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ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道建設事業に関する質問主意書

会派 立憲民主党
議案提出者 近藤昭一
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

インド、ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道事業の開業時期は、当初計画では二〇二三年十二月とされていたが遅延している。しかしながら、二〇二四年三月からの報道では、インドのバイシュナブ鉄道相やジョージ駐日インド大使の発言として「二〇二六年頃に開業」とも報じられている。

本事業は、日本がODA(政府開発援助)として、総事業費約一兆八千億円の八十一%を拠出するものである。公的資金を原資とするODAの趣旨から鑑みて透明性が何より求められるにもかかわらず、上記報道にある当初計画からの約三年に及ぶ開業遅延などについて政府から何らの説明もない。また、総事業費については、「日印両国政府間で精査中」(JICA(国際協力機構)「事業事前評価表」二〇二三年三月二十九日)とされており、事業費が増加する可能性もはらんでいる。したがって、事業計画自体に問題があったといわざるを得ない。

以下について政府の見解を明らかにされたい。

質問1

今後の事業計画と円借款契約の予定について

1 当初計画の遅れについて原因とともに政府の見解を示されたい。

2 在来線特急の運行開始は本事業に大きな影響を与えるのかどうか明らかにされたい。

3 本事業の費用回収での見込みについて、F/S(実現可能性調査)と齟齬が生じるかどうか明らかにされたい。

回答(質問1 の1について)

 御指摘の「当初計画」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、「ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道事業に関するプログレスレポート」(平成二十八年十月七日署名)の「詳細な事業スケジュール」において「二千二十三年 開業」及び「両者は、同スケジュールに基づいた事業の実施に向けて、双方で必要な努力をしていく考えを共有した」としているところ、新型コロナウイルス感染症の影響等により、現時点において、ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道は開業に至っていないところであるが、いずれにせよ、ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道建設計画に係る事業(以下「本事業」という。)の実施に係るスケジュールを日印間で精査しており、引き続き、本事業の着実な実施に向けて、日印間で緊密に連携しながら作業を進めてまいりたい。

回答(質問1 の2について)

 御指摘の「在来線特急」、「運行開始」及び「大きな影響」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、現時点において把握している限りでは、インドにおける在来線の今後の運行の動向が、少なくとも本事業の着実な実施に対して大きな影響を及ぼし得るものであるとは認識していない。いずれにせよ、本事業の着実な実施に向けて、同国における在来線の運行の動向等に留意しつつ、日印間で緊密に連携しながら作業を進めてまいりたい。

回答(質問1 の3について)

 御指摘の「費用回収での見込み」の具体的に意味するところ及びお尋ねの趣旨が明らかではなく、お尋ねの「齟齬が生じるかどうか」についてお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、御指摘の「F/S(実現可能性調査)」に含まれる内部収益率等については、本調査が完了した平成二十七年の時点において試算されたものであるが、本事業の現時点における内部収益率等の見通しについては、経済環境等の変化による変動を踏まえて日印間で精査しているところであり、引き続き、本事業の着実な実施に向けて、日印間で緊密に連携しながら作業を進めてまいりたい。

質問2

日本側の現地対応について

1 工事の進捗状況、土地、財産への補償の現状、JICA環境社会配慮ガイドラインの遵守指導の経緯、JICAインド事務所の現地住民との面談記録などについて、政府の承知しているところを公表されたい。

2 インド側の事業者が、現地住民への理解を得ており現地住民から被害の訴えを起こされていないことを政府として把握しているか教示されたい。

3 高額運賃を前提とするため貧困層に裨益せず、さらにはインド国民に返済負担を強いる本事業のような巨大インフラへのODA供与を見直す必要はないか。

回答(質問2 の1及び2について)

 御指摘の「工事の進捗状況」及び「面談記録」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「現地住民から」の「被害の訴え」を含め、お尋ねのような現地における本事業の実施に係る詳細については、独立行政法人国際協力機構及び本事業の実施機関であるインド高速鉄道公社が必要に応じて関連情報を随時公表しているとおりであり、政府としても、その内容を承知しているところである。

回答(質問2 の3について)

 御指摘の「高額運賃を前提とするため貧困層に裨益せず、さらにはインド国民に返済負担を強いる」の趣旨が明らかではないが、いずれにせよ、政府開発援助(以下「ODA」という。)については、「開発協力大綱」(令和五年六月九日閣議決定)の「開発協力の適正性確保のための実施原則」において、「開発途上国の民主化の定着、法の支配及び基本的人権の尊重を促進する観点から、当該国における民主化、法の支配及び基本的人権の保障をめぐる状況に十分注意を払う」等の原則を「常に踏まえた上で、相手国の開発需要及び経済社会状況、二国間関係等を総合的に判断の上、開発協力を実施する」としているとおり、政府としては、これらの状況等を総合的に判断の上、ODAを実施することを基本的な考え方としているところ、本事業の具体的な実施に当たっては、この考え方に基づき、適切な判断を行いながら、引き続き、本事業の着実な実施に向けて、日印間で緊密に連携しながら作業を進めてまいりたい。