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中国による南シナ海における不法かつ危険な行為に関する質問主意書
経過状況:答弁受理
中華人民共和国(中国)による、南シナ海における最近の不法かつ危険な行為の数々は、全くもって許し難い。例えば、本年八月、フィリピン共和国の排他的経済水域内で、中国海警局の船舶が、フィリピン共和国の巡視船に故意に衝突し、これを損傷させた。また、今月四日、フィリピン共和国の排他的経済水域内で、中国海警局の船舶が、フィリピン共和国の巡視船に対して、放水砲による攻撃、故意の衝突、進路妨害、追尾等の危険な行為を行った。
多くの日本国民が、中国の行為に強い憤りを感じるとともに、友邦フィリピン共和国に同情し、また、「明日は我が身」との恐怖を感じている。
そこでお尋ねする。
質問1
中国が、南シナ海において、地域の緊張を高める行為を繰り返していることについて、政府の見解如何。
回答(質問1 について)
お尋ねについては、我が国としては、南シナ海において、地域の緊張を高める行為が繰り返されていることに対し、深刻に懸念するとともに、緊張の緩和を強く求めるという立場である。
質問2
中国は、中国による一方的な「歴史的権利」主張を否定した平成二十八年の南シナ海に関する比中仲裁判断について、「ただの紙くず」と断じ、令和三年にも中国外務省報道官が、「紙くずだ。中国は受け入れない。」とこれを非難した。中国の薛剣駐大阪大使級総領事は、国際社会における法の支配について、今月九日、自らの官職名を明示したソーシャル・ネットワーキング・サービス「X」の公開アカウントにおいて、「「ルールに基づく国際秩序」、この西側政治屋たちが異口同音で口癖のようにこの洗脳フレーズを繰返している。まるでカルト集団のお経のようだ。所謂「ルール」と言うが、全く普遍性と公平性がなく、他国に一方的に強制しても、自分達が全く守らない。」と述べた。比中仲裁判断及びこれを受け入れない中国の姿勢について、政府の見解如何。
回答(質問2 について)
海洋法に関する国際連合条約(平成八年条約第六号。以下「国連海洋法条約」という。)においては、国連海洋法条約の規定に基づいて管轄権を有する裁判所が行う裁判は、最終的なものとし、全ての紛争当事者はこれに従うものとされており、御指摘の「平成二十八年の南シナ海に関する比中仲裁判断」は、紛争当事者である中国及びフィリピンの間において拘束力を有するものである。我が国としては、同判断を受け入れないという中国の主張は、国連海洋法条約を始めとする国際法に従った紛争の平和的解決の原則に反しており、国際社会における法の支配を損なうものであると考えており、紛争当事者が同判断に従うことにより、南シナ海における紛争の平和的解決につながることを強く期待している。
質問3
我が国は、同志国であるフィリピン共和国に対して、政府安全保障能力強化支援(OSA)を実施し、我が国との安全保障協力関係の強化、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出及び国際的な平和と安全の維持・強化への貢献を図っているとのことだが、その概要及び現状について、具体的に説明されたい。
回答(質問3 について)
政府安全保障能力強化支援(以下「OSA」という。)とは、我が国として、同志国の安全保障上の能力や抑止力の強化に貢献することにより、我が国との安全保障協力関係の強化、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出並びに国際的な平和と安全の維持及び強化に寄与することを目的として、軍等が裨益者となる資機材供与やインフラ整備等を行うものであるところ、お尋ねのフィリピンに対するOSAについては、我が国とフィリピンとの間で、令和五年十一月に、我が国がフィリピンに対して六億円を供与することを内容とする交換公文を締結し、我が国がフィリピン海軍に対して沿岸監視レーダーシステムを供与することを決定した。さらに、令和六年十二月に、我が国がフィリピンに対して十六億円を供与することを内容とする交換公文を締結し、我が国がフィリピン海軍に対して複合艇、沿岸監視レーダーシステム等を、また、フィリピン空軍に対して警戒管制レーダーの関連機材を供与することを決定したところである。
質問4
我が国は、米海軍及びフィリピン共和国海軍と共に海上協同活動(MCA)を実施し、共有する海洋安全保障上の課題に対処し、地域の安定を確保するため、三か国間の協力の深化を図っているとのことだが、その概要及び現状について、具体的に説明されたい。
回答(質問4 について)
海上協同活動(以下「MCA」という。)とは、国連海洋法条約上の権利を尊重する我が国、米国、フィリピン等の同盟国・同志国が協同し、航行の自由及び上空飛行の自由を支持し、「国家安全保障戦略」(令和四年十二月十六日閣議決定)等に示した「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた地域的及び国際的な協力を強化するための取組として、共同訓練等の活動を実施するものであるところ、我が国としては、これまでに米国、フィリピン等との間で五回の共同訓練を実施してきたところである。
質問5
東シナ海、南シナ海等の海空域において、既存の国際秩序とは相容れない独自の主張に基づき力によって現状を変更しようとする試みを阻止することは、我が国の安全保障にとって死活的に重要である。政府は、フィリピン共和国への政府安全保障能力強化支援を拡大するとともに、海上共同活動等をとおして協力関係をより一層深化させていくべきと考えるが、見解如何。
回答(質問5 について)
我が国とフィリピンは、法の支配等の基本的な価値や原則を共有しており、引き続き、OSA、MCA等を通じ、両国の安全保障協力関係の強化を着実に実施していく考えである。