分かりやすい衆議院・参議院

TOP > 質問主意書・答弁書 > 原口一博:終戦直後から現在まで...

終戦直後から現在までの政府の外交における基本姿勢に関する質問主意書

経過状況:

答弁受理

提出者 原口一博
会派 立憲民主党
公式リンク 第216回国会 / 質問答弁

現在の我が国には、様々な外交上の課題が生じている。これらの諸課題に対応するための方策を検討するには、終戦直後から現在までの外交における基本姿勢について確認する必要がある。以下、質問する。

質問1

自衛隊法第七条は、「内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する。」としている。また、昭和二十七年に吉田・クラーク秘密口頭了解とよばれるいわゆる「指揮権密約」が締結され、警察予備隊が、当時、日本にあった極東軍司令部の司令官の指揮下に置かれていたとされている。この指揮権密約について、令和六年五月十六日の衆議院安全保障委員会において立憲民主党篠原豪委員の質問に対して木原防衛大臣(当時)は「米側作成のものであって、いわゆる指揮権密約については、日米間でそのような合意は成立していないというふうに承知をしております。」と答弁している。

1 いわゆる指揮権密約について、木原防衛大臣は「合意は成立していない」と答弁している。しかし、昭和二十七年七月二十三日に吉田首相とクラーク大将が指揮権密約を結んだことを示す機密文書が米国に存在していることが古関彰一獨協大学名誉教授により発見され、昭和五十六年に朝日ジャーナルにて発表されている。当該文書が存在する以上、いわゆる指揮権密約を否定することはできない。もし、政府がいわゆる指揮権密約を否定するならば、米国の認識と齟齬が生じることとなり、日米安保に重大な懸念が生じるのではないか。当該文書に記載されている吉田首相とクラーク大将の会話によればいわゆる指揮権密約が成立していることは明らかではないか。政府の見解を伺う。

2 いわゆる指揮権密約の内容とされるようなものを他国と合意する場合は、条約の国会の承認に関するいわゆる大平三原則に該当し、国会の承認が求められるべきものであると考えるが、政府の見解を伺う。

回答(質問1 及び質問2 について)

 御指摘の「「蓋」という役割」の具体的に意味するところが明らかではなく、また、御指摘の「昭和二十七年七月二十三日に吉田首相とクラーク大将が指揮権密約を結んだことを示す機密文書」及び「ディフェンス・プランニング・ガイダンス」は、米国政府が作成したとされる文書であり、その内容及びそれを前提としたお尋ねについて、我が国政府としてお答えすることは差し控えたいが、いずれにせよ、我が国の外交・安全保障政策については、例えば、令和六年四月十九日の参議院本会議において、岸田内閣総理大臣(当時)が「我が国の憲法や法律にのっとり、かつ、我が国の国益に基づき判断するものである」と答弁しているとおりである。

質問2

米国の一九九二年二月十八日付けで作成されたとされる「FY 94-99 Defense Planning Guidance Sections for Comment (U)」(以下「ディフェンス・プランニング・ガイダンス」という。)について、SNSにおいて「米国が世界を完全支配する秘密戦略であり、日本とドイツに自主防衛能力を持たせない戦略」と指摘するものがある。政府としては、ディフェンス・プランニング・ガイダンスの内容について、日本に自主防衛能力を持たせない戦略であるとの認識はあるのか。また、ディフェンス・プランニング・ガイダンスは、「冷戦後に新たな大国出現を防ぐ方針」であるとも報じられた。その内容として、ソ連崩壊後、唯一の超大国となった米国は新たに対抗する大国の出現を防ぐこと、この目的のために挑戦者を受け付けないほどの巨大な軍事力と建設的な力を保持すること等があり、さらに、核兵器や生物化学兵器など大量破壊兵器を持つ国に対しては先制攻撃もありうるとしていたこと等であったとされる。ディフェンス・プランニング・ガイダンスは、厳しい批判を受けて内容を後退させた上で公表されたものの、その後のクリントン政権には無視されたと評価されている。政府としては、ディフェンス・プランニング・ガイダンスに沿った施策を現在に至るまで実施してきたのか。同盟国である米国が「唯一の超大国」としてふるまうことができるよう、我が国が中国を封じ込める「蓋」という役割を担ってきたのか。政府の見解を伺う。

