不明瞭な内閣官房報償費の諸課題に関する質問主意書
質問1
本年五月十日付中国新聞によれば、二〇〇〇年以降の自民党政権で官房長官を務めた元政権幹部が中国新聞の取材に対し、国政選挙の候補者に陣中見舞いの現金を渡す際に内閣官房報償費(以下「機密費」という。)を使ったと証言し、選挙への使用は目的外使用の可能性があり、元官房長官は不適切な支出だったと認めたとされる。
元官房長官によると、国政選挙で首相に頼まれて候補者の応援演説に出向いた際に、機密費から陣中見舞いの現金を渡したという。額は百万円だったと説明し、「首相が行けないから代わりに行ってくれと言われ、仕事みたいに思っていた」と釈明したとのことである。当該記事に記載されているような、国政選挙の候補者に陣中見舞いの現金を渡す際に機密費を使った事実があるのか伺いたい。
回答(質問1 について)
内閣官房報償費については、令和六年二月十三日の衆議院予算委員会において、林内閣官房長官が「内閣官房報償費は、国の機密保持上、その使途等を明らかにすることが適当でない性格の経費として使用されてきておりまして、その個別具体的な使途に関するお尋ねについては、お答えを一切差し控えております」と述べているとおりであり、その具体的な使途に関するお尋ねについてお答えすることは差し控えたい。いずれにせよ、内閣官房報償費については、その取扱責任者である内閣官房長官の判断と責任の下に、厳正かつ効果的に執行しているところであり、また、会計検査院の検査を受けているところである。
質問2
政府として、歴代の官房長官に対し、機密費を選挙資金として国政選挙の候補者に提供した事例があるか確認するべきと考えるが如何か。
回答(質問2 について)
内閣官房報償費については、その取扱いは一についてでお答えしたとおりであり、また、その取扱責任者である内閣官房長官が、その都度の判断で機動的に使用する経費であって、その判断と責任の下に、厳正かつ効果的に執行しているところであり、過去に、その時々の内閣官房長官の判断により執行されたものについて現内閣において御指摘のような確認を行うことは考えていない。
質問3
本年五月十二日にNHK番組で、自民党の政治刷新本部政治資金に関する法整備検討ワーキンググループ座長を務める鈴木馨祐衆議院議員が機密費を巡り「選挙目的で使うことはない。断言する。」と語ったが、当該発言の根拠が示されていないことが問題となっている。
1 政府として機密費が選挙目的で使われたことがないと断言できる根拠を持っているか伺いたい。
2 根拠がある場合にはその詳細について根拠を示されながら明瞭に説明をされたい。
3 根拠が示せない場合、本件発言はそもそも政府に事実確認をされていない根拠のない発言であるのか伺いたい。
4 本件発言に関して、林芳正官房長官は「個々の議員の発言にコメントすることは差し控える」、「国の機密保持上、使途等を明らかにすることが適当でない性格の経費として使用されてきており、個別具体的な使途に関するお尋ねにはお答えを一切差し控えている」旨の発言をしている。不適切な支出が疑われている問題に関して、岸田政権が真摯な説明を行わず真実を明らかにされない姿勢は国民の理解を得られないと考えるが如何か。
回答(質問3 の1及び2について)
内閣官房報償費については、その取扱いは一についてでお答えしたとおりであり、その具体的な使途に関するお尋ねについてお答えすることは差し控えたい。
回答(質問3 の3及び4について)
政府として、国会議員の個々の発言に関し、お答えすることは差し控えたいが、いずれにせよ、内閣官房報償費については、引き続き、厳正かつ効果的な執行を徹底するとともに、御指摘の「国民の理解」を得られるよう努めてまいりたい。
質問4
松野博一前官房長官が二〇二三年十二月一日から辞任した十二月十四日までの間に、使途が公表されない機密費を四千六百六十万円支出したとのことであるが、岸田政権は裏金問題の渦中の人物が使い道を明らかにしない多額の金を支出して、国民の理解・納得を得られると考えているのか伺いたい。
回答(質問4 について)
内閣官房報償費は、施策の円滑かつ効果的な推進に資するため、内閣官房長官のその都度の判断で機動的に使用する経費であり、その時々の内閣官房長官の判断と責任の下に、厳正かつ効果的に執行しているところであり、松野前内閣官房長官も同様に執行したものと考えている。いずれにせよ、内閣官房報償費については、その取扱いは一についてでお答えしたとおりであり、引き続き、厳正かつ効果的な執行を徹底するとともに、御指摘の「国民の理解・納得」を得られるよう努めてまいりたい。
質問5
自民党と裏金の問題に関しては、実態解明は不十分、処分は甘く、自民党の改革案は羊頭狗肉と評される改革する気が全く見えない内容となっており、国民の怒りが頂点に達している。そうした中、菅義偉元首相が内閣官房長官に在任した七年八カ月余(二千八百八十二日)で政策推進費として領収書不要で自身に支出した機密費は八十六億八千万円超だったことが報じられており、支出した機密費の総額九十五億四千二百万円余の九十・九七%を菅元首相のつかみ金として一日平均三百七万円を使用した計算となる。一般的に未来永劫こうした支出の使途を秘匿にしたまま執行することは国民から理解を得られるものではない。
