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新型コロナワクチン接種に用いられるRNAワクチンの安全性及び有効性に関する質問主意書

会派 立憲民主党
議案提出者 原口一博
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

新型コロナウイルス感染症に係る予防接種(以下「新型コロナワクチン接種」という。)に用いられるファイザー社やモデルナ社のメッセンジャーRNAワクチン(以下「コロナRNAワクチン」という。)の安全性及び有効性については、世界各国において様々な指摘がなされている。特に、SNS等においては、コロナRNAワクチンの安全性や有効性について立場を異にする者に対する脅迫めいた発言も見られる状況にある。厚生労働省ウェブサイトの「新型コロナワクチンQ&A」にも「SNSやメディアでは、新型コロナワクチンに関して様々な情報が溢れています。特に、SNSでは発信者が不明、または科学的根拠や信頼のおける情報源に基づいていない、不正確な情報があり、注意が必要です。」と記載されており、新型コロナワクチン接種について正確な情報を適切に提供することの重要性は、政府にも共有されていると考える。以下、質問する。

質問1

SNS等において、新型コロナワクチン接種が危険であることや効果がないことを理由に接種を中止した国があるとの指摘が見られる。

1 新型コロナワクチン接種を実施していた国において、コロナRNAワクチンの安全性や有効性を理由に新型コロナワクチン接種を中止した国を政府は把握しているか。把握している場合には、その国名を示されたい。

2 SNS等においては、タイの王女が新型コロナワクチン接種後に心疾患となり、タイ政府がファイザー社との契約の破棄を検討しているとするものがある。これに対して、タイ王室庁はパチャラキティヤパー王女がマイコプラズマ感染による心臓の炎症で深刻な不整脈を発症したと発表したと報じられている。また、タイ公衆衛生省疾病管理局がSNSで「ファイザー社との契約を解除した」とのニュースは誤った情報であると発信したとされる。政府としては、タイ政府が新型コロナワクチン接種を中止したと理解しているのか、あるいは、現在も新型コロナワクチン接種を実施していると理解しているのか。

回答(質問1 の1について)

 お尋ねについては、政府としては把握していない。

回答(質問1 の2について)

 お尋ねについては、政府として詳細を把握していないため、お答えすることは困難である。

質問2

SNS等においては、ファイザー社のコロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS−CoV−2)(以下「ファイザー社コロナワクチン」という。)について、「SV四〇というがんウイルス由来のDNAが混入しており、ターボがんの原因となっている」と指摘するものがある。

1 まず、SNS等において「SV四〇というがんウイルス」とされるウイルスは、シミアンウイルス四〇であると理解する。シミアンウイルス四〇の発がん性については、シミアンウイルス四〇が混入したポリオワクチンを接種したヒトに追跡調査がなされたががんを引き起こしたという根拠は得られなかったとの指摘も見られる。一方で、シミアンウイルス四〇は、ハムスター等を用いた動物実験では発がん能があったとされる。シミアンウイルス四〇は、ヒトにがん腫瘍を発生させるのか。この点については論争が続いているとの指摘もあるが、政府の見解を伺う。

2 SNS等においては、ファイザー社コロナワクチンにシミアンウイルス四〇に由来する塩基配列が含まれているとの指摘も見られる。ファイザー社コロナワクチンに含まれるmRNAの塩基配列にシミアンウイルス四〇の塩基配列と共通する箇所があることを政府は把握しているか。また、ファイザー社コロナワクチンに含まれるmRNAからシミアンウイルス四〇のタンパク質が産生される可能性はあるのか。政府の見解を伺う。

3 ワクチンに様々なウイルスのDNAの断片が混入することはありうることであり、ウイルスのDNAの断片がワクチンに混入したからといって直ちにそのワクチンが危険であるというわけではない、との指摘も見られる。コロナRNAワクチンを接種した者が、がん患者となる確率が高まることを示す研究等について、政府は把握しているか。また、コロナRNAワクチンにはがん腫瘍の発生を促進させる効果があるとする研究等を政府は把握しているか。政府の見解を伺う。

回答(質問2 の1について)

 お尋ねの「シミアンウイルス四〇の発がん性」に関しては、政府として、化学物質の発がん性の評価等を実施している国際がん研究機関においてグループ3(人に対する発がん性について分類できないもの)に分類されていると承知している。

回答(質問2 の2について)

 お尋ねの「シミアンウイルス四〇の塩基配列と共通する箇所」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「ファイザー社コロナワクチンに含まれるmRNAの塩基配列」の中に「シミアンウイルス四〇の塩基配列」の中の特定のたんぱく質を生成する塩基配列は含まれていないため、お尋ねの「mRNAからシミアンウイルス四〇のタンパク質が産生される可能性」は考えられない。

回答(質問2 の3について)

