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有明海再生に向けた取組に関する質問主意書

経過状況:

答弁受理

提出者 原口一博
会派 立憲民主党
公式リンク 第216回国会 / 質問答弁

有明海の再生に向けて、政府は、「有明海の再生を願う皆様へ」(令和五年三月二日農林水産大臣談話)(以下、「令和五年大臣談話」という。)を示している。これに関連して、令和七年度予算概算要求において、農林水産省は、「諫早湾干拓潮受堤防排水門の非開門を前提とした有明海の再生の加速化に係る経費については、予算編成過程で検討」するとの事項要求をしている。また、令和六年一月二十六日に提出した第二百十三回国会の質問主意書第一一号(以下、「前回質問主意書」という。)において、有明海における水産資源の回復の進捗状況等について質問を行ったところ、同年二月六日、政府はこれに対する答弁書を回答した。これらを踏まえ、以下、質問する。

質問1

令和五年大臣談話では、「国は、平成二十九年の農林水産大臣談話の趣旨を踏まえつつ」、「必要な支援を講じてまいります」と述べている。また、平成二十九年の農林水産大臣談話(以下、「平成二十九年大臣談話」という。)では、「国としては」、「基金による和解を目指すことが本件の問題解決の最良の方策」と述べており、当時、政府は総額百億円規模の基金を提案していた。

本年八月三十一日付の佐賀新聞の記事には、「佐賀を含む沿岸各県の漁業団体は二月、百億円の基金創設を前提に開門せず有明海再生を図るとした政府方針に賛同した」と記されているが、この記述について、政府も同じ認識を有しているか否かを明らかにされたい。政府の認識が異なる場合は、どの部分がどのように異なるのか具体的に示した上で、政府の認識を明らかにされたい。

回答(質問1 について)

 御指摘の「佐賀新聞の記事」の「記述」のうち「百億円の基金創設」については、「国として開門しないとの方針」を示した平成二十九年四月二十五日付け農林水産大臣談話を踏襲した令和五年三月二日付け農林水産大臣談話における「有明海再生の加速化を図るため」の「必要な支援」に関する、福岡有明海漁業協同組合連合会、佐賀県有明海漁業協同組合及び熊本県漁業協同組合連合会で構成する諫早湾干拓事業対策委員会の要望であると承知している。

質問2

令和七年度予算概算要求において事項要求としている有明海の再生の加速化に係る経費に関連して、本年八月三十日、佐賀県は、「有明海再生の加速化に係る「必要な支援」については、全額国の費用負担により実施されるものであり、県や市町及び漁業関係者等に費用負担が生じないこと」について、農林水産省へ確認を申し入れている。これに対して、農林水産大臣は、本年九月三日の大臣記者会見において、「佐賀県からの問合せに対する回答については、事務方に検討を指示しています」と述べている。また、必要な支援の具体化に向けて、「有明沿岸四県や関係漁業団体などの御意見も踏まえながら、引き続き、調整を進めてまいります」と述べている。

1 佐賀県からの申入れに対する具体的な回答内容について、明らかにされたい。現時点において回答内容について検討中である場合は、検討状況について示されたい。

2 農林水産大臣は、必要な支援の具体化に向けて「有明沿岸四県や関係漁業団体など」の意見を踏まえるとしているが、その意見を踏まえる対象として有明沿岸四県の漁業者、これまでの関係する裁判における原告漁民等が含まれているか否かについて、明らかにされたい。

3 予算概算要求から一月が経過した現時点において、有明沿岸四県や関係漁業団体などの意見を踏まえるための意見交換会などの具体的な実績及び事項要求の検討・調整状況について明らかにされたい。あわせて、年末までの予算編成過程における関係者との意見交換会を始めとした事項要求の検討・調整に係る具体的な予定・スケジュールについて明らかにされたい。

回答(質問2 の1について)

 御指摘の佐賀県副知事から農林水産省農村振興局長に宛てた令和六年八月三十日付け照会文書に対しては、同局長から同副知事に宛てた同年九月三十日付け文書において、「令和五年三月二日付け農林水産大臣談話「有明海の再生を願う皆様へ」において、裁判ではなく、話し合いにより開門によらない有明海再生を図っていくという方向性に御賛同が得られれば、国は、関係者が、有明海再生の加速化を図るため合意し、協働して実施する各種方策を後押しするため、可能な範囲で、関係者の御意見を踏まえつつ、必要な支援を講じるとしています。」、「この「必要な支援」の具体的な内容については、関係する県、漁業団体の御意見を聴取しつつ、検討を継続していますので、令和七年度予算概算要求においては、事項要求の形で予算要求を行いました。」及び「引き続き、「必要な支援」の具体的な内容については、関係者の御意見を踏まえつつ、今後の予算編成過程において検討します。」と回答しているところである。