そうした中、本年五月十日付中国新聞によれば、法政大学大学院の白鳥浩教授は「機密費は本来、国家の安全のための情報活動などに使うべきだ。選挙の裏金として使うのは民主主義の根幹をゆがめる行為で、違法性も疑われる」と指摘、「第三者機関が秘密保持を誓約した上で、適正に使われているかをチェックできるよう運用を見直すべきだ」と提案したとされている。岸田政権は機密費について、本提案のように第三者機関が秘密保持を誓約した上で、適正に使われているかをチェックができるよう運用を見直す考えはないか。
回答(質問5 について)
内閣官房報償費については、その取扱責任者である内閣官房長官の判断と責任の下に、厳正かつ効果的に執行しているところであり、また、会計検査院の検査を受けているところであって、お尋ねの「本提案のように第三者機関が秘密保持を誓約した上で、適正に使われているかをチェックができるよう運用を見直す」考えはない。
質問6
機密費は、国の施策推進のために予算化され、機密を理由に使途は公表されていない状況にある。機密費の使い道を一定の期間をもって公表し、後世の人々がその利用が適正であったか検証できるように、例えば、二十五年後には「?政策推進費受領簿(内閣官房長官が政策推進費の繰入れを行う都度並びに会計年度末及び内閣官房長官が交代する際に作成する文書)」・「?支払決定書(調査情報対策費又は活動関係費の支払決定を行う都度作成される文書)」・「?出納管理簿(報償費の月ごとの出納状況をまとめた文書)」・「?報償費支払明細書(前月繰越額、本月受入額、本月支払額及び翌月繰越額等が記載されている文書及び各支払に関する一覧表)」・「?領収書等(役務提供者等の支払相手方から受領した領収書等)」などの機密費に関連する行政文書を公開し、ブラックボックスをなくしていくべきであると考えるが岸田政権の考えは如何か。
回答(質問6 について)
お尋ねの「公開」及び「ブラックボックスをなくしていくべきである」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の文書を含め、内閣官房報償費に関する行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)に基づく開示請求があった場合には、平成三十年一月十九日最高裁判所第二小法廷判決を踏まえて対応しているところであり、具体的には、内閣官房報償費の支払の相手方や具体的な使途等に関する情報及びこれらの事項を相当程度の確実性をもって特定することが可能になる場合がある情報について、同法第五条第三号又は第六号の不開示情報に該当するものと判断し、不開示としてきている一方で、右に述べた情報以外の情報については、同法に基づく開示請求に対し、適切に開示しているところである。
質問7
機密費は、「内閣官房の行う事務を円滑かつ効果的に遂行するために、当面の任務と状況に応じて機動的に使用することを目的とした経費」であり、毎年度予算措置が講じられ、その取扱責任者である内閣官房長官の請求により国庫から支出され、内閣官房長官の手元におかれる。
1 機密費については、目的、支出方法等について定める法令は存在しないと認識しているがその理解で正しいか。
2 機密費を目的外に利用することや不適切な支出を行った際には何か罰則があるのか伺いたい。ない場合には何故何も罰則を設けないのか伺いたい。
3 機密費について、目的、支出方法等について定める法令は存在しないと認識している。しかし、六までで述べたような問題点が生じていることから、機密費の目的、支出方法等を法令上明記し、その運用については国会の監視機能を働かせるとともに、不適切な取扱いについての罰則規定を設ける必要があると考えるが、岸田政権の考えは如何か。
回答(質問7 について)
内閣官房報償費の目的を直接に定める法令は存在しない。お尋ねの「支出方法等」の意味するところが必ずしも明らかではないが、内閣官房報償費についても会計法(昭和二十二年法律第三十五号)等の規定の適用がある。また、御指摘の「目的外に利用することや不適切な支出を行」うことを含め、内閣官房報償費の執行に関し、仮に法令違反が認められる場合には、罰則を含め、法令等の規定に基づき対処することとなる。お尋ねの「その運用については国会の監視機能を働かせる」の具体的に意味するところが明らかではないが、内閣官房報償費は、その取扱責任者である内閣官房長官が、毎年度及びその交代の都度定める執行に当たっての基本的な方針において目的類型を定め、自らの責任と判断の下に、厳正かつ効果的に執行しているところであり、また、会計検査院の検査を受けているところであって、お尋ねのように、新たに、「機密費の目的、支出方法等を法令上明記」し、また、「不適切な取扱いについての罰則規定を設ける必要がある」とは考えていない。