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羽田空港の新飛行ルートに関する質問主意書

会派 日本共産党
議案提出者 宮本徹
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

東京の都心上空を飛行する羽田空港の新飛行ルートが二〇二〇年三月二十九日に運用が開始されてから四年が経過した。新ルートは騒音、落下物の危険、事故への不安、巨大な機影への圧迫感など住民生活に深刻な影響を及ぼしている。昨年八月から九月に品川区が実施した区民アンケートの集計結果(有効回答八万七千八十六人)が本年三月八日に公表され、それによると新ルートに関して「影響を受けている」とした回答は四十四・五%にのぼり、「ルート下近傍地域」ではこの割合はさらに高くなっている。

新ルートについての住民の批判、懸念は依然として強く、理解が得られているとはおよそ言えない状況である。

新飛行ルートは中止・撤回すべきである。

そこで以下質問する。

質問1

国土交通省は二〇一七年十一月から、国際線が多く就航する、羽田空港を含む全国七空港で部品欠落についての報告を徴収している。この報告制度は落下物の未然防止に活かすとしている。

1 報告結果は二カ月ごとに総計と重量別・部品別割合が公表され、年度ごとの集計結果も公表されている。ところが重量別割合についての集計結果は最も重いクラスは「一kg以上」と区分され、その個数が示されているが、それらの具体的な重量は示されていない。

 イ 報告制度の開始以降、直近の集計まで、「一kg以上」と区分した欠落部品について、?その具体的な重量、?部品の種類、?発見の有無、?発見された場合はその場所を、報告時期の順に示されたい。

 ロ 前項の「一kg以上」の部品の欠落について、それらはそれぞれ航空機の運航過程のどの時点で発生したと考えられるか。離陸時、飛行中、着陸時、地上走行中などの別とそのように判断する根拠を示されたい。

 ハ 航空機から部品の落下・欠落が生じたことにより航空機の機能や飛行(離陸、着陸を含む)に支障が生じた事例について、政府として把握しているところを示されたい。またその際、航空会社に対し、政府はどのような対応を行ったか。

 ニ 航空機から部品や氷塊が落下し地上の構築物等に衝突した場合の衝撃の大きさや度合いについて研究・検討したことがあれば示されたい。また衝撃の大きさ等について示すものがあれば示されたい。

2 国土交通省は二〇二〇年二月二十五日の衆議院予算委員会第六分科会において、二〇一八年度に羽田空港で報告された部品欠落報告の件数は百五十四件であったと答弁している。その後、空港ごとの件数は示されていない。羽田空港において報告された件数を年度ごとに示されたい。

3 欠落部品の総計は、二〇一九年度は九百二十八件、二〇二〇年度は千五件、二〇二一年度は千六十四件、二〇二二年度は九百九十二件、二〇二三年度は九月までの上半期だけで六百九十二件にのぼり、コロナ禍により航空機が減便された時期を含め減少しているとは言えない。このことは落下物を未然に防止することが容易ではないことを示しているのではないか。政府の認識を示されたい。

回答(質問1 の1のイについて)

 御指摘の「報告制度の開始以降、直近の集計まで、「一kg以上」と区分した欠落部品」について、お尋ねの?「その具体的な重量」、?「部品の種類」、?「発見の有無」及び?「発見された場合はその場所」を御指摘の「報告時期の順」にお示しすると、それぞれ次のとおりである。

