不動産購入による自衛隊用地取得に関する質問主意書
防衛省は、防衛施設の設置のための用地の取得を職務の一つとしており、自衛隊及び在日米軍が使用する土地等の買入れを行っている。二〇二四年度においては、防衛力基盤強化施設整備費の項に運用基盤等の強化に必要な経費事項として、約百三十二億円の不動産購入費が予算計上されている。この予算には、沖縄県議会の与野党会派が白紙撤回を求め、二〇二四年四月十一日に撤回された、沖縄県うるま市での陸上自衛隊訓練場新設計画における用地取得経費が含まれていたが、用地取得経費の明細は明らかになっていない。
防衛省による不動産購入に関して、以下質問する。
質問1
防衛省が自衛隊用地を取得する際、売買契約による不動産購入費について、購入に係る予定価格を積算する必要がある。防衛省がこれらを積算する際に参照する指標は、公示地価、路線価、固定資産税評価額、基準地価、実勢価格(時価)、不動産鑑定業者による鑑定評価のいずれか。また、これら以外に参照しているものがあるならば、それを示されたい。
回答(質問1 について)
お尋ねについて、自衛隊の用に供する土地の買収価額は、「自衛隊の施設として使用する土地等の買収等に関する事務について(通知)」(令和四年二月十八日付け防地環第二千五百十七号防衛省地方協力局長通知)第五の二に基づき、不動産鑑定士の鑑定評価により算定している。
質問2
防衛省が所有する自衛隊用地(行政財産)について、令和五年版防衛白書には演習場一覧が掲載されているものの、総面積程度の情報しかない上、規模が小さいものは一件ごとの面積さえ示されておらず、どこの土地をいくらで購入してきたか、詳細は判然としない。二〇一三年一月一日以降、防衛省が取得した自衛隊用地の住所、面積、購入価格、坪単価、公示地価といった詳細な不動産購入の履歴を可能な限り明らかにされたい。また、購入価格が公示地価より高額であった案件を把握していれば、それぞれその購入理由を示されたい。
回答(質問2 について)
前段のお尋ねについては、調査に膨大な作業を要するとともに、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)第五条第三号等に掲げる不開示情報に該当する情報が含まれることから、網羅的にお答えすることは困難であるが、平成二十五年一月一日から令和五年三月三十一日までの間において、自衛隊の用に供する土地として取得した用地について、お示しできるもののうち、?国有財産の口座名、?所在地及び?面積は、次のとおりである。
?陸上自衛隊真駒内駐屯地 ?北海道札幌市南区真駒内一七番地 ?約二百九十二平方メートル
?陸上自衛隊北海道大演習場恵庭地区 ?北海道恵庭市大字漁村字盤尻 ?約六千九百七十八平方メートル
?陸上自衛隊北海道大演習場島松地区 ?北海道恵庭市桜森 ?約六千五十四平方メートル
?陸上自衛隊旭川駐屯地鷹栖射撃場 ?北海道上川郡鷹栖町一四線三号 ?約六千二百四十三平方メートル
?航空自衛隊千歳基地 ?北海道千歳市平和 ?約八千八百二十八平方メートル
?航空自衛隊長沼高射教育訓練場 ?北海道夕張郡長沼町字馬追 ?約八万四千五百十平方メートル
?陸上自衛隊仙台駐屯地反町分屯地 ?宮城県宮城郡松島町初原 ?約三万六千六百五十一平方メートル
?陸上自衛隊神町駐屯地東根射撃場 ?山形県東根市大字東根字元原方 ?五千八十平方メートル
?陸上自衛隊高田駐屯地 ?新潟県上越市南城町三ー七ー一 ?三十三平方メートル
?航空自衛隊百里基地 ?茨城県小美玉市百里一七〇 ?約七万三千百五十四平方メートル
?海上自衛隊横須賀地方総監部長浦庁舎 ?神奈川県横須賀市長浦町一丁目一九番地外 ?約三万千百七十七平方メートル
?海上自衛隊横須賀地方総監部船越庁舎 ?神奈川県横須賀市船越町七丁目七一番地二九外 ?約三百四十八平方メートル
?陸上自衛隊富山駐屯地 ?富山県砺波市鷹栖出字飛地島二九二八 ?約九百九十六平方メートル
?陸上自衛隊饗庭野演習場 ?滋賀県高島市今津町今津 ?約六万千二百六十五平方メートル
?陸上自衛隊宇治駐屯地祝園分屯地 ?京都府相楽郡精華町大字北稲八間 ?四百七十六平方メートル
?航空自衛隊入間基地経ヶ岬分屯基地 ?京都府京丹後市丹後町袖志 ?約一万八百六十九平方メートル
?陸上自衛隊松山駐屯地 ?愛媛県松山市南梅本町乙一〇七 ?約一万五十七平方メートル
?防衛装備庁艦艇装備研究所岩国海洋環境試験評価サテライト ?山口県岩国市大字長野字長野尻一八〇五ー一外三筆 ?約三万三百三十一平方メートル
