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子ども・子育て支援納付金を医療保険者から徴収することに関する質問主意書

会派 立憲民主党
議案提出者 櫻井周
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

我が国において少子化と人口減少が急速に進む現状に対して、ライフステージを通じた子育てに係る経済的支援の強化、全ての子ども・子育て世帯を対象とする支援の拡充、共働き・共育ての推進に資する施策の実施が必要である。しかしながら、子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案(第二百十三回国会閣法第二十二号)の事業に必要な費用に充てるため、医療保険者から子ども・子育て支援納付金を徴収することは、財源の確保手段として不適切と考えるところ、以下、質問する。

質問1

健康保険法は、労働者又はその被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行うもの(同法第一条)であり、給付の内容及び費用の負担の適正化並びに国民が受ける医療の質の向上を総合的に図りつつ、実施されなければならない(同法第二条)と規定しているところ、医療保険者から子ども・子育て支援納付金を徴収することは健康保険法の立法目的と異なると考えるが、政府の見解は如何に。

回答(質問1 について)

 「医療保険者から子ども・子育て支援納付金を徴収することは健康保険法の立法目的と異なる」との御指摘の趣旨が必ずしも明らかではないが、健康保険制度は、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第五十二条等に規定する保険給付のほか、被保険者等の健康の保持増進のために必要な事業その他の法律の規定に基づく事業を行うことにより、健康保険法第一条等に規定する目的を達成しようとするものである。

質問2

緒方林太郎議員が提出した「子ども・子育て支援金と租税の関係に関する質問主意書(令和六年三月八日提出、質問第五八号)」に対して、政府は「平成十八年三月一日最高裁判所大法廷判決においては、国民健康保険の保険料について、「憲法八十四条の規定が直接に適用されることはないというべきである」と判示されている」と答弁したが、当該裁判例を誤って解釈していると考えられる。すなわち、国民健康保険料賦課処分取消等請求事件に係る平成十八年三月一日最高裁判所大法廷判決においては、「国又は地方公共団体が、課税権に基づき、その経費に充てるための資金を調達する目的をもって、特別の給付に対する反対給付としてでなく、一定の要件に該当するすべての者に対して課する金銭給付は、その形式のいかんにかかわらず、憲法八十四条に規定する租税に当たるというべきである」と判示しつつも、当該事件における国民健康保険の保険料について、「憲法八十四条の規定が直接に適用されることはないというべきである」と判示したのは、「被保険者において保険給付を受け得ることに対する反対給付として徴収されるものである」との理由である。一方で、子ども・子育て支援納付金は、健康保険の被保険者が反対給付として徴収されるものではない。したがって、医療保険者が被保険者等から徴収する保険料のうち当該納付に要する費用については憲法八十四条に規定する租税に当たるというべきと考えるが、政府の見解は如何に。

回答(質問2 について)

 子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案(第二百十三回国会閣法第二十二号)第二条の規定による改正後の健康保険法第百五十五条第一項の保険料は、「健康保険事業に要する費用(前期高齢者納付金等及び後期高齢者支援金等、介護納付金、流行初期医療確保拠出金等並びに子ども・子育て支援納付金並びに健康保険組合においては、第百七十三条の規定による拠出金の納付に要する費用を含む。)に充てるため」(同項)、一体として徴収するものであり、当該保険料のうち子ども・子育て支援納付金の納付に要する費用に係る部分を取り出して憲法第八十四条に規定する租税に当たるか否かを論ずることはできないと考える。