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建設業の人手不足等の諸課題への対応に関する質問主意書
経過状況:答弁受理
建設業は、生活インフラや建物の整備、自然災害の復興等、地域の発展に欠かせないが、一般社団法人日本建設業連合会によれば、令和五年の建設業就業者数は四百八十三万人で、平成九年のピーク時から約三割減少している。担い手の高齢化や働き方改革等(時間外労働時間の上限規制、従来の四週四閉所から四週八閉所として週休二日以上の確保、工期の適正化等)による人手不足の影響が広がっており、過去十年で建設業の倒産件数が最多ペースで推移している。以下、質問する。
質問1
政府は建設業の長時間労働の改善に向け、上記の働き方改革や省人化を進めるための、情報通信技術(ICT)の調査・測量から設計、施工、検査、維持管理分野までの各建設生産プロセスに全面活用の取組等を拡大させるとしてきたが、総合建設会社(ゼネコン)等と比較した場合、現場での施工業務の多い工務店や専門工事店等の中小企業では、残業を抑制する対策や、新技術やデジタルツール導入による省人化は進んでいない。実情をふまえ、政府の今後の施策の方向性を確認したく、見解を伺う。
回答(質問1 について)
お尋ねの「実情」については、建設業者(建設業法(昭和二十四年法律第百号。以下「法」という。)第二条第三項に規定する建設業者をいう。以下同じ。)の規模によって、御指摘の「長時間労働の改善」に向けた取組状況に差があると認識しているところ、御指摘の「全面活用の取組等を拡大させるとしてきた」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、建設業における生産性向上についての取組として、建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律(令和六年法律第四十九号)による改正により、法第二十五条の二十八第一項及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(平成十二年法律第百二十七号。以下「入契法」という。)第十六条の規定により、法第十七条に規定する特定建設業者及び入契法第二条第二項に規定する公共工事に係る建設業者(以下「特定建設業者等」という。)は、建設工事(法第二条第一項に規定する建設工事をいう。以下同じ。)の適正な施工を確保するために必要な情報通信技術の活用に関し必要な措置を講ずるよう努めなければならないこととされたほか、法第二十六条第三項及び第四項並びに建設業法施行令(昭和三十一年政令第二百七十三号)第三十条の規定により、工事現場ごとに専任で置かれるべき法第二十六条第一項に規定する主任技術者又は同条第二項に規定する監理技術者は、情報通信技術の活用等の一定の要件を満たした場合、二の工事現場に係る業務を兼務することができることとされた。さらに、国土交通省においては、令和六年十二月十三日、法第二十五条の二十八第三項の規定に基づき、「情報通信技術を活用した建設工事の適正な施工を確保するための基本的な指針」(令和六年国土交通省告示第千三百三十三号。以下「指針」という。)を定め、建設業全体の生産性向上の観点から、特定建設業者等に加えて、特定建設業者等以外の建設業者においても、「その経営規模や工種内容等に応じて、ICTに係る設備投資と人材育成に積極的に取り組むべき」こと等を示したところである。今後とも、政府としては、関係法令や指針に基づき、御指摘の「中小企業」を含む建設業全体の生産性向上に取り組む考えである。
質問2
工期の適正化については「内装仕上げ工事等の工期終盤の専門工事に工事全体の遅れがしわ寄せになる」との現場の声が大きい。工期が遅れる要因として、元請けと施行会社・職人等の現場での情報連携不足が指摘されており、工期の適正化を進める上では、ゼネコンや専門工事店、建材メーカー等、関係企業が建設工程全体で必要なデータを利活用・共有できるようにする等、情報連携の仕組みの整備ができるよう支援する必要があると考える。政府見解を伺う。
回答(質問2 について)
御指摘の「現場での情報連携不足」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、建設工事の請負契約の締結において適正な工期が設定されることが重要であると考えているところ、これまでも、法第三十四条第二項の規定に基づき中央建設業審議会が作成した「工期に関する基準」(令和二年七月二十日中央建設業審議会決定(最終改定 令和六年三月二十七日))において「全体の工期のしわ寄せが仕上工事や設備工事などの後工程に生じないように、特に民間工事においては、受注者が各工程で適切に進捗管理をする必要がある」旨を勧告している。