回答(質問1 及び質問2 について)

 御指摘の「「蓋」という役割」の具体的に意味するところが明らかではなく、また、御指摘の「昭和二十七年七月二十三日に吉田首相とクラーク大将が指揮権密約を結んだことを示す機密文書」及び「ディフェンス・プランニング・ガイダンス」は、米国政府が作成したとされる文書であり、その内容及びそれを前提としたお尋ねについて、我が国政府としてお答えすることは差し控えたいが、いずれにせよ、我が国の外交・安全保障政策については、例えば、令和六年四月十九日の参議院本会議において、岸田内閣総理大臣(当時)が「我が国の憲法や法律にのっとり、かつ、我が国の国益に基づき判断するものである」と答弁しているとおりである。

質問3

報道によると、本年七月四日に護衛艦「すずつき」が中国浙江省沖の中国領海を一時航行し、中国側から退去勧告を受けたとされている。中国側の抗議に対して、日本側は技術的なミスであったと釈明したとされている。この報道は、事実か。政府の見解を伺う。

回答(質問3 について)

 お尋ねについては、自衛隊の運用に影響を及ぼすおそれがあることから、お答えすることは差し控えたい。

質問4

国連憲章のいわゆる「旧敵国条項」について、政府は、「衆議院議員神津たけし君提出国連憲章におけるいわゆる「旧敵国条項」に関する質問に対する答弁書」(内閣衆質二一三第一九九号)において「我が国としては、いかなる国においても、御指摘の「旧敵国条項」を援用する余地はないと考えている。」と答弁している。しかし、報道によれば、ロシアのラブロフ外務大臣が北方領土に関して旧敵国条項に言及したとされる。また、中国の楊外務大臣(当時)は尖閣が「第二次世界大戦の結果、中国に返還された」との前提で日本を糾弾し、国連憲章に言及した背景には「旧敵国条項」の存在があるとする有識者の指摘も報じられている。政府は、ロシアや中国政府の高官が「旧敵国条項」へ言及した事実を承知しているか。「いかなる国においても・・・援用する余地はない」と断言できる根拠を示されたい。「旧敵国条項」は失効したということか。政府の見解を伺う。

回答(質問4 について)

 御指摘の「ロシアや中国政府の高官が「旧敵国条項」へ言及した事実」の意味するところが明らかではないため、「承知しているか」とのお尋ねについてお答えすることは困難である。また、「失効したということか」とのお尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、お尋ねの「断言できる根拠」については、例えば、令和四年四月十九日の参議院外交防衛委員会において、林外務大臣(当時)が、「九五年の総会で、この国連総会決議として既に死文化しているという認識を示す決議、百五十五か国、全ての常任理事国を含んで賛成を入れて採択をされております。二〇〇五年の国連首脳会合でも、国連憲章から敵国への言及を削除するという全加盟国首脳の決意を示す成果文書がコンセンサスで採択をされております。したがって、いかなる国も旧敵国条項を援用する余地はもはやないと考えております。」と答弁しているとおりである。

質問5

政府は、「衆議院議員原口一博君提出イスラエル及びガザ情勢に対する我が国の姿勢に関する質問に対する答弁書」(内閣衆質二一三第三一号)において、イスラエルがガザ地区において実施している各種の行動について、ジェノサイドに該当するのか明らかに答弁しなかった。政府は、イスラエルがジェノサイドに該当する行為を行っていないと判断するのか。米国は、「集団殺害の疑い」で国際司法裁判所に提訴されたイスラエルに対して、武器の提供等の支援を行っている。報道によると、米国政府が本年五月十日に連邦議会に提出した報告書の中でイスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区での戦闘で、米国から供与された武器を国際人道法に違反して使用した可能性があると発表したとされている。イスラエルが武器を国際人道法に違反して使用した可能性があることを承知しながら、なお、イスラエルに対して武器を支援し続ける米国は、我が国の同盟国としてふさわしいと考えているのか。政府の見解を伺う。また、政府は、イスラエル製の無人攻撃機の購入を検討していることが報じられている。イスラエル製の武器の購入は、イスラエルによるガザ地区における行動を支援する結果となるとの指摘もある。イスラエル製の無人攻撃機の購入は、ガザ地区におけるイスラエルによる武力行使を促進するのではないか。政府の見解を伺う。

