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「神田警察通り」(東京都千代田区道)整備に伴う、街路樹伐採で懸念される環境対策等に関する質問主意書

会派 立憲民主党
議案提出者 阿部知子
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

東京都千代田区の管理する区道、「神田警察通り」においては道路整備工事に関して街路樹(イチョウ)の伐採が着手されているが、本計画では、都心部でのヒートアイランド現象等対策に機能しうる、街路樹の役割が問われている。

計画は、「一ツ橋−神田警察署前交差点間の二百三十メートル。四車線ある区道一・四キロの車線を減らし、歩行者や自転車用の道路を整備する計画の二期工事で、沿道のイチョウ三十二本のうち三十本を伐採、二本を移植する。跡地には新たに三十九本のヨウコウザクラを植える。工費は三億七千万円。」(東京新聞、二〇二二年四月二十六日)というもの。

かねてより市民から反対の声が上がっており、六百名以上の署名を添えた伐採工事見直しの陳情書が提出され(二〇二二年七月二十五日)、住民訴訟も東京地方裁判所に係属中である。

二〇二四年三月十一日には、反対する関係者の当該伐採作業場所への立入りを禁じる仮処分を東京地方裁判所が決定したが、立入禁止場所が恣意的に設定されるおそれがあり、抗議、反対する地元住民を排除するものであるとして、保全異議が申立てられている(同月二十一日)。

このような状況の下、工事現場で多数の地元住民たちが反対、抗議する中で区は二〇二四年四月九日から十二日にかけて、伐採工事を行ってイチョウ十一本を伐採した。これまでの伐採数を加えると、十八本となる。

今後とも、工事の安全確保、伐採による環境への影響等が懸念される。以下、質問する。

質問1

街路樹は、温暖化やヒートアイランド現象対策に加え、排気ガスや騒音を妨げる効果、災害時の避難経路を守るなど、多様な役割を担っている。欧米では、そのために、樹幹被覆率(以後、被覆率)を増やし、一定面積において被覆率を高める政策が進んでいるという。例えば、ニューヨーク市では、被覆率を二〇三五年までに少なくとも三十%に引き上げることを目指し、二〇二三年から今後十年余りで二百万本近い木を植えるという。

その契機は、気候変動への適応力を高めるまちづくりというが、我が国も昨年十二月にも参加したCOP28(国連気候変動枠組条約第二十八回締約国会議)で、国内の温室効果ガスを、二〇三〇年度までに四十六%削減していくとしている。

今回の同計画においては、伐採を進めることで、被覆率が下がることは明らかであり、気候変動対策の点でも、逆行的な政策ではないか。政府見解を問う。

回答(質問1 について)

 御指摘の「今回の同計画」とは、平成二十二年三月に設置された「神田警察通り沿道まちづくり検討委員会」が平成二十三年六月に策定した「神田警察通り沿道まちづくり整備構想」(以下「整備構想」という。)を指すものと考えられるが、整備構想においては、御指摘の「伐採」と併せて、新たに樹木を植えることとなっていると承知しているところ、御指摘の「被覆率が下がる」かどうかについては、必ずしも明らかではないが、政府としては、道路の緑化は、道路利用者等への快適な空間の提供、景観の向上、地球温暖化対策等の観点から重要であると考えており、道路管理者である千代田区において、景観、管理の難易度、経済性等を総合的に勘案し、地域の特性に応じて街路樹の整備等を推進しているものと承知しており、御指摘の「気候変動対策」の観点についても、同区において、適切に判断されるべきものと考えている。

質問2

我が国では、大正八年に施行された「街路構造令」により、緑豊かな街路整備が進められたが、「道路構造令」(一九七一年四月施行)により、「道路の安全性・円滑性を確保する観点」が優先され、通行機能に重点が置かれる法体系となった。

本計画では、それら法令に加え、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(以後、「バリアフリー法」)に基づいた上で、「歩道空間の拡幅と快適化」とし、歩道幅を一・五から二メートル以上としているが、伐採により、日陰がなくなり、例えば、車椅子を使用される方、障がいをお持ちの方、高齢の方など、移動に時間がかかってしまう方は、夏期などの炎天下で身体や健康への影響も懸念される。

