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森林政策に対する基本姿勢に関する質問主意書
経過状況:答弁受理
森林は、国土の保全、水源の涵養、生物多様性の保全、地球温暖化の防止、文化の形成、木材等の物質生産等の多面的機能を有しており、国民生活に様々な恩恵をもたらす「緑の社会資本」である。それらの機能を適切に発揮させていくためには、将来にわたり、森林を適切に整備及び保全していかなければならない。
しかしながら、我が国の林業は、木材の輸入自由化等の影響により、長期にわたる木材価格の下落等の厳しい状況が続いており、森林所有者の手元にほとんど利益が残らないため、森林所有者の林業経営への関心は低下し、適切な経営管理がされず、森林の荒廃が進んでいる。
こうした状況の中、不動産登記法の改正により、令和六年四月から相続登記が義務化された。これまで未登記であった森林の登記が進むと、森林の売買が増加する可能性がある。他方、森林の所有については、外国資本により森林が取得され、将来にわたる水源確保が懸念されるとの報道がある。これらを踏まえ、以下、質問する。
質問1
森林所有者の林業経営への関心を高めるためには森林所有者の利益を適切に確保していくことが重要であり、そのためには、グローバリズムに基づく輸入に依存した木材産業の構造を是正し、国産木材の利用を中心とした産業振興に注力すべきであるが、政府の見解を示されたい。
回答(質問1 について)
御指摘の「国産木材の利用を中心とした産業振興」の意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律(平成二十二年法律第三十六号)第十五条第一項の規定に基づき国又は地方公共団体及び事業者等が締結する建築物木材利用促進協定等により、建築物等における木材の利用を促進することとしており、これに当たっては、国産材の利用の拡大と安定的な供給の確保が重要であることから、「建築用木材供給・利用強化対策」により、国産材を利用した住宅の建築や需要に応じた新商品の開発に必要な経費を支援するとともに、「林業・木材産業循環成長対策」により、国産材の利用の拡大に取り組む製材工場等の木材加工流通施設の整備への支援等を行っている。
質問2
林野庁が本年七月に公表した「外国資本による森林取得に関する調査の結果について」によれば、居住地が海外にある外国法人又は外国人と思われる者によって、平成十八年から令和五年までの累計で三百五十八件、二千八百六十八ヘクタールもの森林が取得されている。森林が外国資本に取得されている現状について、政府はどのように分析しているのか明らかにされたい。また、今後、どのような対策を講じるつもりがあるのか、政府の見解を明らかにされたい。
回答(質問2 について)
農林水産省が行った「外国資本による森林取得に関する調査」によれば、外国資本による森林取得は、平成十八年から令和五年までに二十五道府県で三百五十八件が確認されており、取得が確認された森林の所在地としては北海道虻田郡ニセコ町及び倶知安町が百八十六件と多くを占めている。また、同調査によれば、これらの森林取得に係る森林の土地の利用の目的としては、「資産保有」及び「別荘地開発」その他これに類するものが半数以上を占めている。
森林所有者が外国資本であるか否かにかかわらず、森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)における保安林制度や民有林における開発行為に対する許可制度等により、水源の涵養を始めとする森林の有する公益的機能の維持が図られており、また、新たに森林の土地の所有者となった者の届出制度により、森林取得の状況を把握し、同法に基づく規制措置等の適切な運用を図ることができることから、政府としては、今後とも、これらの制度の運用を通じて、森林の保全に努めていく考えである。