?陸上自衛隊対馬駐屯地 ?長崎県対馬市厳原町桟原 ?約千六百二平方メートル
?陸上自衛隊相浦駐屯地崎辺分屯地 ?長崎県佐世保市崎辺町一一番二 ?約十三万四千三十七平方メートル
?海上自衛隊崎辺東地区(仮称) ?長崎県佐世保市崎辺町一一番一 ?約二千五百九十八平方メートル
?陸上自衛隊えびの駐屯地霧島演習場 ?宮崎県えびの市大字西長江浦 ?約一万九千七百七十三平方メートル
?陸上自衛隊国分駐屯地佐多射撃場 ?鹿児島県肝属郡南大隅町佐多辺塚字松橋二一四八ー二 ?約四百七十六平方メートル
?自衛隊馬毛島基地中種子支援施設(仮称) ?鹿児島県熊毛郡中種子町野間字フシノ峯一六九一八ー二 ?約八千百三十七平方メートル
?自衛隊馬毛島基地南種子支援施設(仮称) ?鹿児島県熊毛郡南種子町中之上字山崎二三四四ー七 ?約二千七百八平方メートル
?陸上自衛隊那覇駐屯地 ?沖縄県那覇市字鏡水名座原六七九 ?三百平方メートル
?陸上自衛隊那覇訓練場 ?沖縄県那覇市字小禄石大庭原一八三八ー一 ?三百三十九平方メートル
?陸上自衛隊宮古島駐屯地 ?沖縄県宮古島市上野字野原カギモリ原八三ー五 ?十八万七百五十四平方メートル
?陸上自衛隊保良訓練場 ?沖縄県宮古島市城辺字保良前方原三九〇番 ?十九万四百五十三平方メートル
?陸上自衛隊石垣駐屯地 ?沖縄県石垣市字平得大俣一二七三ー四〇四 ?三十四万二千六十九平方メートル
後段のお尋ねについて、自衛隊の用に供する土地の買収価額は、一についてでお答えしたとおり、不動産鑑定士の鑑定評価により算定しているものであり、御指摘の「購入価格が公示地価より高額であった案件」については、把握していない。
質問3
防衛省が自衛隊用地を取得する際、地元の合意を得ているか。得ている場合には、どの段階で、どのような手続を踏んでいるか、具体的に明らかにされたい。なお、個別の事案によって異なるのであれば、基本的なルール又は直近の三事案についての取扱いを示されたい。
回答(質問3 について)
御指摘の「地元の合意」の意味するところが必ずしも明らかではないが、自衛隊の用に供する土地を取得するための不動産売買契約に際しては、当該土地の所有者と合意の上でこれを締結している。なお、自衛隊施設の安定的な運用や円滑な部隊の活動に当たっては、関係自治体等の協力が不可欠であるとの考えであり、自衛隊の用に供する土地を取得する際に、関係自治体等に対する丁寧な説明や適切な情報提供を行ってきているところである。
質問4
沖縄県うるま市での陸上自衛隊訓練場新設計画における用地取得に取り組んだ際、市長、市議会与党、自由民主党沖縄県支部連合会及び地元選挙区国会議員からの意見聴取、調整及び同意はいつどこでどのような手段により得られたのか、詳細を伺いたい。
回答(質問4 について)
お尋ねについては、令和五年十二月二十二日に、沖縄防衛局からうるま市に対して説明と情報提供を行った。その後、令和六年一月三十日に、同年二月十一日の地域住民に対する説明会の開催について同局から同市に対して情報提供を行い、また、同月十三日に、当該説明会の資料を同局のウェブサイトに掲載したことについて、同局から同市に対して情報提供を行ったところである。これ以上の詳細については、相手方との関係もあることから、お答えすることは差し控えたい。
質問5
二〇二四年四月十一日、防衛省が発出した「沖縄県うるま市における陸上自衛隊訓練場の整備計画について」に関して、特定の政党及び個人名による要請が特記されていた。本年六月に沖縄県議会議員選挙が予定される中、政府が特定の政党及び個人名を特記してコメントを発出するのは不適切であり、コメントの修正又は撤回を要すると考えるが、政府の見解を伺いたい。
回答(質問5 について)
お尋ねについては、令和六年四月十八日の衆議院安全保障委員会において、木原防衛大臣が「あくまでも、時間をかけてでも取得後の土地利用の在り方について検討せよ、そういう指示を出しておりました。そして、熟慮に熟慮を重ねた結果、こういう結論に至ったわけですが、それについては、最後、まさに地元自治体、市民の代表である中村市長がこの件について上京されて、そして、防衛省に来られて私もそれに対応したということでございます。それに自民党県連の島袋幹事長も陪席されていた、これは事実であります。ですから、この事実に基づいて経緯、内容を端的に説明するための公表文だった」と答弁しているとおりであり、防衛省として、適切な内容であると考えている。