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クマ被害の軽減とハンター支援に関する質問主意書

経過状況:

答弁受理

提出者 井坂信彦
会派 立憲民主党
公式リンク 第216回国会 / 質問答弁

令和六年二月八日、環境省のクマ類保護及び管理に関する検討会によって、クマ類による被害防止に向けた対策方針が定められた。その中で、クマ類の生息状況として、平成十五年度と三十年度の分布域の比較で、ヒグマは約一・三倍、ツキノワグマは約一・四倍に拡大などと述べている。令和五年度のヒグマの北海道警察への通報件数は過去最多となっている。また、ツキノワグマも東北地方を中心に集落周辺まで分布域が拡大している。

クマ類による被害防止に向けた行動及びクマ被害対策施策パッケージにおいて、指定管理鳥獣の指定が提言され、実際に令和六年四月に、四国以外のクマ類が指定管理鳥獣に指定された。

また同対策方針では、出没時の対応として、関係者の連絡体制の構築や対応体制の強化、市街地等での銃器による対応が必要な場合の役割分担と指揮系統の明確化などが求められており、加えて人材の育成と配置も求められている。

令和三年三月に環境省自然環境局によって改定版が発行されたクマ類出没対応マニュアル(概要版)において、市街地等での銃の使用について「警察官がハンターに指示し、住居集合地域等において発砲が可能となります。そのため、事前に警察と協議を行い、適用の際の対応や連絡体制等についてすり合わせておくことが重要です。」「麻酔銃の住居集合地域等での使用については(中略)作業者が行政機関にいない場合は、あらかじめ対応できる機関・団体等を把握しておくようにします。」と記載されている。

実際に現場で活動するハンター、対応できる機関・団体といえば、猟友会が想定されるところである。しかし、令和六年五月には北海道猟友会砂川支部奈井江部会が、日当八千五百円という報奨金について折り合いがつかず活動を辞退した。また、同年十一月には、北海道猟友会が自治体からのヒグマの駆除要請に原則応じないよう全支部に通知する方向で調整しているとの報道があった。これは、砂川市の要請による駆除で発砲した弾が建物に当たる危険性があったとして、猟銃所持の許可を取り消されたハンターが処分の取消しを求めた裁判において十月に敗訴したことを受けた対応である。

猟友会は狩猟の免許取得や講習、装備品のメンテナンスなどには高額な費用を負担しており、現状の自治体からの報奨金で賄えるものではない。また、そもそも猟友会は、全員が狩猟を生業としているわけではなく、純粋に趣味として免許を取得している人が大半と言われている。行政にボランティアとして協力している存在であり、契約による下請関係ではない。政府は自治体と協力団体の連携強化を進める必要があると考える。

一方で、令和六年六月二十五日のABS秋田放送の番組にて、総理就任前の石破茂衆議院議員は「鳥獣を多く捕獲し増えないようにすることも大事だが、私はこの鳥獣対策の議論の中で、いかにして鳥獣がもといた山に帰っていけるようにするかということも同時に、政策として重点が置かれるべきだ」とインタビューに答えている。

兵庫県では、クマが出没する要因となる柿の木や、クマが潜むことのできる薮などを伐採することで、人里に下りてくるクマを激減させて、生息数の増加そのものも抑えることに成功している。また、奥山の乱開発を規制して自然環境を保護し、放置された人工林を広葉樹林に変えるなど、野生動物が住める森林を再生しなければ、問題は根本的に解決しないという専門家の指摘もある。

国民の安全のためには、ハンターの人材確保とクマが人里に来ないようにする防除対策の両面が必要なことから、以下、政府の見解を伺う。

質問1

先述のマニュアルにおいて環境省は、自治体や警察と、ハンターや対応できる機関・団体との連携強化を求めている。しかし、自治体と猟友会、警察や公安委員会と猟友会の関係悪化が表面化している。政府としてどのように関係改善を進めていくか見解を伺う。

回答(質問1 について)

 各地方公共団体における御指摘の「自治体と猟友会、警察や公安委員会と猟友会の関係」については把握していないが、いずれにせよ、クマ類による被害防止のための対策については、各地域において関係行政機関、捕獲技術を有する者等が現場で緊密に連携して対応するよう関係者に働きかけてまいりたい。

