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日本人駐在員長期拘束に関連した中国外務省報道官発言に関する質問主意書

会派 立憲民主党
議案提出者 松原仁
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

中華人民共和国(中国)外交部の林剣報道官は、本年三月二十日の記者会見で、中国当局に長期間拘束されている邦人製薬会社社員についての質問に対して、「日本側が自国民に、中国の法律及び規則を遵守し、中国で違法犯罪行為に従事しないよう、教育及び指導を行うことを望む」と述べた。

この日本人男性社員は昨年三月に中国当局に北京で拘束され、今月十八日には検察による起訴審査手続に入ったと日本政府に通告があった。このまま手続が進めば拘束はさらに長引き、男性の解放は難しさを増す可能性が高まっている。中国当局側は拘束の経緯や具体的な容疑事実など詳細を明らかにしておらず、中国でビジネスをする日系企業の間には困惑と懸念が広がっている。そこで質問する。

質問1

林剣報道官の発言について、政府の見解如何。

回答(質問1 について)

 御指摘の中国政府関係者の発言の逐一についてお答えすることは差し控えたいが、令和五年三月に北京で邦人が拘束された事案に関する日本政府の立場については、例えば、令和五年十一月三十日の参議院外交防衛委員会において、上川外務大臣が「中国における邦人拘束事案につきましては、十一月十七日の首脳会談におきまして岸田総理から、また、二十五日の外相会談におきましては私から、邦人の早期解放を改めて強く求めたところであります。これまでも政府として、中国側に対しまして、様々なレベルや機会を通じまして、拘束された邦人の早期解放や、また司法プロセスにおける透明性の確保などを累次働きかけておりますが、引き続きそのような働きかけを粘り強く継続していく所存でございます。」と述べたとおりである。

質問2

中国が二〇一四年に「反スパイ法」を制定して以来、これまでに何人の日本人がスパイ活動への関与を疑われて拘束され、うち何人が帰国しているか。帰国していない者はどのような状況に置かれているか。政府の把握されているところを述べられたい。

回答(質問2 について)

 お尋ねの「スパイ活動」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「中国が二〇一四年に「反スパイ法」を制定して以来」令和六年四月三日までに、中国の国内法の違反があったとして、御指摘の「中国当局」に拘束された邦人については、合計十七名であり、その内訳は、帰国した者が十一名、現在も拘束されている者が五名、服役中に病死した者が一名であると承知している。また、当該拘束されている五名の者のうち、その内訳は、服役中の者が三名、服役中でない者が二名(そのうち公判中の者が一名)であると承知している。

質問3

外務省海外安全ホームページは、未だに、新疆ウイグル自治区及びチベット自治区を除く中国について、危険レベルを設定していない。令和五年十一月二十日に提出した「外務省と米国国務省による中国危険情報の乖離に関する質問主意書」(第二百十二回国会質問第五四号)で述べたように、外務省の中国危険情報は、アメリカ合衆国(米国)国務省旅行アドバイザリーのそれと比較すると、著しく危険性が低い評価となっている。米国国務省は、中国本土について、「レベル三 渡航を再考せよ」「出国禁止措置や不当な拘束の危険を含む、現地の法律の恣意的運用があるため、渡航を再考するように」としているのに対して、外務省は、新疆ウイグル自治区及びチベット自治区を除く中国について、「レベル一 十分注意してください。」にさえしておらず、当局による不当な拘束の危険がほぼ存在しない西欧諸国と同じレベルとしている。外務省は、中国の危険を実態よりも低く評価することで、邦人を危険に晒していると言わざるを得ないが、政府の見解如何。

回答(質問3 について)

 お尋ねについては、先の答弁書(令和五年十月三十一日内閣衆質二一二第二号)及び先の答弁書(令和五年十二月一日内閣衆質二一二第五四号)一から四までについてで述べたとおりであり、「外務省は、中国の危険を実態よりも低く評価することで、邦人を危険に晒していると言わざるを得ない」との御指摘は当たらないものと考えている。