 ?一・〇キログラム ?前脚トルクリンクの一部 ?無

 ?一・〇キログラム ?ブレーキ冷却ファンの一部 ?無

 ?二・〇キログラム ?ライトのカバー ?無

 ?二・〇キログラム ?主脚タイヤの一部 ?有 ?関西国際空港の敷地内

 ?一・〇キログラム ?フェアリングの一部 ?無

 ?二・〇キログラム ?パネル ?無

 ?一・〇キログラム ?アンテナ ?無

 ?一・〇キログラム ?パネル ?無

 ?二・〇キログラム ?バネ(一本) ?無

 ?三・〇キログラム ?ブレーキ板 ?無

 ?一・七キログラム ?主脚タイヤの一部 ?有 ?出雲空港の敷地内

 ?一・五キログラム ?ブレーキ板 ?有 ?新千歳空港の敷地内

 ?五・〇キログラム ?主脚タイヤの一部 ?無

 ?二・〇キログラム ?主脚タイヤの一部 ?有 ?関西国際空港の敷地内

 ?二・〇キログラム ?パネル ?無

 ?一・八キログラム ?前脚タイヤの一部 ?有 ?岡山空港の敷地内

 ?八十三・四キログラム ?ファンカウルの一部 ?無

 ?十二・二キログラム ?ファンカウルの一部 ?有(一部) ?多良間島の海岸

 ?十三・一キログラム ?ファンブレード ?無

 ?四・九キログラム ?ファンブレード ?無

 ?九十七・三キログラム ?ファンカウルの一部 ?無

 ?二・〇キログラム ?前脚タイヤの一部 ?有 ?東京国際空港(以下「羽田空港」という。)の敷地内

 ?一・四キログラム ?ブレーキを固定する部品の一部 ?有 ?関西国際空港の敷地内

 ?七十五・〇キログラム ?主脚タイヤ(一個) ?有 ?女満別空港の敷地内

 ?五・〇キログラム ?補助動力装置の空気取入口ドア ?無

 ?四・〇キログラム ?ブレーキ部品の一部 ?有 ?中部国際空港の敷地内

 ?六十・〇キログラム ?フェアリングの一部 ?有 ?成田国際空港の敷地内

 ?四・七キログラム ?主脚タイヤのゴムの一部 ?有 ?成田国際空港の敷地内

 ?一・四キログラム ?ブレーキを固定する部品の一部 ?有 ?羽田空港の敷地内

 ?三・三キログラム ?ブレーキを固定する部品の一部 ?無

 ?十・〇キログラム ?主脚タイヤのゴムの一部 ?有 ?成田国際空港の敷地内

 ?六・四キログラム ?着陸灯 ?有 ?羽田空港の敷地内

 ?五・〇キログラム ?主脚タイヤのゴムの一部 ?無

 ?三・〇キログラム ?エンジンの消音パネル ?無

 ?二十五・〇キログラム ?エンジンカウル ?有 ?太平洋上

 ?五・〇キログラム ?主脚タイヤのゴムの一部 ?有 ?中部国際空港の敷地内

 ?二・六七キログラム ?エンジンの消音パネルの一部 ?無

 ?六・五キログラム ?主脚タイヤのゴムの一部 ?無

 ?三・五キログラム ?主脚タイヤのゴムの一部 ?無

 ?二十八・〇キログラム ?主脚タイヤのゴムの一部 ?有 ?羽田空港の敷地内

 ?一・二キログラム ?主脚ホイールの部品 ?有 ?成田国際空港の敷地内

 ?二十五・〇キログラム ?主脚タイヤのゴムの一部 ?無

回答(質問1 の1のロについて)

 一の1のイで御指摘の「報告制度」においては、部品の欠落が「航空機の運航過程のどの時点で発生した」かについては報告の対象となっておらず、また、部品欠落の発生場所は、多くの場合、特定することは困難であり、政府としてお尋ねについて把握していないため、お答えすることは困難である。

回答(質問1 の1のハについて)

 お尋ねの「航空機の機能や飛行(離陸、着陸を含む)に支障が生じた」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、部品の欠落が報告された事例のうち、航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第七十六条第一項各号に掲げる事故又は同法第七十六条の二に規定する国土交通省令で定める事態に該当するものについて、?当該事例の発生日、?航空会社、?航空機の型式、?欠落した部品、?当該部品の重量、?当該事故又は当該事態の具体的内容及び?航空会社に対する政府の対応については、それぞれ次のとおりである。

 ?平成三十年三月二十四日 ?ピーチアビエーション株式会社 ?エアバス式A三二〇−二一四型 ?前脚トルクリンクの一部 ?一・〇キログラム ?航空機の前脚の損傷により地上走行が継続できなくなった事態 ?同社に対する当該事態に係る原因分析及び再発防止策の検討の指示並びに同型機を運航する航空会社に対する情報共有及び点検の指示

 ?令和二年十二月四日 ?日本航空株式会社 ?ボーイング式七七七−二〇〇型 ?ファンカウルの一部(三個)及びファンブレード(二個) ?九十七・三キログラム、八十三・四キログラム及び十二・二キログラム並びに十三・一キログラム及び四・九キログラム ?発動機の破損(破片が当該発動機のケースを貫通した場合に限る。)に準ずる事態 ?同社に対する当該事態に係る原因分析及び再発防止策の検討の指示並びに当該発動機と同種のものを装備した航空機を運航する航空会社に対する情報共有及び点検の指示

回答(質問1 の1のニについて)

 政府としては、お尋ねの「研究・検討」を実施しておらず、また、お尋ねの「衝撃の大きさ等について示すもの」についても把握していない。

回答(質問1 の2について)

 お尋ねの「羽田空港において報告された件数」について、御指摘の「年度ごと」にお示しすると、令和元年度が三百八十二件、令和二年度が四百六十八件、令和三年度が五百三十件及び令和四年度が四百十八件である。なお、これらの件数はあくまでも羽田空港に着陸後の航空機に係る機体チェック等により判明した部品欠落の件数であり、当該部品欠落の発生場所は、多くの場合、特定することは困難であるところ、これらの件数は羽田空港周辺で発生した部品欠落の件数を意味するものではない。

