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クロマグロの漁獲枠拡大に関する質問主意書

経過状況:

答弁受理

提出者 井坂信彦
会派 立憲民主党
公式リンク 第216回国会 / 質問答弁

二〇二四年十一月から十二月にかけて、太平洋でのクロマグロの資源管理を話し合う国際会議「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」第二十一回年次会合が、南太平洋のフィジーで開かれた。

報道によると、太平洋でのクロマグロの親魚の資源量は、一九六〇年代には十万トン以上あったが、その後は減少している。推計方法の変更で単純比較はできないものの、二〇一〇年には一万二千トン余りまで落ち込んでいた。こうした中で国や地域ごとの漁獲枠を決めるなど規制を強化した結果、資源量は回復基調となってきていた。二〇二二年の資源量は、目標としていた十二万五千トンを上回る十四万四千トンにまで増えているという。

二〇一六年には、日本の水産物を取り扱う六つの事業者が連名で「太平洋クロマグロ保全の誓い」を発表した。二〇一五年に持続可能な開発目標(SDGs)が国際連合で採択され、水産資源の持続可能性を高める取組がスタートし、目に見える成果を上げたものといえる。

こうした状況を受けてWCPFCは、日本の近海を含む中西部太平洋での大型クロマグロの来年の漁獲枠を、これまでの一・五倍に増やすことで合意した。また三十キロ未満の小型クロマグロは今より十%増やすことで合意した。これにより二〇二五年一月から二〇二六年三月までに日本が漁獲できるクロマグロは、大型が二千八百トン余り増えて八千四百二十一トンに、小型が四百トン増えて四千四百七トンになる。

二〇一四年に小型のクロマグロの漁獲枠が設けられて以降初めて枠が拡大することから、以下、政府の見解を伺う。

質問1

太平洋のクロマグロは、目標を上回る資源量にまで回復した。クロマグロは海の食物連鎖の頂点とも言われているが、増えすぎることで他の魚介類の生態系への影響は考えられるか、政府の見解を伺う。

回答(質問1 について)

 御指摘の「増えすぎること」及び「他の魚介類の生態系への影響」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、国立研究開発法人水産研究・教育機構において実施しているくろまぐろの食性に関する調査においては、これまでのところ、くろまぐろが捕食している魚介類の資源量に与える影響を明らかに示すデータは得られていないと承知している。

質問2

二〇一〇年代には多くの環境保護団体から、クロマグロの漁獲枠の削減量が十分でないと非難があった。今回の漁獲枠の拡大に対し、環境保護団体による反応はどのようなものか。政府の知るところを伺う。

回答(質問2 について)

 御指摘の「環境保護団体」が具体的に何を指すのか必ずしも明らかではないが、例えば、公益財団法人世界自然保護基金ジャパンは、令和六年七月に開催された中西部太平洋まぐろ類委員会北小委員会がくろまぐろの漁獲量の上限を引き上げることについての勧告を行ったこと等について、「「ネイチャー・ポジティブの好事例」として歓迎」、「今回の事例は、科学に基づいた資源管理をしっかり行えば水産資源は回復するという一つの証」との声明を出しており、また、例年中西部太平洋まぐろ類委員会の年次会合にオブザーバーとして参加している米国のThe Pew Charitable Trusts及びThe Ocean Foundationは、同年十一月から十二月にかけて開催された同会合において、「we continue to express concern about significant increases in Pacific bluefin tuna catch limits based on stock assessments that do not consider a wide range of uncertainty」との共同声明を出していると承知している。

質問3

日本以外の国や地域においても漁獲枠の拡大がされると考えられるが、クロマグロ資源量の持続可能性について政府の見解を伺う。

回答(質問3 について)

 北太平洋まぐろ類国際科学委員会が中西部太平洋まぐろ類委員会北小委員会に提出し議論された今後のくろまぐろの資源状況の予測においては、令和六年十一月から十二月にかけて開催された中西部太平洋まぐろ類委員会年次会合において中西部太平洋まぐろ類委員会北小委員会の勧告を受けて決定された中西部太平洋におけるくろまぐろの漁獲量の上限を上回る量を漁獲した場合であっても、くろまぐろの資源の回復が続くことが示されていると承知していることから、御指摘の「クロマグロ資源量の持続可能性」の確保に支障を及ぼすおそれは低いものと考えている。

質問4

拡大された漁獲枠について、誰がその漁獲枠を利用するのか。全事業者に等しく分配するのか、大手事業者よりも中小規模事業者を優先するのかなど、政府の見解を伺う。

回答(質問4 について)

 令和七年以降のくろまぐろの漁獲可能量(漁業法(昭和二十四年法律第二百六十七号)第十五条第一項第一号により、農林水産大臣が資源管理基本方針(同法第十一条第一項に規定する資源管理基本方針をいう。)に即して、同条第二項第三号に規定する特定水産資源及びその管理年度ごとに定める数量をいう。)のうち、都道府県に配分する数量及び同大臣が漁獲量の管理を行うために設定する区分に配分する数量については、水産政策審議会資源管理分科会において令和六年十二月十一日に改正された「くろまぐろの漁獲可能量の配分の考え方について」において「放流等の混獲回避を行うなど漁獲枠管理の負担の大きい漁業者や獲り控えた都道府県、漁業等に対して配慮する」、特に大型のくろまぐろについては「合意が得られた増枠相当分の数量(二千八百七トン)」は「都道府県に配慮して配分する」等とされており、同月十三日、これらに従い同大臣が決定したところである。

質問5

現在、クロマグロを一般人が釣った場合(遊漁)、三十キロ以上のものは一人一日一尾まで取得することができ、その重量や海域等を水産庁へ報告する義務がある。また三十キロ未満のものはリリースしなければならない。このクロマグロの遊漁に関する規制を見直すことは考えているか、政府の見解を伺う。

回答(質問5 について)

 遊漁(漁港及び漁場の整備等に関する法律(昭和二十五年法律第百三十七号)第四条の二第二号に規定する遊漁をいう。以下同じ。)を行う者によるくろまぐろの採捕については、漁業法第百五十二条第一項に基づき設置される広域漁業調整委員会が同法第百二十一条第一項に基づき行う指示(以下単に「指示」という。)に基づき、その数量の管理をしているところである。今後の指示やくろまぐろの遊漁の管理の在り方については、広域漁業調整委員会の下に設置された「くろまぐろ遊漁専門部会」において、現在、審議されているところである。