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旧統一教会の創始者である文鮮明氏の上陸特別許可に関する質問主意書

会派 立憲民主党
議案提出者 原口一博
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

出入国管理及び難民認定法(入管法)は、「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、一年以上の懲役若しくは禁錮又はこれらに相当する刑に処せられたことのある者」(第五条第一項第四号)を上陸拒否の対象とする一方、上陸拒否事由に該当する外国人であっても、「法務大臣が上陸を特別に許可すべき事情があると認めるとき」(第十二条第一項第三号)は、その者の上陸を特別に許可することができるとしている。

平成四年に旧統一教会の創始者である文鮮明氏が我が国への入国を希望した際、法務省は、文氏が過去に米国において所得税法違反により一年を超える刑に処せられていたことから上陸を拒否する方針であったが、自由民主党の金丸信議員(当時の同党副総裁)が文氏の身元を保証したことから、最終的に入国を認めた。この事実は、令和五年四月に韓国外務省が公開した外交文書により改めて確認されている。

文氏の入国を認めた経緯について、これまで政府は「文鮮明氏は、入管法第十二条に規定されている、法務大臣の裁量的処分である上陸特別許可を受けて入国したものと承知しています。上陸特別許可の許否判断につきましては、個々の事案ごとに、上陸を希望する理由、該当する上陸拒否事由の内容、上陸拒否事由が発生してから経過した期間、内外の諸情勢その他諸般の事情を総合的に考慮しています。」「刑の確定後既に七年が経過していたこと、入国目的が朝鮮半島及び北東アジアの平和の在り方について我が国の国会議員の会の方々と意見交換することにあったこと、一週間程度の短期間の滞在であり布教活動はしないとの誓約がなされたことなどの諸事情を総合的に考慮した結果、上陸を認めたものであります。」(いずれも令和五年四月十日衆議院決算行政監視委員会・松野博一内閣官房長官)、「文氏については、当時の法務大臣が当時の諸事情を総合的に考慮した結果、法令上の根拠に基づき上陸を認めたものと承知しており、当時の法務大臣の判断としては適切であったと承知しております。」(令和五年四月二十四日衆議院決算行政監視委員会第一分科会・門山宏哲法務副大臣)などと答弁している。

これらを踏まえ、以下質問する。

質問1

出入国在留管理庁ウェブサイトで公表されている出入国管理統計によると、文氏が入国した平成四年の上陸特別許可の総数は千二百二十七件である。このうち、入管法第五条第一項第四号の上陸拒否事由に該当する者に上陸特別許可を付与した件数を示されたい。

回答(質問1 について)

 お尋ねの件数については、統計的に把握していないため、お答えすることは困難である。

質問2

令和五年四月二十四日の衆議院決算行政監視委員会第一分科会において、門山法務副大臣は「上陸許可をした者のうち、過去に罪を犯した者の数は何件かという問いに対してでございますが、御指摘の数については、統計として把握しておりません」と答弁している。上陸を特別に許可した者のうち、法令違反により刑に処せられた人数を政府が把握していないのであれば水際対策として不十分であり、我が国の安全保障の観点から問題ではないかと考えるが、政府の見解を問う。

回答(質問2 について)

 上陸を特別に許可するか否かについては、個々の事案ごとに御指摘の「法令違反により刑に処せられた」か否かも含めた諸般の事情を総合的に勘案して慎重に判断しており、「我が国の安全保障の観点から問題」があるとは考えていない。

質問3

文氏は入国後、千人規模の信者に対する講義等を行うなど、布教活動をしない旨の誓約や入国目的に反した活動を行っていたとされている。このような状況を踏まえてもなお、文氏に対する上陸特別許可は適切であったと評価しているか、また、このような事実が判明した時点で即時に上陸特別許可を取り消し、退去を求める必要があったと思われるが、政府の見解を問う。

回答(質問3 について)

 

 御指摘の「布教活動をしない旨の誓約や入国目的に反した活動を行っていた」との事実については承知していないが、いずれにせよ、御指摘の「文氏に対する上陸特別許可」の判断の適否については、令和五年四月二十四日の衆議院決算行政監視委員会第一分科会において、門山法務副大臣が「お尋ねの文氏については、当時の法務大臣が当時の諸事情を総合的に考慮した結果、法令上の根拠に基づき上陸を認めたものと承知しており、当時の法務大臣の判断としては適切であったと承知しております。なお、この判断は上陸時において行うものでございますので、上陸後の事情により直ちにその判断が適切であったかどうか左右されるものではございません。」と答弁しているとおりである。

質問4

文氏のケースのような上陸特別許可が今後も繰り返されるのであれば、明らかに我が国に対する害意をもって入国しようとする者が時の政権との密接な関係を背景に上陸特別許可を受けることにより、我が国の国益を損なう結果を招くことを阻止できないものと思われる。一般に、上陸特別許可に係る法務大臣の裁量は、講学上のいわゆる「羈束裁量」というよりは「自由裁量」であると解されているが、我が国の国益を害する危険性が高いと認められる場合には、法務大臣の裁量権の幅は縮小され、毅然として上陸を拒否する義務が生じるものと考えるが、政府の見解を問う。

回答(質問4 について)

 御指摘の「我が国の国益を害する危険性が高いと認められる場合」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「上陸特別許可」について規定している出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)第十二条第一項は、法務大臣が、同法第七条第一項に規定する上陸のための条件に適合していない外国人について、同法第十一条第一項に規定する異議の申出に理由がないと認める場合でも、当該外国人が同法第十二条第一項各号のいずれかに該当するときは、その者の上陸を特別に許可することができる旨を規定したものであり、御指摘の「上陸を拒否する義務」を規定するものではない。