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医薬品濫用防止対策と六年制薬学部の存立の意義に関する質問主意書
経過状況:答弁受理
医薬品濫用防止の観点から一般用医薬品である「咳止め薬」や「風邪薬」の一部について販売個数の制限がされていると聞く。医薬品濫用防止は重要な政策課題であり、この措置自体について批判をするものではないが、市井における運用実態について薬剤師の臨床判断能力や販売区分などを鑑みるに、いささか乱暴な運用とみゆる例が散見された。具体的には、一部のチェーン・ドラッグストアなどで生活者の状況などを鑑みることなく、一律に販売個数を制限する事例を確認したので、薬学部六年制年限延長及び第二類医薬品という販売区分の整合性という観点から以下質問するものである。あまつさえ、令和六年七月に政府が創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議(以下、創薬力構想会議)の中間とりまとめを踏まえた政策目標の一つとして、薬学部・薬系大学院修了者のうち、創薬関連の仕事・研究等に就く人材の更なる増加を成果指標に打ち出したこともあり、六年制薬学部のカリキュラムが臨床薬学から基礎薬学に回帰するのではないかと驚きをもって受け止められている昨今の状況にあって、薬学部卒業生の多くが就職するであろうチェーン・ドラッグストアにおいて、薬学部において培われたと考えられる臨床判断能力という専門性を無視した運用がされていることには憤りすら感じざるを得ず、以下、政府においては、現在、薬学部にて学業に専念する薬学生とその父兄への配慮を含めた答弁をするよう強く求めるものである。
質問1
濫用のおそれのある医薬品の規制については、厚生労働省が厚生労働省告示にて、具体的な成分(以下、当該成分)を示し、適正な使用のために必要と認められる数量、具体的には、一人一包装単位に販売を制限している。しかし、いわゆる医薬品医療機器等法施行規則によれば、適正な使用のために必要と認められる数量を超える数量を求められた場合には、薬剤師及び登録販売者がその理由を確認した上で販売することを禁止してはいないとみゆる。たとえば、海外在住者、長期海外出張者や離島居住者などが、備蓄等を理由にして購入したいなど必要に迫られて購入したい場合なども、令和五年二月八日に発出された薬生発〇二〇八第一号通知の示す「一人一包装単位」での販売しか認めないのか政府の見解を明らかにされたい。
回答(質問1 について)
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和三十六年厚生省令第一号)第十五条の二に規定する濫用等のおそれのある医薬品(以下「濫用等のおそれのある医薬品」という。)については、同条等の規定、「薬事法及び薬剤師法の一部を改正する法律等の施行等について」(平成二十六年三月十日付け薬食発〇三一〇第一号厚生労働省医薬食品局長通知)、「「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則第十五条の二の規定に基づき濫用等のおそれのあるものとして厚生労働大臣が指定する医薬品」の改正について」(令和五年二月八日付け薬生発〇二〇八第一号厚生労働省医薬・生活衛生局長通知)等に基づき、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号。以下「法」という。)第一条の四に規定する薬局開設者、法第二十七条に規定する店舗販売業者又は法第三十一条に規定する配置販売業者(以下「薬局開設者等」という。)は、当該濫用等のおそれのある医薬品を購入し、又は譲り受けようとする者が、原則とする「一人一包装単位」を超えて購入し、又は譲り受けようとする場合について、薬局や店舗等において、薬剤師又は法第四条第五項第一号に規定する登録販売者に、その理由を確認させた上で、当該薬剤師又は登録販売者が、その理由を勘案し、適正な使用のために必要と認める場合には、その必要と認める数量に限り、販売し、又は授与することとしているところであり、お尋ねの「海外在住者、長期海外出張者や離島居住者などが、備蓄等を理由にして購入したいなど必要に迫られて購入したい場合」については、御指摘のように「「一人一包装単位」での販売しか認めない」ものではない。
