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エボラウイルス等を扱うバイオセーフティレベル4施設の指定及び移転先に関する質問主意書

経過状況:

答弁受理

提出者 牧義夫
会派 立憲民主党
公式リンク 第216回国会 / 質問答弁

国立大学法人長崎大学(以下「長崎大学」という。)が実際のウイルスを用いた感染症の研究やワクチンの開発等を行うために稼働を目指す、エボラウイルスなどの病原性の高い病原体を安全に取り扱うことのできるバイオセーフティレベル4(BSL−4)施設について、厚生労働省は同施設が必要な条件を満たす「合格」の判断を行ったと報道されている。また、長崎大学がエボラウイルスなどを所持するために必要な特定一種病原体等所持者としての指定をして問題ない旨が確認されたとして、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行令(平成十年政令第四百二十号)を改正し、同大学を特定一種病原体等所持者として指定するための手続が進められていると承知している。

一方、国立感染症研究所村山庁舎(以下「村山庁舎」という。)に設置されているBSL−4施設について、施設の老朽化に伴う移転先の検討が行われている。厚生労働省は、「国立感染症研究所BSL−4施設の今後に関する検討会報告書」(令和二年十二月十一日)において、移転する場合の立地条件等に関して「厚生労働本省と近距離であることが必要」とし、また、「ワクチンや治療法の開発などの基盤・応用研究が可能である規模を有する施設であることが求められる」としている。このため、BSL−4施設が市街地に移転され、そこで病原性の高い病原体を用いた研究等が行われる可能性もある。

しかしながら、病原性の高い病原体を扱うBSL−4施設では、作業者が病原体に曝露された場合や、実験動物の逸走に伴い、病原体が施設外に流出するおそれがある。

また、長崎大学のBSL−4施設の設置計画に対しては、反対する地元住民が、国に対して、BSL−4施設の指定の差止めを求める訴訟を起こしている。加えて、村山庁舎のBSL−4施設が昭和五十六年に完成した際には、当時の厚生省が武蔵村山市に対して十分な説明を行わなかったことから、同市議会において「国立予防衛生研究所村山分室内高度安全実験室の実験開始差し止めに関する請願」が採択された等の経緯もあった。

これらのことを踏まえ、BSL−4施設の設置や移転に当たっては、地元住民の十分な理解を得ることが必須であると考え、次の事項について質問する。

質問1

我が国において、そもそもエボラウイルス等の病原性が高い病原体を用いた研究やワクチン開発を行う必要性があるのか。政府の見解を問う。

回答(質問1 について)

 お尋ねの「必要性」については、関係府省庁、国立感染症研究所、関係地方公共団体及び感染症に係る研究の専門家から構成される「感染症研究拠点の形成に関する検討委員会」が平成二十九年二月十七日に取りまとめた「高度安全実験施設(BSL4施設)を中核とした感染症研究拠点の形成について」(以下「取りまとめ」という。)において、「人の往来が盛んであるグローバル社会において、感染症は、限定的な地域での流行に留まらず、国内でのまん延、さらには国境を越えて国際社会全体への感染拡大が懸念されている。また、世界各地における森林開発、気候変動等により、動物等を媒介した感染症への感染リスクも増大している」及び「国内におけるBSL4施設を活用した基礎研究及び人材育成の必要性が我が国の研究者の間で認識されている」としているとおりであり、また、関係地方公共団体及び感染症等に係る研究等の専門家から構成される「国立感染症研究所BSL−4施設の今後に関する検討会」が令和二年十二月十一日に取りまとめた「国立感染症研究所BSL−4施設の今後に関する検討会報告書」(以下「報告書」という。)において、「世界における人、モノの往来が活発となった現在、一種病原体の国内への侵入と、これによる感染症はいつでも発生する危険性がある。また、バイオテロ病原体として一種病原体が使用される危険性もある。このような状況の中で、BSL−4施設は、(一)感染症発生時の検査診断による健康危機管理への対応(検査法の開発、疑い患者の検査実施、確定患者の随時検査、接触者等に対する病原体疫学調査、患者の退院の可否に係わる検査等)、(二)感染症対策に必要な病原体等に関する科学情報を実験等により収集分析(基礎研究)、(三)感染症の診断、治療、予防に係わる具体的な技術の研究開発(応用研究)(中略)の目的から設置は必須である」及び「新たな病原体の検査診断法の開発や精度の向上等検査診断に関連する研究、ワクチンや治療法の開発などの基盤・応用研究が可能である規模を有する施設であることが求められる」とされていると承知しており、政府としても同様に考えている。

質問2

村山庁舎のBSL−4施設の移転先について、福岡厚生労働大臣は、令和六年十月二十五日の記者会見で、村山庁舎の移転に関する行政文書開示請求に関し、「移転先の検討に関する開示請求であり、そちらは移転先候補に関する内容も含まれ、今後の検討に支障を及ぼすため、一部不開示とさせていただいている」と発言したと承知をしている。

BSL−4施設の移転先候補に関する検討の内容や具体的な候補地について、国民の知る権利、移転先の地域住民の理解、国民主権との観点から公開の必要があると考えるが、政府の見解を問う。

回答(質問2 について)

 お尋ねの「検討の内容や具体的な候補地」については、「公開」することで、今後の議論や検討に支障を来すおそれなどがあり、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)第五条第五号に掲げる不開示情報に該当するものと考えられるため、現時点で「公開」することは差し控えたい。

質問3

BSL−4施設の指定や移転先については、作業者が病原体に曝露された場合等の病原体流出のおそれや地域住民の不安解消の観点から、市街地から相当の距離を確保する必要があると考えるが、政府の見解を問う。

回答(質問3 について)

 お尋ねの「指定や移転」に当たっては、取りまとめにおいて、「立地については、世界最高水準の安全性の確保を目指した施設の管理運営を円滑に行うとともに、大学等の研究機関や感染症指定医療機関が近くに存在すること、安定的なインフラが存在すること、及び警察・消防との連携を含めたセキュリティサービスが充実していることが必要である」としているとおりであり、また、報告書においては、「厚生労働本省と近距離であることが必要である」、「特定感染症病床を有し、一類感染症(感染症法第六条第二項)を診療する機会が多いと考えられる国立国際医療研究センターと病原体の確定診断を行うBSL−4施設との距離が現行よりも遠距離にならないようにすることが望ましい」等とされていることなどを踏まえ、政府としては、御指摘のように「市街地から相当の距離を確保する必要がある」か否かについては慎重に検討すべきと考えている。いずれにせよ、「指定や移転」の検討に当たっては、御指摘の「病原体流出のおそれや地域住民の不安解消の観点」も踏まえながら、取りまとめにおいて、「BSL4施設においては、WHO指針及び主要国の規則等を参考にしながら、感染症法等に基づき、万全の安全対策を講じることが必要である」とし、また、「国際的に脅威となる感染症対策の強化のための国際連携等に関する基本戦略」(令和五年四月七日国際的に脅威となる感染症対策の強化のための国際連携等関係閣僚会議)において、「BSL4施設に関する地域とのコミュニケーションについて、国立感染症研究所が推進している研究活動の積極的な公開をモデルとして、BSL4施設のセーフティ・セキュリティの報告や村山庁舎のアウトリーチ活動に加えて、BSL4施設に係る事業成果等を積極的に発信することにより、BSL4施設運営の透明化を図っていく」等としているところ、これらに基づき適切に対応することとしている。