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米軍北部訓練場跡地の不完全な支障除去に関する質問主意書

会派 立憲民主党
議案提出者 屋良朝博
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

二〇一六年十二月二十二日に返還された米軍北部訓練場跡地について、防衛省はいわゆる跡地利用特措法に基づき、土地の有効かつ適切な利用が図れるよう汚染物質の除去や廃棄物の撤去などの支障除去を実施し、一年後の二〇一七年十二月に地権者へ引き渡した。しかし、その後も様々な廃棄物や未使用の空包などの不発弾が見つかり、支障除去が不完全だったことが明らかになった。

ついては、以下の事項を質問する。

質問1

土地引渡し後も相次いで廃棄物が確認され、支障除去を今もって続けていることに鑑みれば、地権者への引渡し前に支障除去措置を講じたとする防衛省の説明は撤回が必要であると考えるが、政府の見解を伺いたい。

回答(質問1 及び質問2 について)

 沖縄県における米軍施設及び区域の返還に際しては、沖縄県における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別措置法(平成七年法律第百二号)第八条の規定に基づき、返還地の有効かつ適切な利用が図られるよう、防衛省において、当該返還地を所有者等に引き渡す前に土壌の汚染調査等の土地を利用する上での支障の除去に関する措置(以下「支障除去措置」という。)を講じている。

 平成二十八年十二月二十二日に米国から返還され、平成二十九年十二月二十五日に所有者等に対し引渡しを行った北部訓練場の過半に当たる約四千ヘクタールの土地(以下「本件土地」という。)については、国立公園への編入や世界自然遺産への登録を目指す関係自治体の意向等を踏まえ、希少動植物の生態系に配慮しつつ、速やかな利用が可能となるよう引渡しに先立って、廃棄物等が存在する蓋然性が高いと考えられる範囲で支障除去措置を実施したところであり、「防衛省の説明は撤回が必要である」とは考えていない。

 また、本件土地に係る御指摘の「支障除去対象物の残存状況」については、政府として網羅的に把握しているわけではないが、支障除去措置を実施するに当たっては、沖縄防衛局の指示に基づき委託業者が選定した外部有識者の助言を踏まえ、土壌汚染対策法(平成十四年法律第五十三号)第三条第一項に定める方法に準じて、本件土地の区域の全部について、航空写真による確認や米軍に対する使用履歴の確認等による土壌汚染等の蓋然性を把握するための調査を実施したほか、事前に所有者等に対する説明も行ったところであり、御指摘のように「返還地全域について調査等業務を行う」予定はない。

質問2

二〇一六年の米軍北部訓練場の返還後、支障除去が行われたのは返還地全体の約四千ヘクタールについてではなく、米軍車両が通行していた道路、ヘリパッド跡地とその周囲、過去にヘリが墜落した地点とその周囲で汚染の蓋然性が高いとされた部分など約五ヘクタール、返還地全体の〇・一%である。地権者への引渡し後に行われている米軍北部訓練場返還跡地廃棄物調査等業務についても、引渡し前に支障除去が行われた区域でのみ行われている。支障除去を行う範囲を限定した理由は何か。また、米軍北部訓練場跡地全体における支障除去対象物の残存状況につき、政府はどの程度把握しているか。十分に把握していないのであれば、今後返還地全域について調査等業務を行う必要があると考えるが、その予定はあるか、政府の見解を伺いたい。

回答(質問1 及び質問2 について)

 沖縄県における米軍施設及び区域の返還に際しては、沖縄県における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別措置法(平成七年法律第百二号)第八条の規定に基づき、返還地の有効かつ適切な利用が図られるよう、防衛省において、当該返還地を所有者等に引き渡す前に土壌の汚染調査等の土地を利用する上での支障の除去に関する措置(以下「支障除去措置」という。)を講じている。

 平成二十八年十二月二十二日に米国から返還され、平成二十九年十二月二十五日に所有者等に対し引渡しを行った北部訓練場の過半に当たる約四千ヘクタールの土地(以下「本件土地」という。)については、国立公園への編入や世界自然遺産への登録を目指す関係自治体の意向等を踏まえ、希少動植物の生態系に配慮しつつ、速やかな利用が可能となるよう引渡しに先立って、廃棄物等が存在する蓋然性が高いと考えられる範囲で支障除去措置を実施したところであり、「防衛省の説明は撤回が必要である」とは考えていない。

 また、本件土地に係る御指摘の「支障除去対象物の残存状況」については、政府として網羅的に把握しているわけではないが、支障除去措置を実施するに当たっては、沖縄防衛局の指示に基づき委託業者が選定した外部有識者の助言を踏まえ、土壌汚染対策法(平成十四年法律第五十三号)第三条第一項に定める方法に準じて、本件土地の区域の全部について、航空写真による確認や米軍に対する使用履歴の確認等による土壌汚染等の蓋然性を把握するための調査を実施したほか、事前に所有者等に対する説明も行ったところであり、御指摘のように「返還地全域について調査等業務を行う」予定はない。

質問3

二〇一六年に米軍北部訓練場が返還された直後の支障除去を行ったのは、いであ株式会社である。同社が支障除去を行った場所からは、地権者への引渡し後も廃棄物が確認されたというが事実か。また、引渡し後の廃棄物調査等業務も同社に委託したのは事実か。事実であるならば、支障除去について所期の目的を達成できなかった事業者にその後も廃棄物調査等業務を委託した理由及び経緯について、詳細を明らかにされたい。

回答(質問3 について)