質問2

先述の対策方針の人材育成と配置において、危険度が高い捕獲に対応できる正しい知識と技術を有した捕獲技術者の育成・確保が必要な旨、記載されている。

1 これは行政内にハンターを育成するということか、猟友会などの協力団体を育成するということか。

2 狩猟の技術は一朝一夕で身に付くものではないが、ハンターの成り手不足から、こうした経験と技術の継承が難しくなっている。政府は狩猟の技術の継承について支援を行っているか。

3 現状のクマ類の増加を鑑み、狩猟の技術の継承について新たな支援を考えているか伺う。

回答(質問2 の1について)

 お尋ねについては、「クマ類による被害防止に向けた対策方針」(令和六年二月八日クマ類保護及び管理に関する検討会取りまとめ)において、「都道府県及び市町村は捕獲技術者の育成のため、地域で対策を実施する専門職員や捕獲技術者に対して研修会や技術指導を継続的に行うとともに、人材の育成を行う必要がある」とされており、お尋ねの「行政内にハンターを育成する」こと及び「猟友会などの協力団体を育成する」ことの双方が含まれていると承知している。

回答(質問2 の2及び3について)

 御指摘の「狩猟の技術の継承」を含め、「捕獲技術者の育成・確保」については、令和六年度にクマ類を鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(平成十四年法律第八十八号)第二条第五項に規定する指定管理鳥獣(以下「指定管理鳥獣」という。)に指定したことから、指定管理鳥獣対策事業交付金により、クマ類の「捕獲技術者」の技術の向上及び育成に向けた都道府県における必要な取組の実施に対して支援を行っているところであり、引き続き同交付金による支援を行ってまいりたい。

質問3

指定管理鳥獣の指定により、ハンター等に対して、報奨金の引上げや処遇改善等に繋がるか。又は、指定とは関係なく政府の方針として報奨金の引上げや処遇改善等を考えているか、政府の見解を伺う。

回答(質問3 について)

 クマ類を指定管理鳥獣に指定したことにより、クマ類の捕獲等の対策に従事する者に対する賃金等も指定管理鳥獣対策事業交付金の対象経費となったほか、鳥獣被害防止総合対策交付金により、市町村がそれぞれ判断し捕獲技術を有する者に対して支払う捕獲のための活動経費を含め、市町村が実施するクマ類による農作物等の被害を防止するための対策に対して支援を行っているところである。

質問4

地方が高齢化で人手不足となる中、柿の木などの不要果樹や薮の伐採、防護柵や電気柵の設置など、防除対策を自治体や民間団体が行う際の財政支援を強化すべきと考えるが、政府の見解を伺う。

回答(質問4 について)

 御指摘の「不要果樹や薮の伐採、防護柵や電気柵の設置」に係る費用については、クマ類による農作物等の被害を防止するため鳥獣被害防止総合対策交付金において支援を行っているほか、令和六年度にクマ類を指定管理鳥獣に指定したことにより、指定管理鳥獣対策事業交付金の対象経費とすることで支援を強化しており、引き続き必要な予算の確保に努めてまいりたい。

質問5

前項のような防除対策について、費用対効果の測定を行っているか。防除対策を十分に行って駆除を減らした場合と、防除対策よりも捕獲と駆除を中心にした場合で、どちらが多く行政コストがかかるか、費用対効果を比較検討すべきと考えるが、政府の見解を伺う。

回答(質問5 について)

 前段のお尋ねの「測定」は、政府として行っていない。

 後段のお尋ねについては、クマ類の被害防止のための対策は、当該被害はクマ類の生息状況、出没状況等様々な要因に影響されるものであり、また、クマ類の出没に係る防除対策とクマ類が出没した際の捕獲とを地域の状況等に応じて適切に組み合わせて実施されるものであると考えており、費用対効果を一律に比較することは困難である。

質問6

中長期的には、クマが森と人里の境界まで来ないように、奥山の自然環境を保護・再生する必要があると考える。奥山の乱開発を規制し、放置された人工林を広葉樹林に変えるなど、野生動物の生息地域をつくる政策について、政府はどう考えているか。

回答(質問6 について)

 地方公共団体への技術的支援として作成した「特定鳥獣保護・管理計画作成のためのガイドライン(クマ類編)改定版」(令和四年三月環境省改定)において、「人とクマ類の棲み分けを図」るため「奥山等の地域」を「コア生息地」として設定し、「針葉樹人工林の広葉樹林あるいは針広混交林への誘導、落葉広葉樹林環境の保全と復元を行う」等としているところであり、これらの施策が有効であると考えている。