1 その意味で、「バリアフリー法」第二条「二 移動等円滑化 高齢者、障害者等の移動又は施設の利用に係る身体の負担を軽減することにより、その移動上又は施設の利用上の利便性及び安全性を向上することをいう。」という本旨に反しないか。政府見解を問う。

2 他方、「道路構造令」第十一条の四「第四種第一級及び第二級の道路には、植樹帯を設けるものとし、その他の道路には、必要に応じ、植樹帯を設けるものとする。ただし、地形の状況その他の特別の理由によりやむを得ない場合においては、この限りでない。」とした上で、「3(略)植樹帯の幅員は、当該道路の構造及び交通の状況、沿道の土地利用の状況並びに良好な道路交通環境の整備又は沿道における良好な生活環境の確保のため講じられる他の措置を総合的に勘案して特に必要があると認められる場合には、(略)その事情に応じ、同項の規定により定められるべき値を超える適切な値とするものと」し、「4 植樹帯の植栽に当たつては、地域の特性等を考慮して、樹種の選定、樹木の配置等を適切に行うものとする。」とされている。

 伐採ありきではなく、当該道路にあった整備をすべきと考えるが、政府見解は如何か。

回答(質問2 の1について)

 御指摘の「本計画」とは、整備構想を指すものと考えられるが、整備構想においては、御指摘の「伐採」と併せて、新たに樹木を植えることとなっていると承知しているところ、御指摘の「日陰がなくな」るかどうかについては、必ずしも明らかではないが、御指摘の「移動等円滑化」については、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成十八年法律第九十一号)第二条第二号において、「利便性及び安全性を向上すること」と規定されており、整備構想における御指摘の「移動等円滑化」については、道路管理者である千代田区において、御指摘の「日陰」の有無だけでなく、交通状況や公共施設等の立地状況等の地域の実情を総合的に考慮して、判断されるべきものと考えている。

回答(質問2 の2について)

 御指摘の「伐採ありき」の意味するところが必ずしも明らかではないが、国土交通省においては、各都道府県知事等に対して、「道路緑化技術基準」(平成二十七年三月三十一日付け国都街第百十七号・国道環調第五十八号国土交通省都市局長及び道路局長連名通知別紙別添)を周知し、同技術基準において、樹木の「更新にあたっては、従前の道路植栽にこだわらず、道路利用状況、沿道状況等の変化を考慮し、植栽計画や植栽設計を再検討することが望ましい」としているところであり、整備構想においても、同技術基準の趣旨を踏まえて、街路樹の整備が行われているものと承知している。

質問3

質問一に関連して、樹幹が広がると、日差しを遮る効果が広がり、緑陰効果も大きくなるとされている。

また、我が国の街路樹事業を調査する際は、「街路樹調査」なる、樹種、本数等が記されたものや、緑量を示す指標である「緑被率」が用いられている。「緑被率」では、芝生や低木、中木が植えられている場所の面積がカバーされるが、街路樹本数が多いことが、豊かな街路樹環境を示している訳ではなく、「樹幹被覆面積」を増やすことが重要という指摘もある。(海老澤清也「特集/『緑の街づくり』を担う街路樹の在り方を考える 街路樹再生の条件〜日本の都市緑化のゆがみを問う」、一般財団法人地球・人間環境フォーラム、二〇二二)

さらに、ランセット調査(Cooling cities through urban green infrastructure:a health impact assessment of European cities, January 31 2023)によれば、「都市の三十%を樹木で覆った場合、平均気温が〇・四度下がり、死者数が四割近く減る可能性がある」という結果も出ている。

都心部での伐採を伴う再開発等計画において、果たしてそうした人間の生命等について危惧・懸念されていることを考慮し、積極的に「被覆率」に基づく調査を導入すべきと考えるが、政府見解は如何か。

回答(質問3 について)

 御指摘の「街路樹調査」の意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、御指摘の「都心部での伐採を伴う再開発等計画」における「「被覆率」に基づく調査」の実施の必要性については、当該計画を策定する主体において、個別具体の状況に応じ、適切に判断されるべきものと考えている。