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消防団の訓練施設導入・処遇改善等に関する質問主意書
経過状況:答弁受理
令和六年一月の能登半島地震では、被災現場までの道路が寸断されたこと等から、警察や消防の救助隊の到着に時間がかかったケースが多く、救助を待つ間に亡くなられた方も多いとされる。被害が広範囲に及ぶ大地震で救助の手がなかなか届かないおそれもある中で、地域に密着して活動する消防団の重要性が増している。以下、質問する。
質問1
消防団員の災害現場での活動経験は勤続年数、地域によっても差があり、団員の二次被害を防ぐための訓練が不可欠であるが、日本では訓練施設が十分に整備されておらず、本格的な救助訓練が困難であることが課題となっている。同訓練を全国の消防団で実施できるよう支援することに加え、全国の自治体の消防や警察など各地で活用を進めていく必要があると考える。政府見解を伺う。
回答(質問1 について)
御指摘の「全国の自治体の消防や警察など各地で活用を進めていく」の意味するところが必ずしも明らかではないが、消防団員の訓練については、救助等の消防団の活動に必要な技能等の修得のため、消防学校の教育訓練の基準(平成十五年消防庁告示第三号)に基づき、各都道府県の消防学校等において実施されており、また各地域においても、災害を想定した各種訓練が定期的に実施されていると承知している。
消防庁においては、「消防団の力向上モデル事業」により消防団員の災害に対応する能力向上のための訓練等の取組を支援するとともに、同庁のホームページにおいて訓練方法に関する動画を公表することなどにより、消防団員の教育訓練の充実を支援しているところである。
消防団を含む消防及び警察等の関係機関の連携については、消防組織法(昭和二十二年法律第二百二十六号。以下「法」という。)第四十二条第一項において、「消防及び警察は、国民の生命、身体及び財産の保護のために相互に協力をしなければならない。」と規定されており、当該関係機関の連携が図られるよう、地方公共団体に対し助言を行ってまいりたい。
質問2
令和四年からの出動報酬への考え方の変更や支給額の増額、財源措置の改善、関連する税制運用の見直しにより、消防団員の処遇改善が図られる一方、高齢化や人口減少等により、消防団員数は令和六年四月一日時点で、全国で七十四万人余りと、十年で十一万人余りが減少した他、三十九歳以下の団員でみた場合、三十年前は全体の七割を占めていたが、令和六年は約三十五%と半減している。在団継続が必要となっている事例が増えている実情をふまえ、団員のさらなる処遇改善が必要と考える。例えば、退職報償金の支給区分に「三十五年以上在職」の区分を新たに加え、相応額を支給するべきである。また消防訓練中に団員が物損事故を起こした場合の保険負担の軽減等を図る必要があるのではないか。さらに、団員の殉職事故が発生した場合の遺族補償年金については、殉職時の在職年数や階級に応じた額となっているが、他の類似制度では存命中の総所得に配慮した額を支給することとしており、同様の制度に見直すこと等、消防団員のより広範な処遇改善を進める必要があると考える。政府見解を伺う。
回答(質問2 について)
御指摘の「退職報償金の支給区分」については、令和六年十二月二十四日に「消防団員等公務災害補償等責任共済等に関する法律施行令の一部を改正する政令」を閣議決定したところであり、この政令の制定により、消防団員等公務災害補償等責任共済等に関する法律施行令(昭和三十一年政令第三百四十六号)別表の消防団員退職報償金支払額表における勤務年数の欄に、新たに「三十五年以上」の区分を設けることとしている。
御指摘の「消防訓練中に団員が物損事故を起こした場合」については、法においては、市町村は、市町村の区域における消防を十分に果たすべき責任を有し、市町村長がこれを管理することとされており、国家賠償法(昭和二十二年法律第百二十五号)第一条第一項の規定に基づき、市町村において適切に対応しているものと考えている。
非常勤消防団員等に係る損害補償の基準を定める政令(昭和三十一年政令第三百三十五号)に基づく遺族補償年金については、消防団員の活動実績を考慮し、同令第二条第二項第一号に規定する「階級」及び「勤務年数」に応じて定められた同条第一項に規定する「補償基礎額」を基礎として支給されるものであり、御指摘の「存命中の総所得に配慮した額を支給すること」は、当該年金の性格に影響を与えることから、同令を改正することは考えていない。
消防庁としては、消防団員の確保に向けて、消防団員の処遇改善を図ることは重要であると認識しており、これまで実施してきた処遇改善に係る施策を徹底してまいりたい。
質問3
消防団員のうちの被雇用者の比率は約七割であり、企業等の雇用者側が消防団活動をどのように考えるかが、若年層の消防団員の確保に大きく影響している。消防団員を雇用している企業等は「消防団協力事業所」としての表示を当該企業等の事務所で掲げることとしている。一部の地方公共団体では、掲げた企業等で一定要件を満たす場合には税制上の特例措置を講じることで、若年団員数を確保している事例がある。同措置による財政負担の軽減を国としてはかり、同様の措置ができる地方公共団体を増やす必要があると考える。政府見解を伺う。
回答(質問3 について)
御指摘の「同措置による財政負担の軽減」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「消防団協力事業所」に対しては、各地方公共団体において、「税制上の特例措置」を含め、様々な手法で支援策が実施されており、このような好事例の周知も図りつつ、地方公共団体における支援策の更なる普及を図ることが重要であると考えている。
こうした認識の下、「消防団の更なる充実強化に向けた企業等との連携強化について(協力依頼)」(令和六年十月十五日付け消防地第五百七十八号消防庁国民保護・防災部地域防災室長通知)等により、地方公共団体に対し、消防団の活動に協力している事業所を顕彰する「消防団協力事業所表示制度」を早急に導入し、当該制度における認定を受けた企業等への支援の充実を図ることなどについて、助言を行っているところであり、引き続き、働きかけを行ってまいりたい。