加えて、指針においては、情報通信技術の活用において留意すべき観点として、「建設現場におけるICT活用の利点の一つとして、個々の工程の効率化・生産性向上のみならず、各工程におけるアウトプットが数値化・データ化されることにより、他の工程や他の工事にその成果を活用できるようになる」ことを示した上で、情報通信技術の導入の具体例として「BIM/CIMの活用」を挙げており、「BIM/CIMは、建設事業で取扱う情報をデジタル化することにより、調査・測量・設計・施工・維持管理等の建設事業の各段階に携わる受発注者のデータ活用・共有を容易にし、建設事業全体における一連の建設生産・管理システムの効率化を図る」ものであるとしている。その上で、「BIM」を活用して建築物の設計又は施工を行う事業者に対する支援によって、当該事業者におけるデータ連携の取組を促進してきたところである。政府としては、引き続き、建設業における関係者間の情報連携の促進に向けた取組を進めてまいりたい。
質問3
電気保安に関する設備工事や建設工事等を行う電気工事について、電気工事士の第一種は、令和二年の需要に対し約二万人足りず、令和二十七年には二万四千人が不足し、第二種も令和二十二年に約二万人の不足が見込まれる。また電気保安・監督を行う電気主任技術者についても、第二種は再生可能エネルギー設備の将来の増加等が見込まれる中で令和十二年には約千人が不足し、第三種は業務ビルの増加等で約八百人の不足が見込まれている。政府は、離職率の高い傾向にある電気工事士については、業界ルール・マニュアルの整備や、省力化のためのデジタル技術投資等の支援を進めるとし、電気主任技術者は資格取得のオンライン学習制度の創設、保守水準の維持を前提にドローン等を活用した電気設備の保守点検の効率化等を進めるとしてきたが、電気主任技術者の中には「自分の引退までに後継者を見つけたいが間に合わない」という現場もあり、不安を払拭できるような供給不足の改善が図られているとはいえない。電気設備の定期的なメンテナンスや交換工事、バブル期の建物の改修等に伴う工事や保安監督等、長期的な需要に対応していく必要があると考える。政府見解を伺う。
回答(質問3 について)
お尋ねについては、政府としては、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第二条第一項第十八号に規定する電気工作物の工事、維持及び運用に係る人材の長期にわたる確保及び育成を推進していく必要があると考えている。
質問4
建設業において、現場施工を担う多くの一人親方が免税事業者である。適格請求書等保存方式(インボイス制度)導入後の、令和五年十一月に全国建設労働組合総連合と建設経済研究所が共同実施したアンケートによれば、免税の一人親方を対象に集計した二千七百件のうち、「登録番号を取得したが、単価が据え置かれた事例」が約六十五%、「番号を取得しなかったら、本則課税の事業所から消費税分の値引きされた事例」が約三十七%ある等、税制の変更により、多くの一人親方が減収となっている実態が判明している。政府は、適正な価格転嫁に向け、年二回の価格交渉促進月間をふまえた発注企業の社名公表や、経営トップへの指導助言等に加え、令和五年十一月に「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を公表してきたが、一人親方を含めた免税事業者に対する値引きの強要や取引の排除等が行われていないか、より詳細に取引実態の把握に努める必要があるのではないか。政府見解を伺う。
回答(質問4 について)
お尋ねの「より詳細に」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、免税事業者をはじめとした中小・小規模事業者(以下「事業者等」という。)が不当な取扱いを受けないよう、事業者等の取引実態の把握に努める必要があると考えている。そのため、政府としては、事業者等に対して書面調査等を行っているところであり、今後とも、事業者等の取引実態の把握に努めてまいりたい。
質問5
インボイス制度に合わせて実施された負担軽減措置は三年間の時限措置であり、建設業の担い手不足は深刻である。業界を支える一人親方の多くが免税事業者である状況をふまえれば、同措置終了後の経営悪化、業界への悪影響が懸念される。そもそも、中小零細事業者への影響が発生しない仕組みに見直す必要があるのではないか。政府見解を伺う。
回答(質問5 について)
お尋ねの「中小零細事業者への影響が発生しない仕組み」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、仮に、お尋ねが御指摘の「免税事業者」がインボイス(消費税法(昭和六十三年法律第百八号)第五十七条の四第一項に規定する適格請求書、同条第二項に規定する適格簡易請求書等をいう。)を発行できる仕組みとすることについての政府の見解を問うものであれば、令和五年十一月十七日の衆議院外務委員会において、矢倉財務副大臣(当時)が「免税事業者のままインボイスの発行を可能とするということについては、免税事業者に対しましてもインボイスの保管等の事務負担を課すことになりまして、これは、そもそも免税事業者制度が事務負担の配慮から設けられたということを鑑みますと制度趣旨になじまないこと、また、加えまして、仕入れ税額控除を水増ししたい取引相手が免税事業者に対して高い税率、税額を記載するよう求める可能性もあり、また、免税事業者の方でもそのような記載をする誘因が働いてしまう可能性もあること、以上のことから適当ではないと考えており、消費税に相当する制度を有する諸外国においても認められていないものと承知しております。」と答弁したとおりである。