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我が国の入管収容施設における医療環境等の整備等に関する質問主意書

会派 立憲民主党
議案提出者 原口一博
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

令和三年三月、名古屋出入国在留管理局の収容施設に収容されていたスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんの死亡事案が発生した。本件死亡事案の発生を受け、出入国在留管理庁は同年八月、医療体制の強化等の改善策を盛り込んだ「令和三年三月六日の名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する調査報告書」を公表した。

また、調査報告書で求められた医療体制の強化についての具体的な内容を検討するため、同年十月に「出入国在留管理官署の収容施設における医療体制の強化に関する有識者会議」が設置され、同有識者会議は令和四年二月に「入管収容施設における医療体制の強化に関する提言」を取りまとめた。

さらに、先の通常国会において成立した改正入管法では、被収容者の処遇は人権を尊重しつつ適正に行わなければならないことや、入管収容施設においては社会一般の水準に照らし適切な保健衛生上及び医療上の措置を講ずるものとすることが明記された。

入管収容施設は、収容期間の長短はあるものの被収容者が日々の生活を営む場であるから、そこでの処遇や医療体制を含む生活環境の整備は、特に被収容者の尊厳に配慮したものとし、ウィシュマさんのような事例が今後二度と起きないよう配慮されたものとする必要がある。

これらを踏まえ、以下質問する。

質問1

入管収容施設における現在の常勤医師の在籍状況を示されたい。その際、令和五年四月一日以降における常勤医師の異動の有無についても併せて示されたい。

回答(質問1 について)

 令和六年一月三十一日時点の出入国在留管理庁の収容施設に所属する御指摘の「常勤医師」の人数は、入国者収容所東日本入国管理センター、東京出入国在留管理局、東京出入国在留管理局横浜支局及び名古屋出入国在留管理局に各一人である。

 令和五年四月一日以降、東京出入国在留管理局横浜支局及び名古屋出入国在留管理局に各一人の「常勤医師」が採用され、入国者収容所大村入国管理センター及び大阪出入国在留管理局に所属していた各一人の「常勤医師」が離職している。

質問2

令和四年一月に策定された「救急対応マニュアル」においては、要救急対応者や重病兆候者について特に医師不在時にはちゅうちょなく迅速に一一九番通報を行うこと等とされているが、実際に当該マニュアルに沿った対応が取られているのか、被収容者の救急搬送を行った実績の有無等を含め、その運用状況を示されたい。

回答(質問2 について)

 出入国在留管理庁の収容施設において被収容者の救急搬送を行った件数については、統計的に把握していないため、お尋ねの「被収容者の救急搬送を行った実績の有無等を含め、その運用状況」についてお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、救急対応の必要がある被収容者を把握した際には、「被収容者に対する救急対応マニュアル」(令和四年一月二十七日付け入管庁警第二十四号出入国在留管理庁出入国管理部長通知別添)に従い、適切に対応するよう努めているところである。

質問3

令和三年十二月に策定された「体調不良者等に係る仮放免運用方針」に従い、出入国在留管理庁本庁への報告・回答を踏まえ仮放免を行った件数を示されたい。また、医師の所見を踏まえ、本庁への回答を待たずに仮放免を行った件数についても併せて示されたい。

回答(質問3 について)

 お尋ねの「令和三年十二月に策定された「体調不良者等に係る仮放免運用方針」に従い、出入国在留管理庁本庁への報告・回答を踏まえ仮放免を行った件数」及び「医師の所見を踏まえ、本庁への回答を待たずに仮放免を行った件数」については、統計的に把握していないため、お答えすることは困難である。

質問4

令和四年四月に出入国在留管理庁に設置された出入国在留監査指導室の情報提供窓口への情報提供件数及び当該窓口への情報提供を端緒とした職員の処分件数について示されたい。また、出入国在留監査指導室は、当該窓口に寄せられた情報を被収容者の処遇の改善につなげるなど、その役割を十分に果たしているといえるのか、政府の見解を伺いたい。

回答(質問4 について)

 令和四年四月から同年十二月までのお尋ねの「出入国在留監査指導室の情報提供窓口への情報提供件数」は、百二十五件である。なお、令和五年以降の同件数については、現在集計中であり、現時点でお答えすることは困難である。

 お尋ねの「当該窓口への情報提供を端緒とした職員の処分件数」については、統計的に把握していないため、お答えすることは困難である。

 御指摘の「出入国在留監査指導室」は、受け付けた情報を被収容者の処遇の改善を含めた出入国在留管理庁における適正な業務運営にいかしており、引き続きその役割を果たしてまいりたい。

質問5

先の通常国会において成立した改正入管法を受けて、出入国在留管理庁が検討を行っている入管収容施設における医療体制の改善策について、その全体像(政省令の改正や運用の見直しを含む。)を示されたい。また、医療体制のほか、入管収容施設における生活環境の整備・拡充を図るための措置についても併せて示されたい。

回答(質問5 について)

 お尋ねの「医療体制の改善策について、その全体像(政省令の改正や運用の見直しを含む。)」及び「生活環境の整備・拡充を図るための措置」の具体的な範囲が必ずしも明らかではないが、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律(令和五年法律第五十六号)による改正後の出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)第五章の二「被収容者の処遇」においては、被収容者の処遇について、保健衛生及び医療、外部交通等に関する事項を明確化するための規定が設けられ、現在、これらの規定の施行に向けて、所要の政省令の改正、運用の見直し等について検討中であり、現時点で具体的な検討状況をお答えすることは困難である。