なお、厚生労働省においては、濫用等のおそれのある医薬品の販売の実態について、「医薬品販売制度実態把握調査」により把握に努めており、当該調査の結果を踏まえ、各地方公共団体、関係団体等と連携し、濫用等のおそれのある医薬品が適正に販売されるよう薬局開設者等に対して法令遵守の徹底を求めているところであり、引き続き、薬局開設者等において法令遵守の徹底が図られるよう必要な取組を進めてまいりたい。
質問2
少なくとも専門教育を受けている薬剤師については、右に示したような特殊な事例などを含む適正な使用のために必要と認められる数量なども判断できるものと考えるが、何故に一律に一人一包装単位などとご丁寧な基準を定むるのか理解しかねるものである。政府は、平成十四年九月二十四日文部科学省に設置された「薬学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」の最終報告(平成十六年二月十二日:以下、先の最終報告)において薬剤師養成課程である薬学部を六年に延長する理由として、「医療技術や医薬品の創製・使用における科学技術の進歩、医薬分業の進展など、薬学をめぐる状況が大きく変化してきている中、薬剤師を目指す学生には、基礎的な知識・技術はもとより、豊かな人間性、高い倫理観、医療人としての教養、課題発見能力・問題解決能力、現場で通用する実践力を身につけることが求められている」こと、「このため、各大学において教養教育を充実しつつ、モデル・コアカリキュラムに基づく教育を進めるとともに、特に臨床の現場において相当期間の実務実習を行うなど、実学としての医療薬学を十分に学ばせる必要がある」こと、「各大学がモデル・コアカリキュラムに基づく教育に加えて、それぞれの個性・特色に応じたカリキュラムを編成することも必要である」こと、「こういった様々な要請に応えるには、薬学教育の現状の修業年限(四年間)は薬剤師養成には十分な期間とは言えず、今後は、六年間の教育が必要である」ことと述べている。つまり臨床の現場において通用する医療薬学を学んだ薬剤師を輩出できるような改革がなされたと承知する。このように臨床現場において専門職としての対応能力を訓練された薬剤師であっても、右の事例のような適正な販売個数について判断できないと政府が考えているのか明らかにされたい。また、できないというのであれば、薬学部を六年制にした意味について国民に分かりやすく説明することを望むものであるが、政府の見解を明らかにされたい。
回答(質問2 について)
一についてでお答えしたとおりであり、お尋ねのように「薬剤師であっても、右の事例のような適正な販売個数について判断できないと政府が考えている」わけではない。
質問3
右の質問に対して六年制薬学部を卒業した薬剤師であっても「適正な販売個数について判断できない」と国が判断しているのであれば、高額な学費を六年も支払わせる六年制をやめ、四年制に戻すことを検討してみてはいかがかと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
回答(質問3 について)
一についてでお答えしたとおりであり、御指摘のように「六年制薬学部を卒業した薬剤師であっても「適正な販売個数について判断できない」と国が判断している」わけではなく、お尋ねのように「六年制をやめ、四年制に戻すことを検討」することは考えていない。
質問4
当該成分が含有された医薬品の多くは第二類医薬品に分類され、登録販売者が販売できると理解している。つまり、第二類医薬品に分類されているゆえに、必ずしも薬剤師が販売に関与するとは限らない。このように販売時に必ずしも専門職たる薬剤師が関与しないゆえに、個数制限として一人一包装単位としたというのであれば、薬剤師のみが販売に関与することが決められた第一類医薬品に分類すればよいだけであると考える。しかし、政府が分類しているのは第二類医薬品であり、そもそも専門家の関与を強く求めていない。もし医薬品濫用を真に問題とするのであれば、もとより第二類医薬品に区分すること自体が矛盾であると考える。そこで質問するが、政府は何故に濫用のおそれのある医薬品を高度な専門教育を受けた薬剤師が関与せず、あたら簡便に購入ができることが前提となる第二類医薬品に分類したのか明らかにされたい。併せて、第一類医薬品など薬剤師が管理することを前提とした医薬品に再分類することを何故に検討しないのかも明らかにされたい。