 御指摘の「研究等」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘のような「がん患者となる確率が高まること」やがんの「発生を促進させる効果」を確認した研究について、政府として把握していない。なお、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第六十八条の十第一項及び医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和三十六年厚生省令第一号)第二百二十八条の二十第一項第二号ロの規定により、医薬品の製造販売業者は、当該医薬品の副作用若しくはそれらの使用による感染症によりがんその他の重大な疾病、障害若しくは死亡が発生するおそれがあること、当該医薬品の副作用による症例等若しくはそれらの使用による感染症の発生傾向が著しく変化したこと又は当該医薬品が承認を受けた効能若しくは効果を有しないことを示す研究報告を知ったときは、厚生労働大臣にその旨を報告しなければならないとされているところ、新型コロナウイルス感染症に係る予防接種に使用するワクチン(以下「新型コロナワクチン」という。)の製造販売の承認がされた令和三年二月十七日から現在までの間に、製造販売業者から、御指摘のような研究に関する報告はなされていない。

質問3

コロナRNAワクチンの有効性について、厚生労働省ウェブサイト「ファイザー社の新型コロナワクチン(一価:従来株)について」では「新型コロナウイルス感染症の発症等を予防します。」、「初回接種における臨床試験の結果、接種から一定の期間における発症予防効果は、十六歳以上では約九十五%、十二〜十五歳では百%、五〜十一歳では九十・七%」とされている。また、厚生労働省ウェブサイト「ファイザー社のオミクロン株対応一価ワクチンについて」では、「新型コロナウイルス感染症の重症化の予防を目的として接種します。」、「本剤(オミクロン株対応一価ワクチン)の非臨床試験における初回接種や追加接種により、オミクロン株亜系統に対する中和抗体の産生が確認されたことから、一定の有効性が期待されています。」とされている。

1 「ファイザー社の新型コロナワクチン(一価:従来株)」では「新型コロナウイルス感染症の発症等を予防」とされ、「ファイザー社のオミクロン株対応一価ワクチン」では「新型コロナウイルス感染症の重症化の予防」とされている。なぜ、従来株型ワクチンとオミクロン株対応ワクチンとで、その効果が変化したのか。また、その変化はいつ生じたのか。政府の見解を伺う。重症化予防の効果しかないのであれば他者への感染を防ぐ効果は期待できず、予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)第一条の「伝染のおそれがある疾病の発生及びまん延を予防する」ことにならないのではないか。政府の見解を伺う。

2 従来株対応ワクチンについては、発症予防効果が「十六歳以上では約九十五%」等の数値で表されていたのに対し、オミクロン株対応ワクチンでは「一定の有効性が期待」と数値が示されていないのはなぜか。オミクロン株対応ワクチンの効果について従来株対応ワクチンのように数値で示すことはできないのか。もし、先行する研究が見当たらないために数値を示すことができないのであれば、政府において調査して、公表すべきではないか。政府の見解を伺う。

回答(質問3 の1について)

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、厚生労働省ウェブサイトにおける御指摘の「新型コロナウイルス感染症の発症等を予防」との記載は、令和三年二月十五日等に開催された厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会において、「ファイザー社の新型コロナワクチン(一価:従来株)」について「COVID−十九発症予防効果が期待できる」とされたことを踏まえ記載したものであり、御指摘の「新型コロナウイルス感染症の重症化の予防」との記載は、令和五年六月十六日の同分科会において、「ファイザー社のオミクロン株対応一価ワクチン」のような「流行株の成分を含むワクチンは、・・・重症化予防効果はもとより、発症予防効果への寄与も期待される」とされたことを踏まえ記載したものである。

 また、「重症化予防の効果しかないのであれば・・・予防接種法・・・第一条の「伝染のおそれがある疾病の発生及びまん延を予防する」ことにならないのではないか」とのお尋ねについては、御指摘の「オミクロン株対応ワクチン」は、前述のとおり、同分科会において、「重症化予防効果はもとより、発症予防効果への寄与も期待される」とされているところ、令和二年十一月十三日の衆議院厚生労働委員会において、政府参考人が「対象となるワクチンに感染予防の効果があるか、若しくは、感染予防効果までは期待できなくても、ある程度の発症予防効果や重症化予防効果があり、集団での発症、負荷の軽減を期待できれば、蔓延予防の効果を有するものとして、臨時接種の目的である疾病の蔓延予防に資するものであるというふうに考えております」と答弁しているとおりであり、「疾病の発生及びまん延を予防する」ために接種することとしている。

回答(質問3 の2について)

 御指摘の「従来株対応ワクチン」に係る記載については、令和三年二月十五日等に開催された厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会において、臨床試験についての御指摘のような「数値」等の結果について確認されたことを踏まえ記載したものである一方、御指摘の「オミクロン株対応ワクチン」に係る記載については、令和五年九月八日の同分科会において、「非臨床データ」により「中和抗体の誘導が認められた」と確認されたことを踏まえ記載したものであり、「数値」の記載はないところであるが、引き続き、「オミクロン株対応ワクチン」を含めた新型コロナワクチンに係る有効性等について、「数値」も含め、科学的知見を収集し、必要に応じて国民の皆様に情報提供してまいりたい。