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国際協力銀行・日本貿易保険が金融支援中のモザンビーク液化天然ガス事業等に関する質問主意書

経過状況:

答弁受理

提出者 阪口直人
会派 れいわ新選組
公式リンク 第216回国会 / 質問答弁

日本の公的金融機関である国際協力銀行(JBIC)および日本貿易保険(NEXI)が二〇二〇年七月に金融支援を決定したモザンビーク液化天然ガス(LNG)事業(以下「当該事業」という。)は、海洋ガス田を開発しLNGを輸出し、また陸上でLNG発電所を建設・運営する事業である。生産されるLNGの約三割が日本に輸出される。なお、当該事業は、二〇二一年から現地の治安が悪化しているため、主要事業者であるトタルエナジーズ・ㇽブリカンツ・ジャパン株式会社が不可抗力を宣言し、建設が一時中断している。

当該事業は、周辺住民への深刻な人権侵害が疑われているとともに、海洋汚染、漁業者や農業従事者の生計手段への悪影響、同生計手段の喪失等に対する不十分な補償が懸念され、パリ協定に基づく気候変動対策にも矛盾する。

以下、具体的に質問する。

質問1

トタルエナジーズはモザンビーク軍の統合任務部隊に装備や金銭的補償を最近まで直接提供していた。二〇二四年九月二十六日にニュースサイト・ポリティコに発表された調査報道記事「All must be beheaded」によると、モザンビーク軍が住民に対し虐殺をはたらいた可能性を指摘している。さらに二〇二四年十一月二十四日に発表されたル・モンド紙およびSource Materialの調査「?Don't look back or we'll shoot?」では、情報開示請求によって公開された「Mozambique LNG ENVIRONMENTAL and SOCIAL REPORT」と題された書類等をもとに、トタルエナジーズが統合任務部隊による別の人権侵害行為を複数把握していたことが示されている。JBICが「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」(二〇一五年一月制定版)上、環境社会配慮確認等に関し、適合を確認すると規定している国際金融公社(IFC)のパフォーマンススタンダード四「地域社会の衛生・安全・保安」では、パラグラフ十二〜十四で警備要員について規定しており、顧客はセキュリティアレンジメントが事業地内および周辺に及ぼすリスクを評価すること、警備に従事する者が過去に権力乱用などに関与していないかどうか確認を行うこと、火器等利用に対して十分なトレーニングを提供することなどが要件とされている。さらに、警備要員による違法行為または虐待行為の申立てがある場合、必要に応じて調査し、再発を防止するための措置を講じ(または適切な関係者に措置を講じるよう促し)、違法行為および虐待行為を公的機関に報告することが要件とされている。本要件における警備要員とは、事業者と契約関係にあるもの、そして政府のセキュリティ担当者にも該当するため、モザンビーク軍および警察により構成されている統合任務部隊も適用の対象となる。当該事業は、パフォーマンススタンダード四の警備要員に係る規定に違反すると考えるが、政府の見解を示されたい。

回答(質問1 について)

 御指摘の「モザンビーク軍が住民に対し虐殺をはたらいた」ことや「トタルエナジーズが統合任務部隊による別の人権侵害行為を複数把握していた」ことについては、現時点でその事実関係を確認できておらず、これを前提としたお尋ねについてお答えすることは困難である。

質問2

二〇二四年十月七日、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)はイタリアのメジャー石油企業の一つであるENI S.p.A.とガスセキュリティ強化及びLNG供給・調達多角化に向けた協力覚書を締結した。JOGMECのプレスリリースには「今回のENIとの協力は、ENIによる日本へのLNG供給機会や、モザンビークのコーラル・ノース・プロジェクトに対する日本の金融機関の支援を含む、平常時におけるガス安定供給の向上や突発的なLNGの供給途絶事態への対応を念頭に置いたもので、日本の政策実施機関であるJOGMECと、LNGの安定供給に取り組んできたENIとの相互支援に向けた対話を加速させるものとなります。」とある。一方、二〇二二年六月に取りまとめられたG7エルマウ首脳コミュニケ内において、「国家安全保障及び地政学的利益の重要性を認識し、我々は、各国が明確に規定する、地球温暖化に関する摂氏一・五度目標やパリ協定の目標に整合的である限られた状況以外において、排出削減対策が講じられていない国際的な化石燃料エネルギー部門への新規の公的直接支援の二〇二二年末までの終了にコミットする」ことが盛り込まれた。コーラル・ノース・プロジェクトへの公的金融機関による支援はG7の合意違反と考えるが、政府の見解を示されたい。違反ではないとする場合、その根拠も示されたい。

回答(質問2 について)

 御指摘のプロジェクトを含め、海外における化石燃料の開発プロジェクトに対する公的支援が、令和四年六月に開催されたG7エルマウ・サミットの機会に作成された「G7首脳コミュニケ」に整合的であるか否かについては、当該支援を行う機関からの照会に対して、政府として、令和五年七月三日に経済産業省が同省のウェブサイトにおいて公表した「G7エルマウ首脳コミュニケを踏まえた我が国の海外化石燃料案件に対する公的金融支援の方向性について」において示した考え方に基づき判断することとしているところ、御指摘のプロジェクトに対する公的支援が「G7首脳コミュニケ」に整合的であるか否かについては、現時点において、当該支援を行う機関からの照会が行われておらず、政府として、お尋ねの「見解」をお答えすることは差し控えたい。