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感染症予防ワクチンの非臨床試験ガイドラインの問題点に関する質問主意書

経過状況:

答弁受理

提出者 原口一博
会派 立憲民主党
公式リンク 第216回国会 / 質問答弁

医薬品の承認申請の目的で実施される感染症予防ワクチンの非臨床試験については、「「感染症予防ワクチンの非臨床試験ガイドライン」について」(平成二十二年五月二十七日付け薬食審査発〇五二七第一号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)により、「感染症予防ワクチンの非臨床試験ガイドライン」(以下「旧ガイドライン」という。)が示されてきた。

また、本年三月二十七日、「「感染症予防ワクチンの非臨床試験ガイドライン」について(改訂)」(令和六年三月二十七日付け医薬薬審発〇三二七第一号厚生労働省医薬局医薬品審査管理課長通知)により、「感染症予防ワクチンの非臨床試験ガイドライン」(令和六年三月二十七日改訂)(以下「新ガイドライン」という。)が示された。

新型コロナウイルス感染症に対するメッセンジャーRNAワクチンは、遺伝子治療用製品であるにもかかわらず、新ガイドラインに基づき、感染症の発症予防又は感染予防を目的とするワクチンと位置付けることにより、本来必要な非臨床試験を必要としないと整理することも可能になっていると考える。

こうしたことも踏まえ、次の事項について質問する。

質問1

新ガイドラインは、厚生労働省医薬局医薬品審査管理課長通知により示されているが、新ガイドラインの起案から最終決裁に至る各決裁権者の役職、氏名及び決裁年月日について、時系列で具体的に示されたい。

回答(質問1 について)

 御指摘の「厚生労働省医薬局医薬品審査管理課長通知」は、令和六年三月二十二日に厚生労働省医薬局医薬品審査管理課において起案し、同課においてしかるべく決裁を経た上で、同月二十七日付けで通知したものである。

質問2

メッセンジャーRNAワクチンは、遺伝子治療用製品に該当しないのか。政府の見解を示されたい。

また、メッセンジャーRNAワクチンが遺伝子治療用製品に該当する場合、新ガイドラインにおいて必要としないと整理されている一部の臨床試験が、同ワクチンについて必要とならない根拠を示されたい。

回答(質問2 について)

 御指摘の「メッセンジャーRNAワクチン」は、疾病の治療に使用されることが目的とされているものではなく、御指摘の「遺伝子治療用製品」には該当しないものと考えている。

質問3

旧ガイドラインにおいては、薬力学試験に関し、「新規のアジュバント又は添加物等が含まれる場合は、その新規物質について薬物動態試験が必要になることがある」とされていた。

一方、新ガイドラインにおいては、「新規アジュバント及び新規添加剤が含まれる場合には、これらの添加物質の安全性についても評価が必要である」とした上で、アジュバントに関し、「ワクチン製剤に新規アジュバントが含まれる場合は、新規アジュバントに関する生体内分布試験が必要になることがある」とするとともに、添加剤(アジュバントを除く)に関し、「使用前例がない新添加剤(安定剤、溶解補助剤、防腐剤、pH調節剤等)が含まれる場合は、ワクチン製剤を用いた試験等の中で、添加剤の安全性を評価する必要がある」としている。

これらの点に関し、ワクチン開発において、新規のアジュバント又は添加物等が含まれる場合、その新規物質についての薬物動態試験の要否について、旧ガイドラインと新ガイドラインとを対比しながら、具体的な根拠を示されたい。

回答(質問3 について)

 お尋ねの「新規のアジュバント又は添加物等が含まれる場合」の「その新規物質についての薬物動態試験の要否」については、「旧ガイドライン」においては「新規のアジュバント又は添加物等が含まれる場合は、その新規物質について薬物動態試験が必要になることがある。」としていたところ、「アジュバント」については、科学技術の進歩を踏まえ、生体内の分布が有効性及び安全性に影響を与える可能性があることが明らかとなり、薬物動態試験のうち生体内の分布の試験が必要となる場合があることから、「新ガイドライン」においては、「新規アジュバントに関する生体内分布試験が必要になることがある。」としており、「添加物等」については、安全性の評価の標準的な方法を明らかにするため、「使用前例がない新添加剤(安定剤、溶解補助剤、防腐剤、pH調節剤等)が含まれる場合は、ワクチン製剤を用いた試験等の中で、添加剤の安全性を評価する必要がある。」としているところであり、当該安全性の評価のための「試験等」を行う中で、「薬物動態試験が必要になることがある」との認識に変更はない。

質問4

旧ガイドラインにおいては、動物種/モデルの選択に関し、「選択した動物種の適切性を説明する必要がある」としていたが、新ガイドラインにおいて、当該記載を削除した根拠を示されたい。

回答(質問4 について)

 お尋ねの「当該記載を削除した根拠」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「新ガイドライン」では「各ワクチンの特性を踏まえ、非臨床試験の必要性、試験の種類、動物種の選択及び試験デザインを科学的根拠に基づいて考える必要がある。」としたところであり、引き続き、医薬品の承認の申請時に、「旧ガイドライン」の「選択した動物種の適切性を説明する必要がある」との認識に変更はない。

質問5

旧ガイドラインにおいては、がん原性試験に関し、「通常、ワクチンでは投与回数が限定されているためがん原性試験を必要としない」としていたが、新ガイドラインにおいて、「通常、ワクチンではがん原性試験を必要としない」とした根拠を示されたい。

回答(質問5 について)

 お尋ねの「根拠」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「新ガイドライン」における御指摘の記載は、他の記載事項に表現を合わせたものであり、「旧ガイドライン」の「ワクチンでは投与回数が限定されているためがん原性試験を必要としない」との趣旨を変更するものではない。

質問6

感染症予防ワクチンの非臨床試験は、薬害の発生を防止するために必要不可欠なものであり、根拠を示すことなく一部の非臨床試験を必要としない旨を厚生労働省の課長通知であるガイドラインで示すことはあってはならないと考えるが、政府の見解を示されたい。

回答(質問6 について)

 御指摘の「一部の非臨床試験を必要としない旨を厚生労働省の課長通知であるガイドラインで示す」の意味するところが明らかではないため、お尋ねにお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、御指摘の「ガイドライン」は、医薬品の承認の申請の目的で実施される「ワクチンの非臨床試験の計画立案のための一般的な原則を提供する」ことを目的として、「現時点の科学的水準に基づき、非臨床評価の項目と内容を決定する必要がある」ことを踏まえ、ワクチンの「試験デザイン」に当たり「各ワクチンの特性を踏まえ、非臨床試験の必要性、試験の種類、動物種の選択及び試験デザインを科学的根拠に基づいて考える必要がある」等の一般的な考え方を示したものであり、非臨床試験の要否や適切性等については、当該考え方を踏まえ、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第十四条の二の三第一項の規定に基づく審査において医薬品ごとに個別に判断されるべきものと考えている。