回答(質問2 の2及び3について)

 御指摘の「関係する裁判における原告漁民等」の具体的な範囲が必ずしも明らかではないが、諫早湾干拓事業に係る訴訟当事者及び訴訟当事者であった者を含む漁業者で組織される福岡有明海漁業協同組合連合会、佐賀県有明海漁業協同組合、長崎県漁業協同組合連合会及び熊本県漁業協同組合連合会の意見を令和六年九月四日の有明海漁場環境改善連絡協議会(以下「協議会」という。)で聴取するとともに、同日以降において関係する漁業協同組合及び漁業協同組合連合会の意見を個別の面会等の機会を通じて聴取しながら、予算編成過程において御指摘の「必要な支援」の具体的内容を検討している。また、御指摘の「事項要求の検討・調整に係る具体的な予定・スケジュール」については、予算編成過程において検討することとしており、現時点において具体的な見通しをお示しすることは困難である。

質問3

平成二十九年大臣談話では、「国として開門しないとの方針を明確にして臨む」と述べている。一方、令和五年大臣談話では、「平穏な環境の下で、積み重ねられた司法判断と最新の科学的知見に基づき、有明海の未来を見据えた「話し合い」を行い、「合意」した有明海再生の方策を、「協働」して実施していくべき」と述べている。

ここで述べているように「最新の科学的知見に基づく」ためには、国として開門しないとの方針にかかわらず、平穏な環境の下で、政府と関係者による話し合い・合意を受けて、中長期間の開門調査を行うことが必要不可欠であると考えるが、政府の認識を明らかにされたい。また、そのような開門調査を行うことができないという場合は、その理由を科学的根拠とともに明らかにされたい。

回答(質問3 について)

 一についてで述べたとおり、御指摘の「令和五年大臣談話」は、御指摘の「国として開門しないとの方針」を示した平成二十九年四月二十五日付け農林水産大臣談話を踏襲したものである。政府としては、引き続き、開門によらない有明海再生の取組を進める方針の下、御指摘の「中長期間の開門調査」は実施せず、「令和五年大臣談話」を踏まえ、「積み重ねられた司法判断」とこれまでの有明海再生に向けた対策における水産資源の回復に向けた取組により得られた「最新の科学的知見に基づき、有明海の未来を見据えた「話し合い」を行い、「合意」した有明海再生の方策を、「協働」して実施していくべき」との考えである。

質問4

前回質問主意書において、有明海・八代海等総合調査評価委員会の平成二十九年三月の報告における「有明海・八代海等の海域全体に係る再生目標」(以下、「再生目標」という。)に係る目標の内容、水産資源の回復の進捗状況について質問を行ったところ、これに対する政府の答弁書において、再生目標には「幼生や稚貝が成貝に育つことまで」含まれるとの認識等が示された。一方、水産資源の回復の進捗状況については、アサリの浮遊幼生の調査結果により浮遊幼生が増えていることを示すにとどまっている。アサリ、タイラギ等で漁業者の経営が成り立つためには、幼生や稚貝が成貝に育ち、一定の漁獲、販売ができるようになる必要があり、幼生や稚貝の増加を一定の成果としている政府の基本認識には大きな問題がある。

前回質問主意書に対する答弁書にあった「幼生や稚貝が成貝に育つこと」の再生目標については、成貝に育つ実績が確認されていないことから、現時点での達成状況はゼロであると考えるが、政府の認識を明らかにされたい。また、仮にこの目標について進捗があると考えている場合は、定量的な実績とともに明確な説明を示されたい。

回答(質問4 について)

 御指摘の「幼生や稚貝が成貝に育つこと」に関しては、例えば、アサリの稚貝及び成貝から成る資源量について、その内訳は必ずしも明らかではないが、有明海の水産資源の回復、海域環境の改善等、有明海沿岸各県が協調した取組について意見交換等を行うために令和六年三月二十六日に開催した協議会において、福岡県から「取組の成果もありまして、令和五年十月のアサリの資源量は約四千四百トンに増加」している旨の報告があったところである。