回答(質問5 について)

 今般のイスラエルによる行動については、事実関係の十分な把握が困難であり、我が国として、前段のお尋ねについて、確定的に評価することは困難であるが、いずれにせよ、我が国としては、当事者による全ての行動は、いかなる場合でも、国際人道法を含む国際法に従って行われなければならないものと考えており、イスラエルがハマス等のテロ攻撃に対し、自国及び自国民を守る権利を行使するに当たって、国際人道法を含む国際法を遵守するよう同国に求めてきているところである。

 中段のお尋ねについては、お尋ねの「我が国の同盟国としてふさわしい」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

 後段のお尋ねについては、個別の報道の内容を前提とするものであり、政府としてお答えすることは差し控えたい。

質問6

政府は、「衆議院議員原口一博君提出米国による広島、長崎への原爆投下及び拡大核抑止等に関する質問に対する答弁書」(内閣衆質二一三第三二号)において、「「七つの非核兵器地帯(以下、「非核地帯」という。)」の意味するところが必ずしも明らかではないが、北東アジアにおいては、非核地帯は設置されていないものと認識している。」と答弁している。「七つの非核兵器地帯」について「意味するところが必ずしも明らかではない」としつつ「北東アジアにおいては、非核地帯は設置されていない」としているということは、他の地域には非核地帯が設置されていると認識しているのか。政府は非核地帯が設置されている箇所について、どの地域であり、いくつあると考えているのか。政府の見解を伺う。

回答(質問6 について)

 お尋ねについては、政府として、現時点では、中南米、大洋州、東南アジア、アフリカ及び中央アジアにおいて、御指摘の「非核地帯」の設置に関する条約が締結されており、また、モンゴルが自国の領域を御指摘の「非核地帯」とすることを宣言していると承知している。

質問7

政府は、「衆議院議員原口一博君提出米国による広島、長崎への原爆投下及び「非核の傘」に関する質問に対する答弁書」(内閣衆質二一二第二八号)において、「先の大戦後に、広島及び長崎に対する原子爆弾の投下について米国政府に直接抗議を行ったことは確認されていない。」と答弁している。核兵器の使用は、国際法違反であり、人道に対する犯罪に該当するのではないか。今からでも米国に対して、核兵器の使用を抗議すべきではないか。政府の見解を伺う。また、抗議をしない場合には、その理由について、政府の見解を伺う。

回答(質問7 について)

 お尋ねについては、先の答弁書(令和五年十一月二十日内閣衆質二一二第二八号)一の1の(一)について及び一の1の(二)についてでお答えしたとおりである。

質問8

米国による昭和二十年八月六日及び九日の原子爆弾の投下について、米国による「人体実験」であったとの指摘がある。その理由としては、米国は、被爆者に対する調査を行い、医療調査の研究成果を米国に持ち帰る一方で、被爆者に対する救援はほとんどされなかったことが挙げられる。米国の救援について、椎名麻紗枝弁護士によれば、昭和二十年九月八日に六機の飛行機で広島に医薬品を運んだことが唯一の米国の救援であるとされている。また、当時、国際赤十字駐日代表を務めておられたマルセルジュノー博士が同日、国際救援を要請するため赤十字国際委員会に電報を打とうとしたが占領軍によって日本政府が救援を拒否しているとの口実で打電を妨害されたとされている。政府は、被爆者に対する米国による救援として、椎名弁護士が挙げる事例について把握しているか。また、他に被爆者に対する米国による救援の事例を把握しているか。他の事例を把握しているならば、その事例を紹介するとともに、政府の見解を示されたい。

