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スフィア基準に沿った避難所運営等に関する質問主意書

経過状況:

答弁受理

提出者 原口一博
会派 立憲民主党
公式リンク 第216回国会 / 質問答弁

我が国は、従来から多くの自然災害を経験してきたが、近年、災害が激化、頻発化している。

本年一月一日に発生した能登半島地震により、多くの犠牲者と被害が生じ、いまだ避難所生活を送っている被災者がいる中、九月二十日からの大雨により、さらなる被害が発生した。ようやく自宅に戻った直後に、避難所へと逆戻りするといった事態も生じ、避難生活の長期化や災害関連死の増加が懸念される状況にある。

また、近い将来の発生が予測されている南海トラフ地震や首都直下地震が起こった場合には、避難所での生活を余儀なくされる避難者は膨大な数となることが想定されている。

このような状況下、避難所の環境整備の重要性が、これまで以上に高まっている。避難所の居住環境を懸念し、被災者が避難所に入所しないことにより、災害に遭うリスクが高くなるものと思料する。

これらを踏まえ、以下質問する。

質問1

「スフィアハンドブック:人道憲章と人道支援における最低基準」にまとめられている基準(以下「スフィア基準」という。)については、我が国の災害時における避難所運営にも適用すべきとの指摘が内外からなされており、自治体においても参考とする動きがみられるが、いまだ十分とは言い難く、大規模災害が生じるたびに避難所の環境問題が指摘されている。一方で、内閣府が公表している「避難所運営ガイドライン」(平成二十八年四月(令和四年四月改定))においては、参考としてスフィアプロジェクトが紹介されているものの、その内容は、「今後の我が国の「避難所の質の向上」を考えるとき、参考にすべき国際基準となる」旨の記述及びURLの記載にとどまっている。このような対応で各自治体への周知や取組促進が十分といえるのか、政府の認識を伺う。その他に政府として、各自治体に対し、同基準浸透の具体策を講じているのであれば示されたい。

回答(質問1 及び質問2 について)

 政府としては、今後、御指摘の「スフィア基準」も十分に踏まえながら、「避難所運営ガイドライン」(平成二十八年四月内閣府(防災担当)公表、令和四年四月改定)について、食事の提供や快適なトイレの整備等に関して、更なる見直しを図るとともに、地方公共団体に対する周知を徹底してまいりたい。

 また、「スフィア基準」については、例えば、「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」(平成二十八年四月内閣府(防災担当)公表、令和四年四月改定)において、地方公共団体が避難所におけるトイレの数を検討する際に参考とするよう示しているところである。

質問2

本年六月、能登半島地震等の課題を踏まえ、防災基本計画が修正され、市町村は、避難所開設当初からパーティションや段ボールベッド等の設置に努めるとともに、トイレカー等のより快適なトイレの設置に配慮するよう努めることが明記された。防災基本計画の修正を踏まえ、「避難所運営ガイドライン」も見直しを行い、自治体がより一層、避難所の質の向上に取り組み、スフィア基準を採り入れるような内容に修正すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

回答(質問1 及び質問2 について)

 政府としては、今後、御指摘の「スフィア基準」も十分に踏まえながら、「避難所運営ガイドライン」(平成二十八年四月内閣府(防災担当)公表、令和四年四月改定)について、食事の提供や快適なトイレの整備等に関して、更なる見直しを図るとともに、地方公共団体に対する周知を徹底してまいりたい。

 また、「スフィア基準」については、例えば、「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」(平成二十八年四月内閣府(防災担当)公表、令和四年四月改定)において、地方公共団体が避難所におけるトイレの数を検討する際に参考とするよう示しているところである。

質問3

各自治体間の避難所格差については、可能な限り解消すべきであり、財政力の弱い自治体に対しては、政府による財政支援をもって、スフィア基準を採り入れた避難所を設置すべきものと考える。本年二月の衆議院財務金融委員会において、自治体への財政支援の必要性に関する私の質疑に対し、鈴木財務大臣(当時)から、「今回のこうした災害も踏まえながら、今後の予算編成にしっかり生かしていきたい」との答弁があった(令和六年二月十六日衆議院財務金融委員会議録五頁)。来年度予算の概算要求にどのように反映されたのか、政府の対応を示されたい。

回答(質問3 について)

 御指摘の「各自治体間の避難所格差」の意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、内閣府の令和七年度予算概算要求において、避難所の運営に関する調査研究事業に必要な経費を計上したところであり、避難所の開設や運営に関して、モデルとなる取組を地方公共団体に周知することで、全国の避難所の質の向上を図ってまいりたい。なお、「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」(令和六年十一月二十二日閣議決定)において、「避難所環境の抜本的改善に取り組む」こととしており、令和六年度補正予算案において、「新しい地方経済・生活環境創生交付金」について、必要な経費を計上したところである。

質問4

本年二月の衆議院予算委員会において、自民党の石破茂議員がスフィア基準について質疑を行い、岸田内閣総理大臣(当時)から、「スフィア基準を始め国際的な取組も参考にしながら、我が国の体制についても不断の見直しを行っていきたい」との答弁があったものと承知している(令和六年二月二十六日衆議院予算委員会議録三頁)。岸田総理の答弁を受けて、政府においてどのような見直しが行われたのか。また、石破新総理は今後、避難所運営に同基準を反映する取組を実行されるのか見解を示されたい。

回答(質問4 について)

 政府としては、避難所の運営体制等の見直しについて今後の方向性を示すために、中央防災会議防災対策実行会議に設置された「令和六年能登半島地震を踏まえた災害対応検討ワーキンググループ」において、「令和六年能登半島地震を踏まえた災害対応の在り方について(報告書)」を取りまとめたところである。今後、当該報告書で示された方向性や御指摘の「スフィア基準」も十分に踏まえながら、「避難所運営ガイドライン」について、食事の提供や快適なトイレの整備等に関して、更なる見直しを図ってまいりたい。また、全国の避難所の質の向上を図るため、「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」において、「自然災害への備えに万全を期すため、発災時に快適なトイレ、プライバシーを守るパーティション、簡易ベッド、温かい食事を速やかに提供できるよう、必要な資機材の備蓄を推進し、キッチンカー、トレーラーハウス、トイレカー等の登録制度を創設するなど、避難所環境の抜本的改善に取り組む」こととしている。

質問5

政府としてスフィア基準を周知し、自治体による自主的な取組を促すだけでは十分ではなく、避難所における生活環境の改善は市町村が行うものとの認識を改め、国が明確な基準を示し、積極的に関与することが必要と考えるが、政府の見解如何。また、政府により、最低限の基準を一律に示すことが困難あるいは不適当なのであれば、その理由を示されたい。

回答(質問5 について)

 避難所に滞在する被災者の生活環境の整備の在り方については、地域の実情によって様々であること等から、政府として基準を一律に示すことは困難であるが、今後、御指摘の「スフィア基準」も十分に踏まえながら、「避難所運営ガイドライン」について、食事の提供や快適なトイレの整備等に関して、更なる見直しを図るとともに、地方公共団体に対する周知を徹底してまいりたい。