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洋上風力発電事業への国内企業の参入課題、電源開発促進税の活用等に関する質問主意書

経過状況:

答弁受理

提出者 緑川貴士
会派 立憲民主党
公式リンク 第216回国会 / 質問答弁

政府は、令和三年に閣議決定した地球温暖化対策計画において「二〇五〇年カーボンニュートラル」の実現と、令和十二年度に温室効果ガスを平成二十五年度比で四十六%の削減等を目指し、再生可能エネルギーの最大限の導入を進めることとし、第六次エネルギー基本計画において、洋上風力発電事業の「令和十二年までに十GW、令和二十二年までに三十から四十五GWの案件形成」を目標に掲げている。以下、質問する。

質問1

同基本計画の目標達成に関し、風車のタービンやブレード、タワー等の関連部材、建設の国内調達率の六割達成を目指すとしているが、国内において巨大な部材を製造する大規模工場や造船所の整備は進んでおらず、採算を考慮した場合、国内企業の参入の動きも鈍いといわざるをえない。同発電事業への投資環境や、同発電設備の製造から設置まで一貫した体制が整っている欧州と比較し、製品の競争力において不利な状況をどのように改善をはかり、目標達成に向けて取り組むのか。政府見解を伺う。

回答(質問1 について)

 御指摘の「欧州と比較し、製品の競争力において不利な状況」及びお尋ねの「目標達成」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、政府として、国内に洋上風力発電のサプライチェーンを構築していくことは、電力の安定供給の観点に加え、洋上風力産業の競争力強化の観点からも重要であると考えており、当該サプライチェーンの構築の推進に向け、「洋上風力産業ビジョン(第一次)」(令和二年十二月十五日洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会策定)において、「我が国におけるライフタイム全体での国内調達比率を二〇四〇年までに六十パーセントにする」との産業界の目標を定めているところ、産業界による同目標の実現を後押しすべく、令和六年度予算で措置されたGXサプライチェーン構築支援事業に基づく洋上風力発電設備に係る製造事業者等の設備投資に対する支援等を行っているところである。

質問2

秋田県沿岸では、いわゆる再エネ海域利用法に基づく「促進区域」として三つの区域が指定され、秋田港・能代港は同発電の基地港湾に指定されている。両基地港湾の区域内において、令和四年度に同発電の商業運転が開始され、令和十二年には同県の四つの一般海域において運転開始が予定されている他、同県沖の海域においては浮体式の実証事業も進められているところであり、同基本計画の目標を達成する上で重要な拠点に位置付けられている。同発電事業を通じて、将来にわたる関連産業の振興や港湾の利活用が図られることへの地元の期待の声がある一方、事業の主体は大手・外資系企業が中心であり、地元企業は物流や陸上工事の一部の業務にとどまる等、地元の参入機会は限られており、雇用、経済効果が十分に発揮されているとは必ずしもいえない。同発電設備の製造や設置、メンテナンス等、各工程において地元企業が参入できる仕組みを整えることが必要であると考える。政府見解を伺う。

回答(質問2 について)

 御指摘の「発電設備の製造や設置、メンテナンス等、各工程において地元企業が参入できる仕組み」については、政府として、海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(平成三十年法律第八十九号)第十三条第二項第十五号に掲げる評価の基準等についての詳細を定めた「一般海域における占用公募制度の運用指針」(令和元年六月経済産業省資源エネルギー庁及び国土交通省港湾局策定、令和四年十月改訂)において、「地域経済波及効果」等を「事業実現性に関する項目」として挙げており、公募に参加する事業者に対して、地域経済への波及が期待される計画の作成を促す仕組みとしており、同法第八条第一項の規定に基づき、経済産業大臣及び国土交通大臣が同法第二条第五項に規定する海洋再生可能エネルギー発電設備整備促進区域として指定した秋田県内の能代市、三種町及び男鹿市沖、由利本荘市沖(北側・南側)、八峰町及び能代市沖並びに男鹿市、潟上市及び秋田市沖については、いずれの選定事業者も、風力発電所の維持管理等に関して、同県内の企業と連携していく方針としていると承知している。