回答(質問4 について)
一についてでお答えしたとおり、御指摘のように「販売時に必ずしも専門職たる薬剤師が関与しないゆえに、個数制限として一人一包装単位とした」わけではなく、また、法第四条第五項第四号に規定する一般用医薬品の区分については、法第三十六条の七第一項の規定により、その副作用等により日常生活に支障を来す程度の健康被害が生ずるおそれがあるか、さらに、その使用に関し特に注意が必要なものであるか等を勘案して指定されるものであり、御指摘の「濫用のおそれ」を基準とした区分ではないことから、御指摘のように「濫用のおそれのある医薬品を高度な専門教育を受けた薬剤師が関与せず、あたら簡便に購入ができることが前提となる第二類医薬品に分類した」ものでもなく、これらのことを前提としたお尋ねにお答えすることは困難である。
質問5
冒頭に述べた創薬力構想会議の中間とりまとめを踏まえた政策目標にある「薬学部・薬系大学院修了者のうち、創薬関連の仕事・研究等に就く人材の更なる増加」について政府の真意を問うが、此処に記載のある薬学部・薬系大学というのは、中央教育審議会の「薬学教育の改善・充実について(答申)」(平成十六年二月十八日)にある「四年制学部・学科においては、基礎薬学を中心とした薬学の一般的な知識を修得させた上で、特に、知的集約産業である創薬分野における我が国の国際競争力の強化を図る、という観点から、薬学の研究者を目指す者に対しては、近年の学問の発達に対応し、生命薬学など薬学の基礎研究に関連するカリキュラムの充実が行われることが必要である。」との文言を参考にするのであれば、四年制薬学部のことを指すと考えるが政府の見解を明らかにされたい。
回答(質問5 及び質問6 について)
お尋ねについては、御指摘の「四年制薬学部」又は「六年制薬学部」のいずれか一方「のことを指す」わけではない。
質問6
右の質問に関連し、よもや六年制薬学部のことを指すとは考えられないが、仮に六年制薬学部から薬学研究者を輩出することを目標としたとするのであれば、四年制薬学部の存続は無意味であったと政府は考えているのか明らかにされたい。
回答(質問5 及び質問6 について)
お尋ねについては、御指摘の「四年制薬学部」又は「六年制薬学部」のいずれか一方「のことを指す」わけではない。
質問7
併せて、六年制薬学部の臨床教育の必要性と充実を謳った先の最終報告の文脈から鑑みて、薬学研究者を生み出すために、六年制薬学部のコアカリキュラムにいまさら創薬の基本となる基礎薬学を組み込むことは、あまつさえ学業に忙しい六年制薬学生にとって迷惑千万な話であると思われる。薬学部を六年制に年限延長したときの約束は、あくまでも臨床に長けた薬剤師の養成であったことを考えれば、六年制薬学部の卒業生をして薬学研究者に養成するといった政策目標は国民への裏切りにも通じる政策変更であり、政府にあっては国民にもわかりやすいように弁明をするべきものと考える。政府の真摯な説明を求める。
回答(質問7 について)
御指摘の「六年制薬学部」においては従前から、「基礎薬学」も学修することとされており、御指摘のように「六年制薬学部のコアカリキュラムにいまさら創薬の基本となる基礎薬学を組み込む」わけではなく、また、「六年制薬学部の卒業生をして薬学研究者」の「養成」も行っており、御指摘の「政策変更」を行うものでもなく、「弁明をするべき」とは考えていない。なお、「「創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議」中間とりまとめを踏まえた政策目標と工程表」(令和六年七月内閣官房健康・医療戦略室)において、「次期薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和八年度から検討開始予定)改訂に向けて、創薬につながる薬学人材養成のための教育内容について検討」としており、これを踏まえて適切に対応してまいりたい。