回答(質問8 について)

 お尋ねの「被爆者に対する米国による救援」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、現時点で確認できる範囲では、当時の具体的な状況を確認できる資料が存在しないため、お尋ねの「椎名弁護士が挙げる事例」の存否及び「他の事例」について確定的に述べることは困難である。

質問9

政府は、日・ウクライナ経済復興推進会議等において、ウクライナに対する巨額の支援を実施することを表明している。しかし、ウクライナ支援ではなく、能登半島地震への対応等の国内問題への対応を優先すべきとの声は大きい。政府としては、ウクライナに対して巨額の支援を行う理由と支援するとされる額の積算根拠を国民に明確に説明すべきではないか。また、ウクライナに対する支援は、どこにどのくらいの額が支援として送られたのか開示すべきである。ウクライナへの支援が着服・横領されているとの報道もある。我が国の支援が確実に役立てられているのか政府は確認しているか。政府の見解を伺う。

回答(質問9 について)

 御指摘の「支援を行う理由」については、例えば、令和五年三月二十四日の衆議院本会議において、岸田内閣総理大臣(当時)が「ロシアのウクライナ侵略は、国際社会が長きにわたる懸命な努力と多くの犠牲の上に築き上げてきた国際秩序の根幹を脅かす暴挙です。国連憲章を始めとする国際法の諸原則の違反であるとともに、法の支配に基づく国際秩序に対する明白な挑戦でもあります。(中略)一刻も早くロシアの侵略を止めるため、G7議長国として、国際社会と緊密に連携しつつ、引き続き、対ロ制裁とウクライナ支援を強力に推進してまいりたいと考えております」と答弁するなど明確に説明してきており、また、御指摘の「積算根拠」及び「どこにどのくらいの額が支援として送られたのか」についても、外務省報道発表の発出、外務省のウェブサイトによる情報発信、国会の議論等を通じて、国民に分かりやすい形での情報提供に努めているところである。

 御指摘の「我が国の支援が確実に役立てられているのか」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねの「政府は確認しているか」については、我が国からウクライナに対して実施する支援が所期の目的を達成するように、引き続き同国政府を始めとした関係機関と密接に連携してまいりたい。

質問10

岸田総理(当時)は、本年八月九日から予定されていた中央アジア訪問を直前に取りやめた。訪問国では岸田総理の訪問に備えて様々な準備をしていたはずであり、突然のキャンセルは相手国との関係を著しく損なうのではないか。岸田政権において、岸田総理の訪問が予定されていながら、直前にキャンセルとなった事例は、いくつあるのか。キャンセルの回数と訪問の何日前にキャンセルとなったのか、示されたい。また、今回の岸田総理の中央アジア訪問の中止は、SNSでは、日本の中央アジアとの経済的協力と連携は好ましいものではないと考えた米国の意向を受けたエマニュエル駐日米国大使の要請に従ったものであるとの趣旨の風説がある。このような風説が指摘するような事実はあったのか。政府の見解を伺う。

回答(質問10 について)

 御指摘の「キャンセル」及び「相手国との関係を著しく損なう」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、岸田内閣総理大臣(当時)は、令和六年八月九日から十二日までの日程で、「中央アジア+日本」対話・首脳会合への出席並びにカザフスタン、ウズベキスタン及びモンゴルへの訪問を予定していたところ、同月八日に宮崎県沖で発生した地震を受けた危機管理及び災害対応のために当該出席及び訪問を延期したものであるが、同月九日から十三日までにかけて行われた中央アジア五箇国及びモンゴルとの首脳電話会談において、当該危機管理及び災害対応のために当該出席及び訪問を延期するとの判断を行ったことを説明し、各国首脳から、この判断について理解を得たものである。

 また、同内閣総理大臣の海外出張のうち、出張についての閣議了解を行った後に取りやめ又は延期した事例は、出席及び訪問の当日に延期を発表した上述の一件である。

 御指摘の「風説」を前提としたお尋ねについて、政府としてお答えすることは差し控えたい。