質問3

同県では運転管理と保守点検(O&M)拠点化に向け、発電設備のメンテナンス技術者等を育成する訓練施設が開設されている。同拠点化に取り組みつつも、長期的な視点から同発電事業の運営に直接関われる技術者等、専門人材を地元で育成するための教育・研修プログラムの導入も支援する必要があるのではないか。政府見解を伺う。

回答(質問3 について)

 洋上風力発電に係る人材の育成については、政府として、電力の安定供給の観点に加え、地域における雇用創出の観点からも重要であると考えており、経済産業省において、令和四年度予算から継続的に計上している洋上風力発電人材育成事業により、民間事業者等による風力発電設備のメンテナンス及び洋上作業に係る訓練を行うためのトレーニング施設等の整備に対する支援に加え、秋田県を含む全国の教育機関や公的研究機関等による洋上風力発電の事業開発を担う人材及びエンジニアの育成に向けたカリキュラムの開発及び実施に対する支援を行っているところである。

質問4

再生可能エネルギーで得た電力の多くは、全国規模の電力市場を通じて取引され、同県の同発電電力も都市部等の大消費地向けのものであり、電力を地元で利用する仕組みが現状ない。災害時の電力供給等の観点から「電力の地産地消」を進めることは重要であり、地域内の電力供給網の整備コストや電力市場制度との関係、地域電力の運営のあり方等、諸課題を整理した上で、同発電電力を地域内で利用できる環境を整備する必要があると考える。政府見解を伺う。

回答(質問4 について)

 御指摘の「地域内の電力供給網の整備コストや電力市場制度との関係、地域電力の運営のあり方等」の具体的に意味するところが明らかではないが、御指摘の「電力の地産地消」については、政府として、「エネルギー基本計画」(令和三年十月二十二日閣議決定)において、「地域に賦存する再生可能エネルギーの地産地消は、災害時のエネルギーの安定供給の確保や地域活性化の観点から重要である」としており、経済産業省において、市場取引等による再生可能エネルギー電気の供給の促進に関わる諸課題を検討し、令和四年四月一日施行の再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(平成二十三年法律第百八号)の改正により、同法第二条第五項に規定する認定事業者(以下「認定事業者」という。)が、再生可能エネルギー発電設備が立地する地域に電気を供給する小売電気事業者等への卸取引を含む同法第二条の二第一項に規定する市場取引等(以下「市場取引等」という。)により、同条第二項に規定する供給促進交付金の交付を受けながら再生可能エネルギー電気の供給を行うことができることとしたところである。

質問5

四に関し、東北電力グループは、カーボンニュートラルの実現に向け、東北六県及び新潟県を中心に、風力発電を主軸とした二百万kWの再生可能エネルギー開発を目指し、風力発電設備の点検・修繕のための訓練施設において作業員の育成を進めている。秋田県内では、風力発電設備の点検・修繕のための「メンテナンス訓練」を行う施設を能代火力発電所構内に、風車での高所作業などを安全に行うための「安全基礎訓練」を行う施設を秋田火力発電所構内にそれぞれ設置した。同グループは再エネ発電事業の開発から運用・保守などライフサイクル全般に関与し、再エネの導入拡大に努めるとしている。今後、洋上風力発電事業により積極的に関与することにより、電力の地産地消において重要な地域内の電力供給網を整備する等の役割を担えると考えるが、政府見解を伺う。

回答(質問5 について)

 御指摘の「地域内の電力供給網を整備する」の具体的に意味するところが明らかではないため、東北電力株式会社を主たる構成員とする東北電力グループが、お尋ねの「役割を担えると考える」か否かについてお答えすることは困難であるが、一般論として申し上げれば、認定事業者においては、小売電気事業者等への卸取引を含む市場取引等により再生可能エネルギー電気を安定的かつ効率的に供給することが期待され、また、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第二条第一項第九号に規定する一般送配電事業者においては、電気の安定的な供給に資するように、自らが維持し、及び運用する送電用及び配電用の電気工作物によりその供給区域において託送供給及び電力量調整供給等を行うことが期待されるものと考えている。