 本件土地の米国からの返還後に、沖縄防衛局から委託を受けて、支障除去措置の一環として、御指摘の「いであ株式会社」(以下「いであ社」という。)が目視等による廃棄物等の有無の調査を実施した土地において、所有者への引渡し後、いであ社が同局の委託を受けて磁気探査を実施した際に、地中から廃棄物が発見された事例はある。

 また、本件土地の引渡し後の廃棄物調査等を実施する者の選定に当たっては、一般競争入札により実施し、その結果、いであ社が受注したものである。

 さらに、いであ社は、支障除去措置の一環として行った目視等による廃棄物等の有無の調査について、同局が委託した業務を履行しており、「支障除去について所期の目的を達成できなかった」との御指摘は当たらない。

質問4

米軍北部訓練場跡地における二〇二一年から現在までの支障除去に関する調査計画の概要、調査結果、各年度の支障除去開始期日と終了期日、発見された廃棄物等の種類、数量、支障除去を行った面積、当該作業の内容について可能な限り明らかにした上で、引渡し後にそのような廃棄物が残存している理由について、政府の見解を伺いたい。

回答(質問4 について)

 前段のお尋ねについては、「支障除去に関する調査計画の概要、調査結果」の意味するところが必ずしも明らかではないが、沖縄防衛局においては、令和三年以降、令和元年から令和三年までの間に実施した磁気探査で磁気異常点が確認された七箇所のヘリコプター着陸帯跡について廃棄物調査等を実施しているところ、「各年度」の「開始期日と終了期日」については、複数年度にわたって実施しているものもあるため、具体的にお示しすることは困難であるが、令和三年以降の当該調査等の実施期間は、令和元年九月二十日から令和三年十一月三十日まで、令和四年三月二日から同年八月三十一日まで及び同月十七日から令和五年三月三十一日までに加え、同年七月二十八日から令和六年八月三十一日までを予定している。また、お尋ねの「発見された廃棄物等の種類、数量」については、金属くず等が約二十三トン、火工品が約五万二千発である。さらに、当該調査等を行った面積は、約五ヘクタールである。

 後段のお尋ねについては、一及び二についてでお答えしたとおり、本件土地の返還に際しては、国立公園への編入や世界自然遺産への登録を目指す関係自治体の意向等を踏まえ、希少動植物の生態系に配慮しつつ、速やかな利用が可能となるよう、廃棄物等が存在する蓋然性が高い範囲に限り支障除去措置を実施したことが考えられる。

質問5

米軍基地返還後の支障除去には、通例では数年の期間が設けられると聞く。米軍北部訓練場跡地については、既に返還から七年が経過したが、いまだに支障除去が続いている。これまでの調査対象区域における支障除去作業のほか、それ以外の区域における支障除去作業を行おうとする場合について、それぞれ支障除去対象物の撤去完了が実現できるのはいつ頃になると政府は見込んでいるか、具体的な年度を示されたい。

回答(質問5 について)

 お尋ねについては、支障除去措置は完了しているところ、本件土地の引渡し後も、新たに廃棄物等が発見された場合には、本件土地の所有者等と調整の上、防衛省において適切に対応しているところである。

質問6

沖縄県警察は、米軍北部訓練場跡地で発見された不発弾について、沖縄県警察が行う不発弾等の処理要領、跡地利用特措法及び沖縄防衛局・沖縄森林管理署間の協定を根拠に、確認や回収などの対応を行わないとしている。この運用のさなか、二〇二三年十二月七日に北部訓練場跡地のLZ2Aヘリパッド付近において、手榴弾の不発弾の可能性が考えられる廃棄物が見つかった。その後、翌年一月十三日に報道によってその手榴弾が亡失し、その後手榴弾が発見された事実自体も明らかとなった。

当時、米軍北部訓練場返還跡地廃棄物調査等業務を請け負っていた大和探査技術株式会社は、処分の準備が整うまで現場で保管していたということだが、政府はどのように処分を行う予定だったのか。また、今後、事業者が不発弾を見つけた場合、警察及び自衛隊への不発弾処理要請の協力が得られない状態で、どのように不発弾への対応及び処理を行うのか、政府の見解を伺いたい。

回答(質問6 について)

 御指摘の「手榴弾」の意味するところが必ずしも明らかではないが、本件土地において、沖縄防衛局が実施している廃棄物調査等で令和五年十二月七日に発見され、令和六年一月十日に亡失していることが判明した手榴弾らしきものについては、同局において関係機関等と調整の上、適切に対応する予定であったものである。

 また、今後、不発弾等が発見された場合には、同局において関係機関等と調整の上、適切に対応してまいりたい。

質問7

米軍北部訓練場跡地は、大部分がやんばる世界自然遺産となっている。世界自然遺産に登録されたことで、同地域には観光客が訪れることが見込まれる。市民が支障除去対象物に触れることを防ぐために、不発弾、放射性物質及び有毒化学物質を含む米軍廃棄物が残留している可能性があることを、看板の設置やチラシの配布などにより周知する予定はあるか、政府の見解を伺いたい。

回答(質問7 について)

 本件土地については支障除去措置は完了しており、本件土地の引渡し後も、新たに廃棄物等が発見された場合には、防衛省において適切に対応しているところであり、お尋ねの「看板の設置やチラシの配布などにより周知する予定」はないが、今後とも必要に応じて適切に対応してまいりたい。

質問8

米軍北部訓練場跡地において、米軍廃棄物に含まれる不発弾が爆発して一般市民が死傷した場合、被害補償などの手続はどのように行われることになるのか、具体的に説明されたい。

回答(質問8 について)

 お尋ねについては、仮定の質問であり、また、個別の事情に応じて判断されるものであるため、一概にお答えすることは困難ではあるが、御指摘のような事態が発生した場合には、事実関係を把握した上で適切に対応してまいりたい。