回答(質問1 の3について)

 政府としては、御指摘の「二〇一九年度」から御指摘の「二〇二三年度」までの部品欠落の報告件数のみをもって、御指摘の「落下物を未然に防止することが容易ではない」と判断できるものではないと考えている。いずれにせよ、今後も引き続き、国土交通省において平成三十年三月に取りまとめた「落下物対策総合パッケージ」の見直しと強化を図るとともに、同パッケージに盛り込まれた対策を、航空会社をはじめとする関係者とともに着実かつ強力に実施してまいりたい。

質問2

国土交通省は羽田新経路の固定化を回避するための方策に関して「現在の滑走路の使い方を前提とした上で、騒音軽減等の観点から見直しが可能な方策がないかについて、技術的観点から検討を行う」として、二〇二〇年六月に「羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」を設置し検討を行っている。しかし同検討会は二〇二二年八月三日の第五回以降、一年七カ月以上にわたり開催されておらず、二〇二三年度についてはいまだ一度も開催されていない状況である。

1 第五回検討会では資料として「今後のスケジュールについて」を示し、それによると第六回検討会は二〇二三年中に開催する予定であることが図示されている。しかし開催には至らなかった。なぜ開催されなかったのか。

2 同検討会の検討に基づく業務で、第五回検討会以降に行った業務、現在継続して行っている業務があれば具体的かつ詳細に示されたい。そのうち外部に発注して行っている業務があれば、案件名、発注機関、契約日、契約先、履行期間を示されたい。

3 政府は二〇二三年度に同検討会の経費としていくら支出したか。その細目とともに示されたい。

4 同検討会の次回開催時期はいつか。

5 同検討会は第四回と第五回の開催間隔についても、第四回開催は二〇二一年八月二十五日であり、第五回開催は一年近く経過した後であった。同検討会は開店休業状態が「固定化」している状況である。また、次回第六回検討会が開催されたとしてもそこで結論を得るとはされていない。「固定化を回避する方策について検討する」としながら、その間新飛行ルートは継続されており、新ルートは「固定化」されるものになっているのではないか。認識を示されたい。また、この現状を改める上からも、少なくとも検討期間中は新ルートの運用をいったん停止すべきではないか。

回答(質問2 の1について)

 御指摘の「第六回検討会」においては、複数の航空機が羽田空港のA滑走路及びC滑走路へ同時に進入する際の飛行経路に係る国土交通省による安全性評価の結果に基づく検討が行われる予定であるところ、当該安全性評価に時間を要していることから、御指摘のように「二〇二三年中に開催」するに至らなかったものである。

回答(質問2 の2について)

 お尋ねの「同検討会の検討に基づく業務」の意味するところが必ずしも明らかではないが、国土交通省においては、御指摘の「第五回検討会」での議論を踏まえ、引き続き、二の1についてで述べた安全性評価を実施しているところである。御指摘の「外部に発注して行っている業務」については、お尋ねの?「案件名」、?「発注機関」、?「契約日」、?「契約先」及び?「履行期間」をお示しすると、それぞれ次のとおりである。

 ?B七六七型飛行シミュレータ装置を用いた検証作業 ?国土交通省航空局 ?令和四年九月十五日 ?日本航空株式会社 ?同月十六日から令和五年三月二十四日まで

 ?B七七七型飛行シミュレータ装置を用いた検証作業(その二) ?同局 ?同年一月十一日 ?全日本空輸株式会社 ?同月十二日から同年三月二十四日まで

回答(質問2 の3について)

 令和五年度においては、御指摘の「検討会」は開催していないため、お尋ねの「支出」はない。

回答(質問2 の4について)

 国土交通省においては、引き続き、二の1についてで述べた安全性評価を実施しているところであり、お尋ねの「同検討会の次回開催時期」について、現時点でお示しすることは困難である。

回答(質問2 の5について)

 お尋ねについては、国土交通省においては、現在、航空機の騒音による影響の軽減、御指摘の「新ルート」の固定化の回避等の観点から、当該新ルートの見直しが可能な方策があるかどうかについて技術的観点から検討を行っているところであり、「新ルートは「固定化」されるものになっているのではないか」との御指摘は当たらないと考える。また、当該新ルートについては、将来的な航空需要の拡大を見据え、我が国の国際競争力の強化、首都圏における航空機の騒音による影響の分散等の観点から、御指摘の「検討期間中」においても、引き続き運用する必要があると考えている。