質問6

「電源立地地域対策交付金」は、発電所利益の地域還元、地元理解・協力の醸成、電力安定供給を目的とし、原子力や地熱、水力発電等の立地地域に交付されているが、洋上風力発電は対象外となっている。しかし、同発電事業の「令和二十二年までに三十から四十五GWの案件形成」を達成するためには、開発地域との共生が極めて重要であり、同交付金の制度趣旨にも合致するものである。「二〇五〇年カーボンニュートラル」の実現に向けた重要電源である洋上風力を電源立地地域対策交付金(電力移出県等交付金相当部分)の対象電源に追加する必要があるのではないか。政府見解を伺う。

回答(質問6 について)

 電源立地地域対策交付金は、電源開発促進税を財源としており、長期的に安定的な電気の供給を可能とする長期固定電源の設置促進や安全の確保などを図るためのものであるところ、現時点においては、原子力発電施設、水力発電施設、地熱発電施設等と異なり、洋上風力発電施設は、その特性上、長期的に安定的な電気の供給を可能とする長期固定電源には該当しないため、同交付金の交付対象ではないが、政府として、長期固定電源の範囲は技術革新により変わり得るため、当該交付対象とすることは将来的には検討し得るものであると考えている。

質問7

同発電開発地域の都道府県において、事業所等を有しない法人が、洋上風力発電設備等の無人の発電施設を設置している事例があるが、周辺道路の整備・維持管理や災害防止対策等の行政サービスを受けており、当該法人の事業活動と同サービスとの受益関係を正確に反映させるために、法人事業税の課税対象の見直しを図り、「事業所等を有している」とみなして分割基準の適用対象とするべきであると考える。政府見解を伺う。

回答(質問7 について)

 法人事業税は、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第七十二条の二第一項等の規定により、法人の行う事業に対し、事務所又は事業所所在の都道府県によって課される税であるところ、この「事業」とは、資本を基礎として、利益を得る目的で継続的に行う行為の結合体及び一定の技能、知識に基づいて利益を得る目的で継続的に行う業務とされており、こうした「行為」や「技能、知識」は人の存在を前提としていることから、「事務所又は事業所」の定義については、「地方税法の施行に関する取扱いについて(道府県税関係)」(平成二十二年四月一日付け総税都第十六号総務大臣通知)において、「人的及び物的設備であって、そこで継続して事業が行われる場所」としているものであり、御指摘のような無人の発電施設については、法人事業税上の事務所又は事業所として取り扱っていない。

 いずれにせよ、お尋ねの「分割基準」の在り方については、社会経済状況の変化を踏まえ、不断の検討が必要であると考えている。

質問8

秋田県男鹿市の船川港は、複数の同発電事業の実施区域に近く、秋田港、能代港の中間に位置し、両基地港湾を補完する港に位置付けられている。船川港の背後地には石材の産出拠点があること等から、風車の基礎周辺の石材等を供給する拠点としての整備に加え、今後増加が見込まれる貨物の保管庫、クルーズ船受け入れに対応するための大水深岸壁の整備、埠頭用地の確保、資材保管に対応した工業用地の確保、作業員や資材を運ぶ作業員輸送船(CTV)の係留等のO&M拠点としての整備等、様々な港湾事業が求められている。船川港の港湾機能強化を早期に果たすため、事業の優先度を考慮しながら実施の効率性を高める必要がある。政府見解を伺う。

回答(質問8 について)

 お尋ねの「事業の優先度を考慮しながら実施の効率性を高める」の意味するところが必ずしも明らかではないが、船川港については、同港の港湾管理者である秋田県が、地域産業の振興や再生可能エネルギーの導入促進に貢献する拠点としての同港の機能強化を目指し、港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)第三条の三第一項に規定する港湾計画を令和六年八月に変更したところ、同港の整備については、貨物輸送の需要の動向、事業の費用対効果等を総合的に勘案しつつ、その必要性を判断すべきものと考えている。