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「民法等の一部を改正する法律案」における裁判所が親権者を定める要件に関する質問主意書

会派 立憲民主党
議案提出者 松原仁
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

家族法制の見直しに関しては、令和三年二月に法制審議会に諮問、約三年に及ぶ調査審議を経て、本年二月、法制審議会総会にて要綱が取りまとめられた。これを受け、本年三月八日、政府は「民法等の一部を改正する法律案」として国会に提出した。

本法律案では離婚後共同親権を導入する改正案が提示されているが、裁判所が親権者を定める要件について、次の質問に答えられたい。

質問1

要綱では「父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならないものとすること。この場合において、次の(1)又は(2)のいずれかに該当するときその他の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、父母の一方を親権者と定めなければならないものとすること。

(1) 父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき。

(2) 父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無、(一)、(三)又は(四)の協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき。」とある。

右記のとおり、「子の利益を害する」、「子の心身に害悪を及ぼすおそれがある」、「身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれ」、「父母が共同して親権を行うことが困難である」などの要件が示されているが、父母の一方が「おそれ」を主張することで単独親権を命ずることとなるのか。また、「おそれ」の解釈に関し、政府の見解を示されたい。

回答(質問1 について)

 今国会に提出している民法等の一部を改正する法律案(以下「改正法案」という。)における「父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれ」は、そのような害悪を及ぼす可能性があることを指し、「身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動・・・を受けるおそれ」は、そのような言動を受ける可能性があることを指すところ、裁判所において、個別の事案ごとに、一方当事者の主張だけでなく、当該事案に係る事情を総合的に考慮して判断されることになると考えている。

質問2

さらに裁判所が単独親権を命じる要件として、「協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難である」ことが明記されている。父母の一方が「共同で親権を行使することは不可能である」、「話し合いができない」などの理由を主張し共同親権を拒絶する一方、他方の親が親権の共同行使、柔軟な父母による話合いに応じる意思を示す場合もあり得ると思われる。このような事案でも、原則は共同親権であるか、政府の見解を示されたい。また、このような場合でも、単独親権が命じられることを政府として想定しているか。

回答(質問2 について)

 お尋ねについては、「原則は共同親権」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、改正法案では、父母間で親権者の定めについての協議が調わずに裁判所が親権者を定めることとなる場合には、裁判所は、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮して、父母の双方を親権者と定めるか、その一方を親権者と定めるかを判断することとされている。

質問3

今回の民法改正で離婚後共同親権を導入することは「父母の双方が離婚後も子の養育に関わることが子の利益に資する」ことが改正の主旨であると認識している。そうであるなら、より「共同親権が原則であること」を明示し、国民にも立法趣旨を明確にすべきではないか。政府の見解を示されたい。

回答(質問3 について)

 お尋ねについては、「より「共同親権が原則であること」を明示し」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、改正法案は、父母が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが、子の利益の観点から重要であるとの理念に基づくものであると考えている。