憶するところであり、何故にこのような事案が今また再発するのか理解に苦しむところである。

日本航空は、国から繰り返し行政指導や厳重注意など受け、再発防止策を再三にわたり国土交通省に提出しているがまったく改善の兆しがみえないゆえに、アルコール摂取と安全運航並びに国際航空運送事業及び国内定期航空運送事業を営む企業の遅延に関する考え方について政府の見解を以下に問う。

質問1

右の事案においては、乗務予定の機長二人が乗務予定日前日に過剰に飲酒せしめ、一人については体調不良を理由に出勤時間を遅らせ、もう一人の機長については乗務前に実施する呼気検査で基準値を上回るアルコールが検出され、基準値以下になるのを待ったという。各々がアルコールが検出されなくなってから本検査を実施し、アルコールが検知されなかったことを確認して出発したということである。

1 そこで国土交通省に見解を確認するが、前日の飲酒とは関係なく、出発前の本検査においてアルコールが検出されなければ、アルコールの影響はないと考えられ、国際航空運送事業を営む航空機を安全に運航させられると考えてよいのか明らかにされたい。

2 仮に出発前の検査結果で十分に安全であると判定できるのが定説であるのであれば、日本航空が現在実施しているアルコール摂取一律禁止措置はいささか子供じみており、本質的な解決策とはいえないのではないかと不安を感じるところであるが、政府はどのように考えているのか明らかにされたい。

回答(質問1 の1について)

 お尋ねについては、航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号。以下「法」という。)第七十条の規定により、法第六十九条に規定する航空機乗組員は、アルコールの影響により航空機の正常な運航ができないおそれがある間は、その航空業務(法第二条第二項に規定する航空業務をいう。)を行ってはならないこととされている。また、法第百二条第一項に規定する本邦航空運送事業者については、法第百四条第一項の規定に基づく運航規程の認可に係る審査基準を定めた「運航規程審査要領細則」(平成十二年一月二十八日付け空航第七十八号運輸省航空局技術部運航課長通達(最終改正 令和六年十二月十八日))において、「航空機乗組員及び客室乗務員は一連の飛行前後において、別に定める「航空機乗組員等のアルコール検査実施要領」に基づき酒気帯びの有無を確認する」こと及び「航空機乗組員及び客室乗務員は、少なくとも飛行勤務(乗務を伴う一連の勤務であって、勤務開始から最後の乗務終了までをいう。)開始前八時間以内に飲酒を行った場合又はそれ以前であっても飛行勤務開始時に酒気帯び状態となるおそれがある過度な飲酒・・・を行った場合は飛行勤務を行ってはならない」ことを運航規程に定めることを示しているところであり、国土交通省としては、法第二条第十八項に規定する航空運送事業の安全な実施を図る観点から、これらの関係法令等を遵守した上で航空機を運航することが重要であると考えている。

回答(質問1 の2について)

 お尋ねについては、御指摘の事案を受けて、日本航空株式会社(以下「会社」という。)は、令和六年十二月十一日から、会社による自主的な取組として、運航乗務員が業務により海外に滞在する場合における飲酒を禁止したと承知しているが、当該取組の妥当性については、一義的には会社において判断されるべきものであると考えている。

質問2

右の事案では、当該運航乗務員は前日にメルボルンに到着し、飲酒後の翌日には乗務予定であったようである。体調を万全にするためには休憩のための時間がいささか短すぎるような印象を受ける。疲労は航空機事故を誘発することは一般に知られている事実であることを考えれば、休憩のための時間が短いことのほうがアルコール摂取問題よりも深刻なのではないかと推測するところである。そこで政府に問うが、一般論として、前日に勤務地に到着し、飲酒後の翌日には乗務しなければならないという日本航空の勤務体系は国際航空運送事業を営む航空事業者においては一般的な勤務体系なのか政府として把握されているところを明らかにされたい。

回答(質問2 について)

 お尋ねについては、「航空機乗組員の乗務割について」(令和元年七月五日付け国空航第六百二十五号国土交通省航空局安全部運航安全課長通達(最終改正 令和六年三月二十九日))において、「勤務終了後から次の飛行勤務までは十時間以上の休養を与えること」及び「時差のある地域間を運航」する場合は時差を勘案して一定の時間を「休養時間」として追加すること等が規定されており、会社においても、同通達に基づく運用がなされているものと承知している。

質問3

右の事案について最も懸念するのは、アルコールを過剰摂取したという事実よりも隠ぺいを企図したと推察される日本航空のマネジメント態勢である。たとえば、当該運航乗務員のうちの一人は、自主検査でアルコールが検出された際、誤検知を主張したという。その後、自主検査にてあらためて未検出となってから本検査を実施、アルコール未検知を確認した上で乗務したということである。右の事実の時系列を鑑みるならば、日本航空は、機長の誤検知という主張を信じて、自主検査で未検出になるまで待ったということになるが、自主検査におけるアルコール検知を受けて飲酒の疑いなどをもたず、あたら自主検査を続けたというのは信じ難い。自主検査に使用する検査機材の誤検知頻度の問題もあるやもしれないが、日本航空は会社として飲酒の事実を知りながら、あるいは推測されたが知らぬこととし、あくまでも運航を優先させるためにアルコールが消えるのを待ったと考えられなくもない。仮に、こうした運航優先を目指した隠ぺい体質が会社に蔓延しているとなると、航空機の安全な運航を任すことなどできようはずもない。右の事案については、単に過剰な飲酒及び運航乗務員個人の問題と片付けることなく、会社の体質などについても厳しく調査する必要があると考えるが、政府の考え方を明らかにされたい。

回答(質問3 について)

 お尋ねについては、御指摘の事案について、国土交通省としては、必要な調査を行った上で、会社に対して、適切な対応を行ってまいりたい。

質問4

右の事案では、本検査でアルコール未検知が確認できるまで待って出発することになったゆえに、出発時間は三時間以上も遅延することになった。アルコール未検知による安全運航を担保した故に、「一拍置こう、声をかけよう」という日本航空の再発防止の合言葉が機能したとも考えられるが、飲酒問題については、そもそも出発前に準備等を徹底していれば起こらなかった「一拍」であり、あたら定時に出発するのを遅らせることで、むしろ適切に準備することを忘れているのではないかと考えさせる事例にみゆる。そこで政府に以下について問う。

1 日本航空の以下の空港における今年度の十一月末現在の定時運航率(羽田空港、伊丹空港、福岡空港)。

2 以下の空港を利用する航空会社の今年度の十一月末現在の定時運航率の平均(羽田空港、伊丹空港、福岡空港)。

3 安全確保のため「一拍」は当然のことではあるが、たとえば、遅れてもなんとかなる、待たせればよいのだという諦念の情念から運航乗務員の過剰なる飲酒や整備不良などが漫然と行われ、定時運航のための出発前の準備等を怠るような環境が醸成されることについて政府はどのように考えるのか明らかにされたい。

回答(質問4 の1及び2について)

 お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

回答(質問4 の3について)

 お尋ねについては、国土交通省としては、御指摘の「定時運航のための出発前の準備」は、航空会社において、航空機の運航の安全を確保した上で、適切に実施すべきものと考えている。